中国進出―中国を知るシリーズ(34):日本と中国の国民性の違い(2)
中国人は一度紹介されたり、何処かで会ったりすると実によく憶えていて、偶然何かの機会で再会すると挨拶されることが多いものです。此方では記憶になかったり、記憶がぼんやりしていたりして、中国人の記憶力に感心したりしたことは皆さんにもあるでしょう。
これはどうやら単なる記憶力の問題ではなく、国民性の相違であり風俗習慣の相違と言えるでしょう。一方日本人は相手の名前は忘れていても、何処の会社の人であるかはすぐ憶えてしまうので、「日本人は会社人間だ」と言われる所以でもあります。やや誇張して言えば日本人は組織主義であり、中国人は個人主義だとも言えるでしょう。更に言えば人的関係優先で、中国では法治主義がなかなか根付かず、人治主義と言われることにもなります。若干事例を挙げてみましょう。
★ 初対面の時注意して見ていると中国人は此方の頭の天辺から爪先までじろじろと良く観察しています。又、此方の話し方等も「孔のあくほど」観察しています。日本ではこの様な立ち居振る舞いは失礼だと見做されますが、中国人の間では極普通のことの様です。
やはり長い歴史経験から、自然に組織より人との関係が重要と言う習慣が根付いているのでしょう。日中いずれが良いかどうか論ずる積りはありませんが、この様な相違点があるのだとの認識は必要でしょう。
★ 随分昔ですが、ルール無視とも言うべき過剰な接待を受け、日本では同様なお返しはできませんよと、よく念押ししたものです。見物参観時に中国人大衆を排除したり、劇場で無理やりいい席を空けさせたりしたこともよくありました。「ガイジン優先主義」があったことも確かです。
★ 日中関係は相当長期間ギクシャクした関係が続きそうですが、個人関係ではそうでもないでしょう。日本では親族関係がやや薄れ、孫子や祖父母など縦系列は今なお緊密な関係が残っていますが、『いとこはとこ』関係になると一般的には、あまり日常的な付き合いはないようです。「兄弟は他人の始まり」とも言いますが、中国ではこれ等の関係は今でも随分濃密です。特に何かと助け合い、又到来物を分け合う習慣があります。
★血縁関係以外でも友人関係、同窓同郷関係でも実によく連絡を取り合い、助け合っています。私のように既に第一線を退いた者も、中国に行くとリラックス出来、多くの旧友達の気遣いを受けることになります。10年前、20年前、更にはもっと前には日中間の経済的格差は個人間でも相当大きな開きがあり、会食するとか何処かに遊びに行く場合は日本人が全費用を負担するのが普通でした。然し現在多くの旧友や昔の部下は自家用車も持っており、一部の者達は豪邸に住んでいます。従い経済力が逆転したという要素もあるでしょうが、昔の恩義を忘れないといういい意味での中国人社会の風俗習慣も残っていると言えると思います。
★一部の日本の評論家は、以前日本は米中関係の仲立ちをすべきである等と言ったことがありますが、私は彼の観察力は皮相的だと見ています。確かに政治体制や、安全保障体制面から見れば、日米は緊密であり価値観を共有していると言えますが、自我意識や自己主張が強い、原色が好き、論理的思考法、楽観主義、自己防衛意識が強い、大雑把である等々、アメリカ人と中国人の間には共通或いは類似点と言える面があり、日本のみがやや特殊と言えるでしょう。尚私は東京都内ではあったが、二十代初め一年程アメリカ人家庭に居候をしていたこともあります。
いずれにしても日米中は正三角形の関係ではないでしょう。
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柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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