2020-8-11中国進出―中国を知る(199)日中関係はどうなるか(12)?
来年は中国共産党が上海で誕生してから100年目となるので、中国では各種の記念行事が催されるであろう。中国の近代史を研究しておられる学者達には、自動車生産が世界一になったこと、香港や少数民族を弾圧していること等、経済的な成功と政治的な変色,後退は予想外のことではなかろうか?何度も指摘してきたように、中国人に限らず「人類は権力を握ると腐敗堕落し易くなり、絶対的権力は絶対に腐敗する」と云う歴史的に証明されていることを、左翼的な学者達は軽視しているからです。
1、本来共産主義は一種の理想主義です。政権を獲得して新中国を成立させた1949年10月1日以前の解放闘争時代には「三大規律八項注意」と云うのがあって、中国共産党は真に大衆の味方であった。文革中(1966-1976年毛沢東が指導して若者たちを紅衛兵に仕立てあげ、学習活動と革命闘争を続けた)北京に駐在していた我々外国人も学習活動に参加して、斯様な共産党の指導理念を平易に教えていたことを知った次第。三大規律と云うのは:①行動は指揮に従う、②大衆のものは針一本、糸一筋も取らない、③捕獲品は全て公にする、と云うものであり、八項注意は①言葉遣いは穏やかに、②売買は公正に、③借りたものは返す、④壊したものは弁償する、⑤人を殴ったりののしったりしない、⑥農作物を荒らさない、⑦女性をからかわない、⑧捕虜をいじめない、というものでした。
正に大衆に寄り添って革命を遂行していたことが分かるであろう。
2、日本には「衣食足りて、礼節を知る」と云う格言があるが、どうやらこの格言は中国には適用できないと思われる。中国各地で長年生活してみて、文革前の1965年時代や文革中でも中国人のモラルは大変高く、経済発展に反比例してモラル低下がひどくなってしまった。以前は正に孔子,孟子の子孫の国と思わされた。街は清潔で、列に割り込むこともなく、ホテルで不用意にものを捨てると修理されたり洗濯して返却されたり、恥ずかしい思いをした駐在員も少なくなかった。
3、一般大衆だけでなく、党や政府の幹部も清貧に甘んじていたが、今や原始資本主義の上流階層の如き状況になってしまった。更に国の政策面でも、民族自決を要求するアジアアフリカ諸国を支持し、貧しい小さな国々を擁護していたが、真逆になってしまった。ソ連東欧諸国の在日通商代表部の方々とも仕事の関係上付き合ったが、彼らは上層幹部を平気で「支配階級」と呼んでいたが、一党独裁体制は崩壊して、不十分ながらも民主主義国家に変換したことはご周知のとおりです。
4、中国の改革開放政策は経済面では大成功であったが、政治面では大きく退化してしまったと言わざるを得ない。例えば少数民族対策も、大きな勢力があった満州族、モンゴル族、回族の伝統的生活地域には、多くの漢民族が入植し、多数派となってしまい、少数民族問題そのものを消滅させてしまい、少数民族はむしろ保護観察の対象になってしまった。イギリス、スペイン、ポルトガル等も昔アメリカ大陸に渡り、同様のことをしたではないかと云う知識人もいた。
5、日本に対して歴史を教訓にしていないと批判する一方で、戦前の日本の拡張主義、帝国主義を真似しようとしている一面もあり、しばしば報道される通りだが、大きな紛争に発展しない様国際的な連合に依る抑制措置が必要であろう。それは海洋国家である日本が中国大陸に進出し、同時に大陸国家たらんとしたと云うものであり、前回記した通りですだが、1972年の国交正常化交渉時、覇権主義には断固反対する旨合意していることを、何度でも想起させる必要があろう。中国の変節に就いては、マスコミも具体的に分かりやすく、何度でも報道すべきであろう。
日中関係が今後良好になる可能性は残念ながら小さいと言わざるを得ない。何となれば中国の上層部や知識人の大多数の潜在意識は、中国は天下(世界)の中心的存在になるべきであり、江沢民や習近平が「太平洋は二分してアメリカと管理しよう。西半分は中国に任せてくれ」と言った言葉に端的に表れている。更に上述した如く、本来中国に朝貢していた(実際は遥か昔の古代の一時期だけであったが)日本の戦前の振舞に対してリベンジしたい願望があり、欧米諸国に 対しても(当分は口外しないが)、アヘン戦争以来中国各地に租界地を作られるなど、屈辱的な扱いを受けたことに対しても、その怨念を晴らしたい気持を有していることは間違いない。中国の斯様な一見成る程と思われるが、明らかに誤りであることに気づかない原因は、「時代の進展に伴い国際的なルールや常識は発展、改善されていること」を軽視しているからであろう。昔は封建制度や植民地主義が悪いことである、と云うような常識はなかったし、国際的なルールや連携も少なかったことを想起すればすぐ分かることであろう。特に現在の中国首脳部や知識人の一部には時代錯誤とも云うべき観念が染みついている。又自由と民主主義が制限されている状況は中国於いてもそう長くは続かないと見られるが、現在の政治体制が揺さぶられるような国内的動乱が起きそうになった時が、日中関係の危機になりそうである。国内的矛盾が発生し大きくなると政府首脳部はとかく国際的な危機を演出するものだからである。
次回は日本国内にもある共産主義政党問題に触れよう。昔一時期日本共産党は「日中貿易促進会」と云う団体を有しており、中国と仲が良かった時期もあり、商社マンの中には共産党員も沢山おり、私のように“右翼”と見られていた人間は、批判の対象にされたものでした。
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