2017年 10月の記事一覧
今後の中国の将来像を描く場合、前回日本の多くの専門家は日本や欧米の常識をベースにして判断する為にミスを犯していると述べたが、もう一点は目先の現象を延長したり、狭い範囲の事象を拡張解釈したりしてはミスを犯すということです。一方中国政府の願望である経済、軍事面でやがてアメリカに取って代わろうとしていることも実現は覚束ないと言えよう。
1. 石炭、セメント、鉄鋼などの生産量が既に過大になっており、第三次産業の発展に注力せねばならないことは、政府首脳も分かってはいるが人口の半分を占める農民を日本並みに5-6%の比率まで下げることも、アメリカ並みの大農業方式にすることも不可能です。良好な農地が少なく農民一人当たりの農地は日本より小さいことに誰も注目しないのが不思議である。
一つハッキリしていることは、従来格安だった農産品の価格の高騰は避けられないでしょう。
2. 中国より人件費が安く人口の多い国々が周辺にあり、当然競合してくるでしょう。インド、インドネシア、パキスタン、バングラデッシュだけでも20億近い人々がおり、その他のアセアン諸国も加えれば優に20億を超過するだけでなく、強敵になるでしょう。中国の欠点はアメリカ同様“自己中”意識が強すぎることです。より高品質、より高技術、より行き届いた製品やサービスを目指している日本は、むしろ先進国のこれからの世界的指標になるでしょう。
3. 左翼とか右翼とかに関係なく、全体主義や独裁主義が時代遅れになっていることに、中国の為政者は気付いていない。この200年世界史的に多くの民族が独立し、人々が自由に政府や政府首脳を批判したり選択したりできる民主主義国家が増えている趨勢に、逆行しようとしても長くは続かないことに気付くべきでしょう。その点中国の憲法でも指導理念にしている毛沢東思想では、「どんなに締め付け、弾圧しても民族の独立と人民の解放は時代の趨勢である」と喝破しているのは蓋し明察と言えるでしょう。
4. 以前にも紹介したが、ある中国の友人は、「中国では政府を批判しない限り、何でもやり放題であり、その上に政治的な自由を日本並みに与えたら、社会は混乱してしまうのは明らかだ」と言ったものだが、それから既に10年余が過ぎている。この間の中国での教育やITの普及は目覚ましいものがあり、世界的な人的交流も大幅に増加しており(アメリカへの留学生も日本の10倍の年間30万人以上)、今後10年以内にも政治改革は避けられないでしょう。世界を知り目覚めた人々は益々増加して、民主主義の自由には責任を伴うことも知るでしょう。
5.現在の中国は上も下も、経済至上主義(向銭看主義)に見えるが、やがては文革前の中国がそうであった様に、モラルを高め、互いに助け合い、周囲へ思いやりを持った生活の方が幸せであると気づくでしょう。昔池田首相がフランスを訪問した折に、「閣下はトランジスタのセールスマンのようだ」と、ドゴールに揶揄されたが、今では世界的に、日本は犯罪が少なく思いやりと「おもてなし」があるモラルとマナーの良い国と評価されるまでになったことも教訓になるでしょう。
お願い:私の当ブログに対し、ご意見やご異論があればご遠慮なくお寄せ下さい。
出来れば一般的メールにてお願い致します。
Mail add : knhr-yana@jcom.home.ne.jp
URL : https://www.consultant-blog.com/yanagizawa
「中国(人)とは何ぞや?」もそろそろ終盤にしたいと思うが、多くの日本人が、「何年付き合ってもよく分からない」と言ったり、誤解したりしているのは何故でしょうか?「中国はもうすぐ崩壊する」類の書物も、中国問題専門家と称される人達が執筆し書店には沢山並んでいるが、その中何冊か購読してみたが、観察基準に於いて無意識だろうが基本的な過ちを犯していると言える。
1. それは日本や欧米先進国の常識で以て観察、分析、総括しているからと断言できます。
2. 災難の基準がまるで異なる。例えば現中国が1949年10月1日の建国以降だけでも、1958-60年の大躍進政策の過ちにより、2-3000万の人々が餓死したと言われるが、国としては別段崩壊の危機には至らなかった。1966-1976年の10年余にわたる“文化大革命”により、経済は停滞し動乱で殺害された人々は数百万と言われたが、国の屋台骨がぐらつくことはなかった。一方では、1-2名であろうと外国(人)により殺害されれば、大騒ぎとなる。何故だろうか?
3. 中国は有史以来分裂と統一が頻繁に繰り返され、“内戦”により人口が半分以下になることも何度もあったくらいで、殆どの中国人の深層心理となっている。「中国は人口が多すぎる」と親しい中国人は平気で言うし(公式発表の人口以外に少なくとも約5000万の無戸籍人口がある)、交通事故に遭遇しても見知らぬ人達の災難なら笑って見ていられる。以前紹介したが長江の大洪水では、分洪政策と称して武漢の西方200㎞(直線距離)の沙市南方4-50㎞地点の分洪区で、堤防を故意に決壊させ武漢などの大都市を守ることが慣習となっている位である。少し詳しい中国地図なら「分洪区」と明記されているのが探せるでしょう。長江上流の四川省西部を流れる辺りは金沙江と呼び、更に上流の青海省に入ると通天河と呼ぶが、1998年の夏にこの辺りから武漢辺りにかけて長期間大雨が降り、その流水の高峰の推移を報ずるテレビの報道はまるで、赤道付近で発生しフィリピン東方辺りで北上する台風情報の様であった。
尚武漢付近での流量は何と一秒間に5万㎥と云う日本では想像できない水量であった。
4. 何度も強調してきたが、全ての植物、動物は環境に多大な影響を受けるが、人間も例外ではない。縄文時代より周囲が海で囲まれ、災害が多く左程資源も豊富でない島国で生活して来た我々日本人は、見知らぬ人達にも親切且勤勉で、いざと言う時には一致団結し、刻苦奮闘するのが風俗習慣にもなっている。中国人からすれば日本では儒教教育がされているようにも見えないのに、孔子の教えが浸透しているように見える。日本人の仕事ぶりは神経質と思えるほど緻密であり、不思議でならない。
5. 1960年代に北京等中国各地で仕事をしていた時、沢山の新中国成立前の解放闘争を主題とした映画を見せられたが、「三大規律八項注意」(注:具合的内容はネットで検索可能)に代表される解放軍のモラルレベルの高さが、映画の中随所で表現されていたが、それらは本当だったと年配者から聞かされ、又事実1960年代中国で散見した一般大衆のモラルの高さは日本より上だなと感じたくらいである。当時の状況に就いては、独裁体制は左翼右翼に関係なく、やがては腐敗堕落に陥りやすいという歴史的に証明された状況がまだ現れる以前の状態で、政府高官を初めとする支配階級も比較的清廉で、多くの人々も将来に夢を持っていた状況だったと言えよう。事実年配者は、「当時は誰もかれも貧しくて、自分だけがいい思いをしようなどとは思いも及ばず、助け合い精神が行き渡っていた」と証言している。
然し今では中国の旅行者が日本の地方に行っても、貧しい人々の生活ぶりを目にすることがなく、日本こそ社会主義国家ではないかと思う程だが、今後への予測を次回述べましょう。
お願い:私の当ブログに対し、ご意見やご異論があればご遠慮なくお寄せ下さい。
出来れば一般的メールにてお願い致します。
Mail add : knhr-yana@jcom.home.ne.jp
URL : https://www.consultant-blog.com/yanagizawa