ウクライナからは人口の一割相当の４００万人余がポーランド他、主として隣国に難民となって避難しており、僅かではあるが日本でも受け入れている。前回記した如く日本は専守防衛の自衛隊とアメリカの軍事援助で平和が保たれているが、周辺にはロシアのみならず、しばしば挑発的にミサイルを発射している北朝鮮や尖閣諸島周辺に毎日の如く艦船を送り込んで回遊している中国があり、多くの日本人の“平和ボケ”と実態の深刻さがあまりにもかけ離れており、心配である。
国民性や安全保障への感覚は、自国の置かれた環境や歴史的流れの中から形成されるが、近代に至る迄鎌倉時代の蒙古襲来以外外国から侵攻されたことのない日本と上述の隣国などとは大きく異なる。又日本が島国である点も決定的な相違点であり、アメリカとの安保条約があることと相まって“平和ボケ”となっている。
１，ロシア軍がウクライナ各地で民間人を沢山殺傷しているニュースが相次いでいるがロシア側の言い分を聞くと、十年余前中国に住んでいた時に見たテレビドラマの一場面を思い出させられた。中国史上三大美人の一人、王昭君の生涯を描いたものだが、強大だった匈奴（モンゴル族等の祖先）が東西に分裂し、続いて南北にも分裂し、前漢に隣接する匈奴はついに前漢との戦いで敗北するが、時の前漢の皇帝である高宗元帝は匈奴を抑圧するのではなく、和睦し援助するが匈奴のトップである呼韓邪単于（こかんやぜんう）と接見した時、「匈奴は戦いの時、武人のみだけでなく、何故に婦女子まで殺害するのか？」と詰問すると、単于は「婦女子を残して置けば、その子弟はやがて報復するであろう。我々も何時報復されるか心配でならない。後顧の憂いを残さない為に必要なことだ」と平然と答えた。その後、王昭君を単于に降嫁するが（BC33）、王昭君は降嫁された後に、農業技術など匈奴に教えて多くの匈奴から敬慕される美談になっている。復元されている湖北省西方の仙境である仙農架手前の王昭君の生家を訪ねたことがあるが、彼女は皇女ではなく皇帝の養女であった。又彼女の生家は村長程度の身分であったが、私が子供の頃日本の農村で使用されていた唐箕（とうみ、モミ等穀物を風車を手で回し吹き分けする農具）が、２０００年も前に既にあったことに感心した。更に内モンゴルのフフホト市南西郊外にある彼女のお墓も参観したことがあるが、地上から１５－６mの高さの円筒形で、やや奇妙な印象をもった。
２，２０年程前、寧夏回族自治区の北端の砂漠の町である石嘴山市に仕事の関係で３年程住んだが、自治区の中心都市は１００㎞程南方の銀川であるが、昔ここには回族（イスラム教を信仰する民族、漢字類似の独自の文字を持っていた）が建国した西夏（国号は大夏だが）の都があった。建国は１０３４年だが、１２０５年から度重なるモンゴル族の侵攻を受け、遂に１２２７年にはチンギスカンにより滅亡させられた。現在でも寧夏人には建国の父、李元昊を誇りにし、イスラム信者も多いが（潔癖な者、平気で酒を飲む者いろいろだが）、西夏文字は一部の学者以外は読めない。当時１０万人ほど住んでいた銀川は度重なるモンゴル族の侵攻により、老若男女殆どが殺害されたとのことである。前項同様の理由によるものであろう。尚、西夏の最盛期領土は現在の６．６万㎢より遥かに大きかった。人口も１００万以上は居たであろう。尚西夏の陵墓は銀川市西郊外の広大な土地に散在しているが、不思議なことに墓の盛土の形は王昭君のそれと類似である。
３，戦時に於ける無差別攻撃は、日本や欧米等で今でこそ、戦争犯罪云々が叫ばれているが、太平洋戦争時の、米軍の沖縄への攻撃や広島・長崎への原爆投下、日本各地への焼夷弾の投下等、そんなに昔でもない時代に存在し、処罰されないまま現在に至っている。１９６７年５月だったと記憶するが、中国が初めて水爆実験に成功した時、欧米諸国は非難したが、毛沢東は「中国は核戦争を恐れない。わが国には７億の民が居る。３億人殺害されても４億人が残る」と言明し、左翼的人士の多かった当時の中国貿易業界では、「中国の水爆実験成功は喜ばしい出来事である。米帝の言うこと等無視すればよい」と嬉々として、言う者も何人かいた。国のトップである習近平国家主席が平然と、「場合によっては台湾に軍事侵攻することもあり得る」と明言し、アメリカに向かって、「太平洋は中米二か国が東西分け合って管理するのに十分な広さがる」と１９７２年の日中国交正常化交渉時に約束した「覇権を求めない」等、なかったが如きである。
一方中国は毎日のように、尖閣諸島周辺に艦船を派遣、回遊し実効支配していると称していることに無頓着な日本、早急に現実を厳しく見直しして、対策を講ずべき時が既に来ていることに気付くべきでしょう。

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