中国の対日好感度は、この十数年悪化し続けている。更に一路一帯政策など世界的規模での経済政策を展開し始め、長年の軍事力強化と相まって、「China Dream」(世界の富の三割を産出した18世前半の乾隆帝統治時代への回帰)の実現を計ろうとしていることは間違いない。一方経済軍事両面で弱かった1960年代、我々中国駐在中だった外国人を異常なまでに厚遇したことを考慮すると、強大な者には擦り寄るという事大主義の国民性でもあると言える。どんなに弱く不遇な時でも武士道精神を堅持すると言うような日本人の特徴とは大差がある様に見える。
1、1972年の国交回復時の共同声明(田中首相の訪中)や1978年の日中平和友好条約批准書交換(鄧小平の来日)で、強調された「覇権主義に反対し、お互い覇権主義を求めない」は実質的に反故にされている。江沢民や習近平の訪米の折に太平洋の東西を米国と中国で分け合い管理(実質支配)しましょうと、何度も提案していることが証拠の一つです。
2、中国は植民地の解放や民族の独立闘争を長年支持してきたが、最近はそのような言動はほとんど聞かれなくなった。それは中国では共産党の政策が憲法に優先し、更に毛沢東思想が共産党の政策に優先することになっているが、毛沢東思想の重要且つ基本的政策の一つが、
 「人民は解放を求め、民族は独立を求める。これは近現代の潮流であり、党はこれを断固擁護するが、実現への道は平坦ではない。闘争、失敗、闘争、失敗を繰り返し、最後には成功する」と文革中の学習会ではよく教えられたものである。
3、中国では孫文も毛沢東も五族協和を提唱していたが、戦前の日本も大陸に於いては五族協和を唱え推進していた。但し中国側の言う五族は漢族、満州族、モンゴル族、チベット族、ウイグル族であったのに対し、日本側のそれは、前三族は同じだがチベット族とウイグル族はなく、代わりに朝鮮族と大和(日本)民族としていた。これが歴史的事実であったが、中国では何時の間にか日本はナチスドイツ同様民族純化政策を推進し、他民族を虐殺したと見做している。
4、以上から分かるように、中国の外交政策を俯瞰すると、歴史を逆説的に学び、「リベンジ」とも言える。先ずは自分が強くなり、日本等周辺国を威圧し、やがて機が熟せば欧米を下風に追いやろうと言うことです。経済面のみならず、宇宙ステーション建設も欧米日ロの現有のモノには参加せず、時間をかけて独自に建設しようとしていることにも表れている。
5、どうも歴史を謙虚に学んでいるようには見えない。「羹に懲りて膾を吹いている」日本に向かって「軍国主義を復活しようとしている」と批判し、自らは大陸国家でありながら、海洋国家でもあらんとする過ちを学んでいない。戦前の日本は海洋性国家でありながら大陸国家でもあらんとした誤りを犯したことは明白であろう。内政面では「権力は腐敗し易く、絶対的権力は絶対に腐敗する」との、歴史的に証明された教訓も活かされていない。国民党軍隊と戦っていた時代の解放軍は「人民のモノは針一本、糸一筋も盗ってはならない」、「借りた戸板は必ず返す」、「婦女子をからかわない(セクハラをしない)」等、「三大規律八項注意」は守られていたと、1960年代の初駐在時代に年配者から聞かされた。然し、今では大金持ち(資本家)も党員になれ、更なる巨万の富を求めて汚職などの腐敗現象が蔓延している。現代では①反主流派に入らないこと、②獲得した富は部下や協力者に公平に分配すること、③調子に乗ってあまりにも巨額な案件には手を出さないことの三点が、隠れた注意事項となっているくらいである。

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