この11月9-12日中国では、「3中総会」即ち、一年前習近平氏の共産党総書記就任後の3回目の中央委員会が開催されました。日本では新設の国家安全委員会に就いていろんな解釈がなされているが、一部理解不足があるようです。
1、 即ち、中国は憲法で行政、議会、司法を初めとして諸々の社会活動は共産党に指導されると規定されているので、全国隈なく党の指令が行き届いている様に錯覚し易いが、実際は地方政権(日本で言えば地方自治体)が半ば独立政権であるが如く、勝手放題な施策を進めようとしているのが実態です。地方が準備し企業誘致しようとしている工業開発用地一つとっても、全部推進可能とすれば全世界の経済力の半分以上は中国が占めることになるでしょう。他にも類似事例が少なくない事は、現地で仕事を通じて長期滞在されている皆さんは、少し注意深く観察していくと分かるでしょう。
2、 日本でも縦割り行政と言われるように、横の連携が必ずしも良くない情況は時々報じられていますが、中国ではより深刻な様です。日本ではあまり報道されないが、中国に於ける国家安全部の強大な権力は、壮大なオフィスビルが各地に林立されている情況からだけでも、容易に推測可能でしょう。武装警察と共に25年前の天安門事件発生ごろから強化され、予算や人員も解放軍に匹敵すると言われます。天安門事件が発生したころは、その取締りに公安当局は優柔不断であり、我々北京駐在日本人は再三に亘り、「もし類似状況が日本の皇居前広場で発生すれば、直ちに消防署の力も借りて、この様な違法座り込みは解散させるでしょう。中国当局が出来ない訳がない」として、中国側に申し入れをした程でした。
3、 国家安全委員会が解放軍や外交当局も含めて一元的に統制していけるかどうかは疑問ですが、この様な組織を新たに設立せざるを得ないと言うことは、党中央の指導力強化を目指していることは間違いないでしょう。汚職撲滅や所得格差の縮小、公害対策等なかなか成果が上がらない実情もあります。貧しい農民や労働者即ち一般大衆の味方であった中国共産党も時間が経過すると、何時の間にか特権階級に変色してしまいました。中国では斯様な人達を権貴族と言いますが、私が昔中国と並んで交流したソ連の人達は、ずばり「支配階級」と称していました。やはり「権力は腐敗し易く、絶対的な権力は絶対に腐敗する」と言う歴史的に証明された事象は、残念ながら中国でも同様と言えるでしょう。既得権者に切り込むのは極めて困難ですが、思い切った改革が不可欠でしょう。只推進する過程が中国国内だけでなく、対外的にも悪い影響を与えるハードランディングではなく、ソフトランディングであることを祈りたく。
4、 新華社が伝えた「3中総会」のコミュニケを読んで、昔再三中国政府の中堅幹部より聞かされた、「中国の指導層にとって最重要課題は、国の統一を守ること及びどんな災害があっても人民大衆の食の問題を保証することの2点である」を思い出しました。
この現代的意味は①貧困を撲滅し所得格差を縮小し、少数民族を含め国家統一を保持することであり、②環境保全を徹底し、農民をして営農意欲を奪わないことであると見られます。人治主義から法治主義に移行し、社会的公平と公正を確保していけるかどうか
今後とも注目していきましょう。


 

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