中国進出-中国を知るS.(53):中国の水問題
中国の水問題は年々深刻になっていますが、皆さんの滞在されている地域の状況は如何でしょうか?!私の体験談と知見に就いて若干紹介しましょう。
1、 昔から中国では生水は飲めない、水道水も一度沸騰しないと飲めないと言われていました。どこのホテルでも客室には必ず保温瓶が2本置いてありました。一本はお湯(開水)で、もう一本は湯冷まし水(涼開水)でした。改革開放前、ミネラルウォーターは崂山鉱泉水(山東省青島市近郊の崂山の清水)一つの銘柄(硬軟二種)のみで、国家的宴会にも出されていました。崂山水はかなり昔から有名で、ドイツが青島ビールの始祖となるビール工場を百年前に造ったほどです。
2、 北京の水道水は比較的水質が良いと言われていたので、そのまま飲んだことがありますが、天津、上海、広州等の水道水は昔から絶対にそのままでは飲んではならないと言われていました。北京の水源である密雲ダムには仕事で何度か行きましたが、水質は比較的良いものの、官庁ダムや懐柔ダムの水質は素人目にもあまりよくなかったと記憶しています。絶対量不足の為「南水北調」として大運河とも呼べる様な用水路を建設し、長江の水を北京等華北まで引いてくる大事業が現在続けられています。取水地は長江の中上流、中流、下流の三か所で用水路も3本になっています。中国の華北地区はほとんど毎年水不足に見舞われ、一方華南地区では毎年の如く洪水に見舞われ、分洪政策が定着している程である情況は以前紹介した通りです。「南水北調」は合理的とも思えますが、問題は中国の殆どの地域で水質悪化が水質改善努力を上まって進んでいることでしょう。
3、 中国の環境保護については、文革時代(1967年)北京首都鋼鉄廠を参観した時に排水処理した後の水を溜めている池に鯉や金魚が泳いでいるのを見せられ、「中国の三廃処理は日本も見習うべきでしょう」と言われたが、その後の中国の状況を見るとウソの様な話になってしまいますが、事実です。尚「三廃」とは環境汚染になる廃棄物の形体を液体、紛体、固体の三種に分けていた為です。上海ではホテルの水も薄茶色ですが、ヒルトンホテルでは水道水を再度濾過して使用しています。
4、 改革開放政策で経済面では著しく発展してきた中国ですが、環境汚染はひどくなる一方です。国境を越えて広がる大気汚染では国際的ルールが先進国に有利であり、発展途上国である中国等には、一定の猶予期間や規制基準への配慮を求めていましたが、現状は中国自身深刻に認識せざるを得ないレベルにまで至っていることは周知の通りです。中国全土の河川や湖沼の33%は生活用水のみならず、工業用や農業用にも使用不可になっているとの報道もあります。更に最近では地下水も類似状況になっていると報道される様になりましたが、これは極めて深刻な情況です。地下水の水質改善は地上水とは異なり、どんなに努力しても10年や20年では改善不可能な場合が殆どで、大気汚染とは比較にならぬ程深刻です。地下水を工業用水として使用する必要がある場合は、十分な事前調査が必要です。
5、 私は環境関連事業に従事する中国人達と一年余仕事をしたことがありますが、彼等の努力や憂国の情を知るだけに、一日も早く中国の行政関係者、企業責任者から一般市民に至るまで、経済成長以上に環境保護が重要であることに、心底気付いてほしいと念じています。
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柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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