中国進出-中国を知るS.(77):中国の夢(4)
前回既に述べたが、「中国の夢」は一様ではありません。圧倒的多数の一般庶民にとっては、歴史上3,000年余にわたって、日本とは比較にならぬ程即ち王朝をも交代さすほどの戦乱の歴史体験が、知識を越えて強い深層心理になっている為、平穏無事を願う気持ちと食を切らさない事を切望する気持ちが強いのです。日常中流以上の生活をしている中国人は、その様な深層心理があること自体意識していません。
1、 然し食う為であれば、時には“悪事”も許されるとの気持ちがあります。小笠原諸島周辺の半径 200海里(374km)に及ぶ日本のEEZ(排他的経済水域)に中国の漁船が大挙して押し寄せているのも、その事例です(政治的背景もあると言われるが)。以前CCTVで連続ドラマになった「王昭君」を見たが、漢の元帝が和睦しようとしているモンゴル族(当時は東匈奴)の呼韓耶単于に「何故お前らは罪のない辺境のわが民族を無残にも殺害するのか?」と詰問する場面があります。すると呼韓耶単于は臆することなく、「ひどい寒波が長く続くと羊も馬も死に絶えてしまい、食するものがなくなるので漢民族から略奪する他なく、抵抗されれば当然殺傷します」と平然と答えます。元帝にとっては予想外の返事であったが、「今後食料が窮乏した時は、助けよう」と応え、和睦が成り、王昭君の降嫁に繋がります。今でも「他人のものを盗んだり、他人を騙すのは悪いことであるが、盗まれたり騙されたりするのは、もっと悪い」との日本人には信じ難い常識が定着しているのです。日本の観光客がお土産として買物し、「素朴な物売りのオバサンから3割もまけて貰った」と喜んでいるのに何度も遭遇したが、定価は原価の3-4倍に設定しているので、やはり高く買わされていることになります。大体中国には素朴な人等殆んど居ないと認識すべきでしょう。むしろ大多数の日本人はあまりにも素朴で善良だと思わされます。
2、 中国の政府関係者(党員でもある)の大部分及び一部の知識人の夢は上記とは異なります。
前回述べた如く、世界経済の3割以上を占めていた清朝の最盛期の再現であります。中期的目標はアメリカの勢力を太平洋の東半分にまで押し戻し、東南アジアやインド洋を自己の支配下に置こうとすることであり、長期的には現在のアメリカにとって代わり、既存の国際的秩序を徐々に中国に有利なように転換してゆこうと云うものです。これは既に江沢民や習近平が公然と公言しているが、日本ではあまり注目していない様です。昔の冊封体制の再現を狙っていると言っても過言ではないでしょう。当然日本は中国の勢力圏に取り込もうと、硬軟織り交ぜて手を変え品を変えて攻略して来るでしょう。然し、前回紹介した如く、中国内部には極めて深刻な諸問題を抱えており、夢に近づく前に足元が揺らぎ始めるのは避けられない、と言うのが私の長年中国と付き合ってきた結論です。
現代中国人は忘れてしまったが、貧しいが「もったいない精神」、「おもてなしの心」が溢れており、何処に行ってもマナーの良い中国人が多かった50年前の私には教えられることの多かった時代が必ずや再現するものと信じています。当時は日本の池田首相はトランジスターのセールスマンとフランスのドゴール大統領より揶揄され、日本人はエコノミックアニマルと呼ばれ、農協観光団がカメラをぶら下げて世界を闊歩していた時代であった。戦前の軍事優先主義、拡張主義から戦後180度変わってしまった日本、これも正しくなく大局的に見れば、目下矯正中
とも言えるでしょう。次回より日中関係の在り方、特に日本としての対応の仕方について述べましょう。日頃のニュースのみに惑わされることのない心眼を持ちたいものです。
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