中国進出―中国を知るS.(82)日中両国の夢の相違
日中両国の夢の相違「鼓腹撃壌」の古代の詩を引用するまでもなく、本来中国人の夢は自由奔放に生きることです。この点、何かと生活スタイルまで拘束する古い慣習からの自由を求めて新大陸に渡ったアメリカ人と類似している点は、以前にも紹介しました。然しこのような夢は、大きな問題を含んでいます。皆が自由に生きようとすれば、必ず他人も求める自由(奔放)と衝突することになります。この衝突を解決しようとすれば、ルールを作るか力に頼ることになり、「力は正義なり」となってしまいます。米中両国にはこのような側面があると言えるでしょう。力に頼ろうとすれば、日本等が力を増強する又は補強しようとすることに対し、反対するか危惧していろんな表現や方法で以て牽制しようとすることになります。
ひるがえって、日本の状況を見ると既に1410年も前に聖徳太子により制定された「十七条憲法」の第一条に「以和為貴」(和を以て貴しと為す)と規定されたが如く、個人の自由奔放は多少規制してでも、全体の和をより重視しています。内外の一部の人達が日本には軍事拡張主義や欧米を真似した帝国主義(他国をも管理支配しようとする)があったと批判していますが、この1400年余の歴史の流れの中で、16世紀末の事態を含めても、累計100年にも満たないでしょう。大きな流れとしてはやはり「以和為貴」でしょう。古来天皇は一般庶民を「大御宝(おおみたから)」と思い、一般庶民はその様な天皇の心を「大御心(おおみこころ)」と理解した。大きな身分格差のあった時代でも、互いに思い遣り尊重し合うことを、物事の判断の出発点としている点、米中等とは決定的に異なる点で、これは日本人としては大いに誇りにして良い点でしょう。
この様な日本的思考方法や心情はどの様にして形成されたのでしょうか。それは単に聖徳太子が偉大な指導者だったからではなく、地政学的に長い年月を費やして形成されたと言うのが正しいでしょう。日本人には「島国根性がある」と言われたことがあるが、それは鎖国政策とも関連があり、海外事情に関心が薄く、日本の特殊性に気が付かないことでもあります。現在海外の事情を紹介するテレビ番組が沢山ありますが、風俗習慣、社会現象等があまりにも日本と違うので、スタジオの出演者が大いに驚く様子も放映されています。これは、今なお世界的に特殊な存在である日本(良い側面が多いが)を基準に物事を捉えている証拠でもあります。然しアメリカへの留学生が中国からは30万人近くになっているのに、日本からはその20分の1程度に迄、減少している事には海外への関心が弱化している事例でもあり、心配な側面でもあります。
周囲が海で囲まれている国々は世界的には少数派ではあるが、日本同様見知らぬ他人への思いやりが強く、助け合い精神も強い傾向にあります。一方他国や他民族と境界を接触している国々は歴史上幾多の抗争を繰り返してきており、見知らぬ人々にはやや冷淡であるが、肉親、知人、友人、同郷人等何等かの関係ある人達への思いやりや助け合い精神は日本とは比べられない程濃厚になっています。斯様な情況は自分達の生まれ育った土地は有限の世界と認識しているのか、無限の世界と認識しているのか、により無意識な中に歴史的に形成されて来たと言うのが私の基本的認識です。従い日本は政治思想的には欧米に属しているが(西側諸国の一つ)、風俗習慣や社会生活面では、中国の方が欧米に近いとも言えるでしょう。
今後の傾向を判断すると、情報交換や空路を含めて交通の発達により、世界は益々狭くなり、
宇宙船“地球号”とも言える時代に入りつつあり、自由奔放、勝手気ままはは許されず、国際的協約や規制がどんどん増えていくので、日本の歴史的経験による世界の在り方は、「日本の時代」に入りつつあるとも言えるでしょう。斯様な視点から中国(韓国も)との相違や付合い方を、次回より更に詰めていきます。
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