2018年 9月の記事一覧
中国の高官による贈収賄等汚職に関するニュースは時々報じられているが、中国全土では摘発されただけで100万件を超えたとの報道もあった。更に最近では美人女優として著名なファンビンビンの巨額な脱税が密告され、既に4か月も当人の動静不明となっていると連日報じられている。
脱税や業務上横領を含めて、どうしてこんなに多発するのか、どうして巨額の規模になるのかにまで掘り下げた報道がないのが残念である。
当ブログでは以前何度も紹介したことではあるが、社会主義国ではどうして汚職や脱税などが多いのか、再度まとめて紹介しましょう。
1、 社会主義や共産主義は本来理想的社会の実現を目指すものであるが、古来論じられてきた性善説や性悪説が十分考慮されていない。人間は収入など保障されると怠惰になりがちであり、権力は腐敗し易く絶対的権力は絶対に腐敗すると云う自明の事柄への対処が、社会主義国では三権分立が存在せず実行できないでいる。
2、 蒋介石等国民党軍との解放闘争時代(内戦を続けていた時代)は、共産主義を信ずる解放軍は正に貧しい労働者や小作農民の味方であり、献身的でさえあった。建国後も暫くはその様な気風(彼らは作風と言った)を保持したが、政治権力を獲得し時間が経つと、労働者階級の代表と言うより支配階級と変化していった。
3、 文革時代(1967-1976年)まで物心共に清潔であった中国は、モラル崩壊と金銭第一主義や伝統的な事大主義や自己中心主義が急速に台頭してきた。結果的に贈収賄、業務上横領、知的所有権の侵害等が多発するに至った。罪を犯すことは悪いことだが、犯されることはもっと悪いこととの悪習の顕在化とも言える。以前北京で一年間毎日利用したタクシーの運転手から聴取する方法で調査した官僚(党員幹部でもある)収賄比率は、最低でも50%以上との回答で80%程度と言うのが多かった。この比率で言えば100万件どころではなく、数千万件に及ぶことになる。私の経験では小役人でさえ、彼等の月給程度のレベルの贈賄を求めるのは、日常的なものだった。国家公務員と地方公務員併せても年間一千件にも満たない日本とは比較にならない。
4、 習近平国家主席は「トラもハエも叩く」と言っているが、対象になっているのは極めて大規模な汚職や脱税、部下や関係者に“公平”に分配しなかった奴、政治的に非主流派に属している者の場合が殆どである。主流派でも不穏な動きをすれば処断されるのは、文革時代後期の林彪を想起すれば良いでしょう(逃亡中墜落死した)。中国だけでなく、ソ連崩壊後殆どすべての東欧諸国が民主化の方向に舵を切ったのも当然でしょう。北朝鮮の如く一般大衆は食べてゆくのが精一杯なら、反旗をひるがえす余裕はないが、むしろ中流階級が増加してくると反政府活動は活発化するのは、日本の戦後の歴史でも同様であったことは一考に値するでしょう。
5、 中米貿易摩擦も激化しているが、中国の改革開放政策が始まった三十数年前、中国は日本との貿易で大幅入超が数年続き、鄧小平は日本に対して「この様な不均衡な状態が長く続くようならタダではおかない」と脅迫めいた言辞を弄したものである。対米貿易や知的所有権問題の深刻さは比較にならない程大規模である。次回更に補足しよう。
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