2016-5-6 中国進出-中国を知るS.(108)中国崩壊論は誤りだ
中国崩壊論が相変らず続いているが中国分裂論と併せて考察すると、経済的・軍事的に中国の存在感が大きくなったことに対する脅威感及び潜在的な期待感が背景にあるとしか思えない。中国の歴史戦の背景が対日コンプレックスと潜在的な願望であるのと同類とも言えよう。
前にも指摘したが、毛沢東による1958-61年の大躍進政策の大失敗や1976年から10年も続いた「文化大革命」の大きな弊害にも拘わらず、中国は崩壊も分裂もしなかった。一方日本も失われた20年と言われるように、この20年余経済的にはゼロ成長とも言うべき状態が続いて来たが、誰も日本が崩壊する等と論ぜず、実際崩壊しなかった。
1、 むしろ今後の中国に対する注目点は、自由、民主、法の支配と言う世界の潮流に逆行している政治体制の大変革が何時頃始まるか、別な言い方をするなら何時頃“中国版ゴルバチョウ”が出現するかと言うことであろう。この数十年中国の経済規模は驚くほど大きくなり、庶民の生活も豊かになったが、私が初訪中し駐在した1965年頃と較べて中国人の表情は明らかに険しくなっている。おだやかで笑顔が多く助け合い活動が盛んだった50年前の方が、明らかに中国人は幸せだった。今は権貴族と言われる特権階級は 何時まで特権が維持できるか不安でたまらない。多くの農民や労働者は社会的不公平感に苛立ちを隠せない(1965年より都合25-6年間現地で観察した中国人の表情の変化を別途稿を改めて紹介予定)。
2、 中国経済はインフラ投資や設備投資に過度に依存しており、実需を無視して継続しようとしている。実質上破産している国営企業が存続、ゾンビ企業と呼ばれたり、新興都市になるべきニュータウンが鬼城(ゴーストタウン)化している現象は、何時までも放置できないのは自明であろう。然し、この20年余中国の企業寿命が3-4年で推移しており、日本や欧米の1/10程度であり、日本の常識等通用しない国情であることは、しっかりと認識する必要があろう。
3、 鄧小平は改革開放政策を発表した時、同時に「先富論」を提示した。それは暫くの間は、不平等の発生するのを恐れず、出来る者から先に豊かになって構わないが、一定レベルに達したら、社会的平準化を図るべしと言うものだった。もう一点彼が強調したのは政治改革が後回しになることに関して、「四つの小龍」に見習えと盛んに宣伝した。それは中国より遥かに豊かだった香港(イギリスの植民地)、シンガポール(リークアンユーの独裁)、台湾(国民党の支配)、韓国(軍事独裁政権)は、相当長期間、実質上独裁体制であったが豊かになったとして、経済面では自由な活動を許容して経済発展を図るものだった。然し、長年計画経済の事なかれ主義に毒されていた大多数の幹部達は、模索中と言った状態だった。そこで、「白猫黒猫論」(毛色に関係なくネズミを捕る猫は良い猫だ)を宣伝し、思想信条より経済第一主義を明確に打ち出した。
4、 政治改革の遅れと経済格差に不満が鬱積した学生等(実際は警察学校の学生や下級官僚迄参加)が1989年4-6月天安門事件を起こした。当時私は北京で商社の事務所長をしていたが、中国人の部下や交流のあった大学教授まで、成功すると言い出す始末だった。その時、私は中国内政に干渉する積りはないが、「成功しない、何故なら圧倒的多数の農民や工場労働者は様子見であり、積極的に参加したり支援していない」と自重を促した。現在更なる過度な投資策で景気浮揚を図ろうとし、農民や労働者重視の政策が打ち出せないなら、本格的な政治改革は避けられないであろう。
(2016-5-6記)
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