2013年 11月の記事一覧
この11月9-12日中国では、「3中総会」即ち、一年前習近平氏の共産党総書記就任後の3回目の中央委員会が開催されました。日本では新設の国家安全委員会に就いていろんな解釈がなされているが、一部理解不足があるようです。
1、 即ち、中国は憲法で行政、議会、司法を初めとして諸々の社会活動は共産党に指導されると規定されているので、全国隈なく党の指令が行き届いている様に錯覚し易いが、実際は地方政権(日本で言えば地方自治体)が半ば独立政権であるが如く、勝手放題な施策を進めようとしているのが実態です。地方が準備し企業誘致しようとしている工業開発用地一つとっても、全部推進可能とすれば全世界の経済力の半分以上は中国が占めることになるでしょう。他にも類似事例が少なくない事は、現地で仕事を通じて長期滞在されている皆さんは、少し注意深く観察していくと分かるでしょう。
2、 日本でも縦割り行政と言われるように、横の連携が必ずしも良くない情況は時々報じられていますが、中国ではより深刻な様です。日本ではあまり報道されないが、中国に於ける国家安全部の強大な権力は、壮大なオフィスビルが各地に林立されている情況からだけでも、容易に推測可能でしょう。武装警察と共に25年前の天安門事件発生ごろから強化され、予算や人員も解放軍に匹敵すると言われます。天安門事件が発生したころは、その取締りに公安当局は優柔不断であり、我々北京駐在日本人は再三に亘り、「もし類似状況が日本の皇居前広場で発生すれば、直ちに消防署の力も借りて、この様な違法座り込みは解散させるでしょう。中国当局が出来ない訳がない」として、中国側に申し入れをした程でした。
3、 国家安全委員会が解放軍や外交当局も含めて一元的に統制していけるかどうかは疑問ですが、この様な組織を新たに設立せざるを得ないと言うことは、党中央の指導力強化を目指していることは間違いないでしょう。汚職撲滅や所得格差の縮小、公害対策等なかなか成果が上がらない実情もあります。貧しい農民や労働者即ち一般大衆の味方であった中国共産党も時間が経過すると、何時の間にか特権階級に変色してしまいました。中国では斯様な人達を権貴族と言いますが、私が昔中国と並んで交流したソ連の人達は、ずばり「支配階級」と称していました。やはり「権力は腐敗し易く、絶対的な権力は絶対に腐敗する」と言う歴史的に証明された事象は、残念ながら中国でも同様と言えるでしょう。既得権者に切り込むのは極めて困難ですが、思い切った改革が不可欠でしょう。只推進する過程が中国国内だけでなく、対外的にも悪い影響を与えるハードランディングではなく、ソフトランディングであることを祈りたく。
4、 新華社が伝えた「3中総会」のコミュニケを読んで、昔再三中国政府の中堅幹部より聞かされた、「中国の指導層にとって最重要課題は、国の統一を守ること及びどんな災害があっても人民大衆の食の問題を保証することの2点である」を思い出しました。
この現代的意味は①貧困を撲滅し所得格差を縮小し、少数民族を含め国家統一を保持することであり、②環境保全を徹底し、農民をして営農意欲を奪わないことであると見られます。人治主義から法治主義に移行し、社会的公平と公正を確保していけるかどうか
今後とも注目していきましょう。
お願い:私のブログに対し、ご意見やご異論、ご遠慮なくお寄せください。
「参考になるとか役に立つ」とのことでしたら、お知り合いにもお奨め下さい。
柳沢経歴:以前のURL表記にミスあり、下記にてよろしく。
https://www.consultant-blog.com/yanagizawa/
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最近の中国の社会状況に対する各種報道やネット情報は、私をして文革時代に北京で教えられた毛沢東語録の一節を思い出させている。それは「人民は解放を求め、民族は独立を求める。これは世界的な潮流であり如何なる勢力もこれを制止できない。解放闘争や独立闘争は単純ではなく、曲がりくねった道程をたどり、幾多の犠牲を払い何度も失敗した後に初めて成功する。」との趣旨であったが、確かに世界を見渡せばこの様に推移している。
中国も例外ではなかろう。
24年前の1989年6月4日の天安門事件の暫く後で、国家安全部にいた古い友人から、中国の政治改革に対する参考意見を求められたことがあるが、その時2点に就いて提案した。
① 規律委員会を全人代に帰属させ、党の上位に位置づけすること。党内の規律委員会の活動は、自浄努力であり、その成果には限界がある。
② 普通選挙を実施すること。自由な立候補と自由な選挙を実施して、全人代の代表を選出すべきである。
① に就いては、まったく考慮されていない様だが、②については、当時既に末端から
実施して段階的に上級に上げていく予定と聞いたが、その後の経過を見ると確かに村や郷鎮段階、都市部では居民委員、社区委員、区人代代表の選挙でかなり実施されている様だが、どうも自由選挙にはなっていない様である。と言うのは一定の推薦人があれば自由に立候補出来るが、候補者が多過ぎると選挙人が候補者の人物評価が困難だとして、“予備選”
があり、候補者を絞ってしまう。この段階の状況が一般庶民には不透明であり、真に自由な選挙になっているかどうか、判然としない。
国家だけでなく団体、会社等を含む如何なる形式の組織であろうと、十分なチェック体制を備えずに、指導管理機構に権力を持たせれば腐敗堕落し易く、絶対的権力は絶対に腐敗するとも言われるので、中国でも政治改革は避けられないであろう。中国国内でも改革では不十分で、“転換”が必要だとの主張もある由。
天安門事件の時は、北京にある日本大使館より一時的に日本に退避せよとの勧告が出され、臨時便で一時帰国したが、当時私が勤務していた会社の社長(彼は1949年に新中国が成立した直後から、中国と交流して来た先駆者だった)より、「直ちに北京に戻れ!第一線の司令官が将兵とも言うべき部下を放置して帰国するとは何事か?」と叱責され、3日後には北京に戻ったことがある。「中国の一般大衆や自分の部下達を信用できるのかどうか、大切に思うのかどうか」が、より一層重要であると言う事を教えられた次第であった。
私の中国の友人達は社会的には、権貴族(特権階級)ではないにしても、社会的上層階級に属するのは間違いないが、それでも貧しかったが昔の方が良かったと言う。普通の日本人には想像もつかない程の極端な所得格差、環境汚染問題、官民癒着による汚職問題等で
将来に対する不安感や日中関係の悪化への心配が原因であろう。日中は是非とも諸々の困難を乗り越えて、協力関係を深め広げていければと念願する。観光旅行で来日する中国人は、実際の日本を自分の目と耳で見聞して、一様に驚いている。相互理解がまだまだ不足していると痛感する。日中間には歴史問題に止まらず、互いに学び合う余地が沢山ある。
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