2020-7-9中国進出―中国を知る(198)日中関係はどうなるか(11)?
遂に7月1日より香港国家安全維持法の施行が始まった。これは一見中国政府の強さの具体化の様に見えるが、実際は逆である。何故なら中国共産党や中国政府が建前通り、人民の意思を代表していれば、この様な国際的にも不評を買う法律の制定、施行は不要であることは誰よりも、中国政府首脳が承知している。にも拘わらず、この様になるのは、「権力は腐敗し易く、絶対的権力は絶対に腐敗する」であり、その根源は「人間の欲望には限界がなく無限であり、又性善説も性悪説も共に誤りである」ことの証左である。
1、簡単に言えば、国家権力を握る前の中国共産党は、人民の味方であり解放者であったが、権力を握り暫くすると支配者に変質してしまうことは避けられなかった。私の体験談で言うなら、権力を握っても暫くは人民即ち一般大衆の味方であった。初めて北京駐在した1965年頃は権力者や上流階層でも清貧であり一般大衆に寄り添っていた。
今では権貴族と言われる人達の生活は、日本では考えられない程豪勢な生活をしている。
即ち個人的に何人もの使用人を雇用し、海外に資産を分散していることは時々報道されている通りである。
2、この様になるのは、「資本主義世界が発展すると、社会的矛盾が大きくなり解放闘争が始まり社会主義、共産主義に転換する」との建前理論とは逆に、ある程度豊かになると、独裁体制、全体主義の社会的矛盾が大きくなり、自由と民主主義を求める社会的闘争が始まる。この様な闘争は、皮肉にも毛沢東が論断したように、「闘争、失敗、闘争、、、、最後には成功」となるが、ソ連、東欧諸国が事実を以て証明した。冒頭に示した様な人間社会の避けられない矛盾は、自由な言論活動や政治活動を通じて、最後には自由な選挙により、権力の固定化を防止する他ないことも歴史的に証明されたと言える。
3、香港問題は中国の内政問題であると、中国政府や中国共産党は主張するが、これもご都合主義と言わねばならない。以前南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)に対して、中国も人類共通問題あり、南ア政府の政策は人類の歴史的発展に逆行するとして、日本や欧米諸国と共に強く反対し、抗議したものである。又1960年代の日本での左翼筋の政治闘争に対して中国は支持し、内政干渉をしていた。
4、矛盾に満ちた中国政府の政策であるが、対日政策となると、日常見え難い背景があることにも留意すべきでしょう。それは元々、中国は日本の古代文化の“お師匠”であったが、明治時代には満州国を作られ、その後各地に租界地(欧米諸国も沢山作ったが)を作られたことに対して、リベンジを果たしたいとの民族的願望が潜在していることにある。尖閣諸島問題等、日本の政策や世論はかなり暢気だなと感ずる次第である。韓国や北朝鮮になると、もっと強烈で、戦前日本がどれほど経済的、文化的に貢献したかに関係ない。1972年仕事でピョンヤン(平壌)を訪問した折に聞かされたのは、「日本には国を奪われ日本国の一部にされた。どれ程の恨みがあるか分かるか?!」と言われたことがあり、「花売り娘」と云う北朝鮮の歌の歌詞にも採用されている。韓国でも朴槿恵前大統領でさえ日本には千年の恨みがあると言う等、類似の潜在意識がある。
5、「孫子の兵法」ではないが、外交を含め対外交流には「相手側を知り、自分達のことを客観的に知る」ことが肝要であろう。上述の如き民族的、国民的感情は政権が誰の手にあるかに関係なく、潜在的に存在し続けると認識した方が良さそうである。どんな人達にも自尊心があり、幼稚園の幼児の如き小さい子供達でも、又は学歴がなく貧しい生活をしている人達でも、バカにされたりするのは、受け入れられないものである。
「褒め殺し」が最善の付き合い方と以前論じた通りである。
6、これ等はリベンジ主義の表れだが、だからと言って最近の中国の覇権主義的行動が許容されるものでもない。中国の知識人は親しくなると本音として、覇権主義や少数民族問題に関連して、欧米諸国もそうしたではないかと言うことがある。北米や中南米、オーストラリア等は本来白人の住む地域でなかったが、勝手に入って来て自分達の国を作ってしまった。又、アフリカやアジア諸国に沢山の植民地を作ったではないかと言うものである。海洋国家である日本が同時に大陸国家たらんとした歴史的失敗は、大陸国家の中国が同時に海洋国家たらんとしても、結局は失敗に終わることは確実であることを示している。この様な人達の歴史認識は、人類が幾多の試行錯誤を経て矯正され、発展して来たことを否定するもので正しくないのは明らかであろう。
7、日本の安全を守るには、中国が継続的に注力している「心理戦、情報戦、宣伝戦」に対して、もっと注意する必要がありそうである。尖閣諸島近辺に中国の艦船が継続的に周遊しているのは、中国では自国の島々を守り警戒しているのだとの認識を国内的にも国際的にも印象付ける行動としていることに、日本人はあまりにも無頓着過ぎよう。
中国の官民はあらゆる機会をとらえて情報取得するのは推奨されるが、逆に中国に於いて外国人の“情報”取得に対しては厳しく罰していること、中国の主張は何度でも声高に言い続けること等、全て中国の国策であることに対して、どれだけ多くの日本人が認識しているだろうか?否、日本人だけでなく欧米人や他のアジア諸国の人々を含めて、認識が甘いと言わざるを得ない。
8、日本人はもっともっと現代中国から反面教師として学ぶことが多いと言えそうである。その上で、日本人は日本人らしく、高い品格を保ち、もてなしの気持ちを大切にし、日本で作るものは、高技術、高品質のものとして、中国を含む諸外国と交流していけば良いであろう。過度に中国を恐れることも、軽視することも不要であろう。日常生活に近所付き合いが必要であるように、国際的にも近所付き合いは必要である。
鄧小平氏や趙紫陽氏が生前語った如く、中国は遠からず自由と民主主義を求めて更に改革開放を前進させると信じよう。歴史上何度も繰り返された内戦と国の分裂は中国の人々が最も避けたい歴史的教訓であり、“まもなく崩壊する”と云う様な幻想は抱かないのが良さそうである。
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