先ず最近の出来事と小旅行から、中国の本質を示す若干の事柄を報告しましょう。
1、5月下旬に現地知人達に会う為大連に行った。3年間生活した開発区だが、市街地の環境保全が改善されているのを目にした。それは街角にあまりゴミ箱を置かず清掃要員も見かけなかった。1960年代は日本より遥かに清掃が行き届き、街を汚す人達が少なかったので、この良き習慣が復活するのかなと思った。
2、がっかりしたのは、開発区のセンターとも言うべき開発区管理委員会(区役所相当)や安盛ショッピングセンター等がある大きな交差点は地下道で縦横に繋がっているが、設置されているエスカレーターは長期間故障したまま放置されて、汚れたままだったことです。公共施設のメンテナンスがなってない悪弊の代表的なものでしょう。さほど離れていないスポーツ公園が立派に整備維持され多くの老若男女に利用されている状況を考慮すると残念でならない。
3、歩道が広いこともあるが、車の増加によりその歩道は車だらけで、公共ルールを守らない悪習の一つにもなっている。20年前の武漢の元秘書は、ビジネスで大儲けして、現在市街地にある森林公園のようなところのマンション(部屋の中に階段があり2層になっており、ベランダが庭園となっている)に住む富裕階層であるが、自分の駐車場が7-80m先の地下にあるので、不便として殆ど使用せず、階下の通路に駐車している状況である。大多数の人々は自分にとり都合が良いかどうかで物事の判断をして生活している。斯様な状況の改善は道遠しの感。
4、最近、スパイ容疑で拘束される邦人が増加しているが、このような状況は文革中にも多発した。当時逮捕された日本人の殆どは思想的に中国に近いと見られていた連中であったが、個人的な交流は禁止されていた時代であった為、半ば同志であるとの思い込みや“知り過ぎた外国人”になってしまったことが原因であった。更に思想的に近いが故に、かえって紅衛兵の過激な思想を批判し、激論を戦わした為密告された人達もいた。昔から言われていたことだが、勝手に軍事施設には近づかず、軍人や空港、港湾、大型橋梁の写真を撮ってはならず、中国での言動には今なお細心の注意が必要である。
5、こう言う私も長年中国で仕事をしていて、嫌疑を受けたことが2回ほどある。文革時代ではなく、
 鄧小平の改革開放の大号令が出た後ではあるが、第1は北京の市街地西北部の何の変哲もないところにタクシーで行って写真を撮ったところ、3日後我々の生活面での支援機関でもあった中国国際貿易促進委員会対外連絡部のスタッフから、○月○日xxxに行かれたようだが、どんな目的だったのかとヒアリングを受けた。「日本の取引先の担当者の祖父母が昔住んでいたところだが、現在どんな様子か見てきて欲しい」との要望を受けた為、出向いて写真を撮ったもので、他意はなかったと説明し了解を得た。もう一件は北京郊外にあったユーザー工場の技師長(総工程師)と仕事を通じて親しくなったことから生じた。商談中に今後とも相当量の買い付けがあるから、価格面で特別配慮を頼むと言われ、一方個人的に「息子が日本に留学するので、経済的に協力してくれ」とのことだった。互いに配慮し合うことで合意したが、後日機密情報取得との嫌疑をかけられた。買い付け情報の事前入手は一般的商業活動の一環である旨主張したが、それを証拠立てる文書が欲しいと言われ、商社の営業マンの一般的活動の事例など文書にして提出し、事なきを得た。尚、この時の相手は国家安全部の担当者だったが、元々は国際旅行社勤務で、中国国内出張時に切符の手配等頼み旧知の間柄だったことも幸いだった。
 中国当局の情報活動はロシアや米国と異なり、一般的組織や会社(公司)にまで細胞組織があるので、くれぐれも注意が必要である。

 昔は中国通で多言だった“左翼”の連中やメディアが今では寡黙になっている理由等、次回私見を披露しましょう。

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