尖閣諸島問題に関連し、中国各地で単なるデモではなく多数の破壊暴動が発生したが、残念ながら今後も再発すると見て置く必要があろう。私同様長年日中関係に従事した知人の一人は、「多くの中国人は歴史的にも国際法上も日本側に正当性があることを知らないのだから良く教えてあげるべきだ」と言っているが、斯様な考え方は危険ですので、皆さんはくれぐれも自重して頂きたいと思う。若しある中国人が、日本側の言うことが正しい等と言い、それを他の多くの中国人に知れた場合、その人は袋叩きに遭い村八分にされるでしょう。テレビ等でコメンテーターとして中国籍の著名人を参加させ意見を求めているが、本音で話せる訳もなく、彼等を参加させるのは非常識と思う。以前米国の軍用機が中国の在外公館を爆撃したり、中国の軍用機を撃墜したりしても(何れも誤射ではあったが)、今回の如き広範な暴動は起きなかったし、昔珍宝島の領有問題でソ連と局地戦に及んだ時も、全中国での暴動等発生しなかった。何故か? 前にも若干触れたが、もっと根深い原因があり、日中関係は今後も厳しい状況が長く続くと受け止めておくべきだろう。
1. 先ずもって、日本の古代文明は中国が与えたものであるにも拘わらず、近代に至って日清戦争で負け、1931年以来15年間蹂躙され満州国(中国では偽満と言う)を作られ、各地に租界を作られる等支配された。1945年に中国も戦勝国の仲間になったが、敗戦国の日本の方が早く且つ高い経済レベルに達し、文化的にも一流国になってしまい、今なお勝利感を持てずリベンジも果たしていないとの潜在意識を有している(類似の潜在意識は韓国や北朝鮮にもあり、他の多くのアジアの国々とは全く異なる)。
2. 私はソ連とも1961年から84年迄断続的に10年程、貿易を通じて付合いモスクワにも3度訪問したが、全てのロシア人は極めて友好的で且つ文化的であった。これは日露戦争の敗北を北方4島の占拠(不法ではあるが)という形でリベンジを果たし、潜在的なコンプレックスを持っていないからであると見ている。
  3.  従って日米が軍事同盟の関係であるのを承知の上で、中国首脳は米国の首脳との会談で、日本と共に戦った昔話を引用して日本の“軍国主義”を抑える為に協力してくれと、言うことになる。台湾問題初め多くの国家的政策や国家理念の相違を超えて、私の中国人の意識調査では最も好きな国はアメリカとなってしまう。
  4.50年余も前のことであるが、長崎国旗事件を理由に(日本が中国国旗を侮辱した右翼青年を軽犯罪として処理した為)、日中貿易を全面的に中断(普通の日本人には過剰反応と思えるが)したことがあるが、上記の如き背景がある為である。
  5.40年前国交正常化交渉時、賠償権を放棄したのも巷間伝えられている様に、蒋介石が放棄したから止む無く放棄したと言うのではなく、半永久的に中国には負い目を負わせて置いた方が、戦略的には有利であるとの毛周両首脳の決断だったことは中国人も
    ほとんど知らないが、事実である。
     言葉足らずではあるが、上記の如き背景がある為尖閣諸島を奪取しようとの中国の決意は固く、長期戦略的と見るべきである。中国の海軍力が更に強大になり一方社会的状況が不安定になった時には、南沙諸島の二の舞になる恐れが大きい。中国は無人島の状態なら日米安保も実際には発動されず、米国は調停者風を装い、せいぜい言葉だけの対中非難に終わると見ていよう。日本はむしろ国防問題では中国や韓国を見習うべきで、それ相応の覚悟による施策と、対外広報に注力すべきであろう。
    柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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