2017年 6月の記事一覧
中国の対日好感度は、この十数年悪化し続けている。更に一路一帯政策など世界的規模での経済政策を展開し始め、長年の軍事力強化と相まって、「China Dream」(世界の富の三割を産出した18世前半の乾隆帝統治時代への回帰)の実現を計ろうとしていることは間違いない。一方経済軍事両面で弱かった1960年代、我々中国駐在中だった外国人を異常なまでに厚遇したことを考慮すると、強大な者には擦り寄るという事大主義の国民性でもあると言える。どんなに弱く不遇な時でも武士道精神を堅持すると言うような日本人の特徴とは大差がある様に見える。
1、1972年の国交回復時の共同声明(田中首相の訪中)や1978年の日中平和友好条約批准書交換(鄧小平の来日)で、強調された「覇権主義に反対し、お互い覇権主義を求めない」は実質的に反故にされている。江沢民や習近平の訪米の折に太平洋の東西を米国と中国で分け合い管理(実質支配)しましょうと、何度も提案していることが証拠の一つです。
2、中国は植民地の解放や民族の独立闘争を長年支持してきたが、最近はそのような言動はほとんど聞かれなくなった。それは中国では共産党の政策が憲法に優先し、更に毛沢東思想が共産党の政策に優先することになっているが、毛沢東思想の重要且つ基本的政策の一つが、
「人民は解放を求め、民族は独立を求める。これは近現代の潮流であり、党はこれを断固擁護するが、実現への道は平坦ではない。闘争、失敗、闘争、失敗を繰り返し、最後には成功する」と文革中の学習会ではよく教えられたものである。
3、中国では孫文も毛沢東も五族協和を提唱していたが、戦前の日本も大陸に於いては五族協和を唱え推進していた。但し中国側の言う五族は漢族、満州族、モンゴル族、チベット族、ウイグル族であったのに対し、日本側のそれは、前三族は同じだがチベット族とウイグル族はなく、代わりに朝鮮族と大和(日本)民族としていた。これが歴史的事実であったが、中国では何時の間にか日本はナチスドイツ同様民族純化政策を推進し、他民族を虐殺したと見做している。
4、以上から分かるように、中国の外交政策を俯瞰すると、歴史を逆説的に学び、「リベンジ」とも言える。先ずは自分が強くなり、日本等周辺国を威圧し、やがて機が熟せば欧米を下風に追いやろうと言うことです。経済面のみならず、宇宙ステーション建設も欧米日ロの現有のモノには参加せず、時間をかけて独自に建設しようとしていることにも表れている。
5、どうも歴史を謙虚に学んでいるようには見えない。「羹に懲りて膾を吹いている」日本に向かって「軍国主義を復活しようとしている」と批判し、自らは大陸国家でありながら、海洋国家でもあらんとする過ちを学んでいない。戦前の日本は海洋性国家でありながら大陸国家でもあらんとした誤りを犯したことは明白であろう。内政面では「権力は腐敗し易く、絶対的権力は絶対に腐敗する」との、歴史的に証明された教訓も活かされていない。国民党軍隊と戦っていた時代の解放軍は「人民のモノは針一本、糸一筋も盗ってはならない」、「借りた戸板は必ず返す」、「婦女子をからかわない(セクハラをしない)」等、「三大規律八項注意」は守られていたと、1960年代の初駐在時代に年配者から聞かされた。然し、今では大金持ち(資本家)も党員になれ、更なる巨万の富を求めて汚職などの腐敗現象が蔓延している。現代では①反主流派に入らないこと、②獲得した富は部下や協力者に公平に分配すること、③調子に乗ってあまりにも巨額な案件には手を出さないことの三点が、隠れた注意事項となっているくらいである。
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タイトルとは異なるが、もう一回横道にそれて日本人の異常な平和維持感覚に就いて述べましょう。大多数の日本人は米軍基地の存在は不愉快だが、いざと言う時には米軍が守ってくれると信じていることです。再三にわたり日米首脳が尖閣諸島は日米安全保障条約の範囲内であると言明しているのは象徴的なことです。自国の平和は先ずは自国民が率先して守ろうとしない国など、人口が数十万以下の小国(被保護国)は別として、古今東西存在しないでしょう。どうしてこうなったのでしょうか?!
1、 出発点は先の大戦の結果、米国の「日本を二度と軍事大国にしてはならない」との認識から始まります。その結果が、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我々の安全と生存を保持しようと決意した」との前文や、第9条の戦力は保持せず、国の交戦権は認めないと規定した憲法を採択したことです。当時吉田首相は「米軍と言う番犬を飼うことにした、と思えばいいか!」と言ったそうです。
2、 その後、1950年6月北朝鮮の侵攻により朝鮮戦争が勃発し、急遽「警察予備隊」が設置され,自衛隊の前身となったが、マッカーサー総司令官は日本の再軍備を説き、解任されてしまう事態も発生、一方政治、労働、学究広範な分野で左翼勢力が拡大した。1967年には中国が初めて水爆実験に成功し、当時中国駐在中だった私は「中国の核戦力は平和維持の力になる」と、多くの現地滞在同業者(左翼勢力が多かった)から聞かされショックを受けた。彼等の信奉するところに依れば、米国など民主主義勢力は帝国主義勢力であり、プロレタリア独裁に依る真の人民解放の妨げになるというもので、その尾ひれは今なお存在していると見られる。
3、 日本駐留の米国軍人の母親や夫人にしてみれば、自国の平和維持に率先して取り組もうとしない日本人の為に、彼らが命を懸けることに納得がいくだろうか?1965-66年と北京駐在時代に、ベトナム戦争に就いてある中国国際貿易促進委員会(駐在員の身元引受団体)幹部から、「今は米軍が北爆する等威勢がいいが、最後は地上戦だ。前線まで発電機や冷蔵庫を持ち込み冷えたビールを飲みたがる米軍が、一日中でも水辺にひそみ狙撃のチャンスを待っているベトナム軍に勝てる訳がない」と聞かされ、その時は半信半疑だったが、結局その通りになり覚悟の有無が決め手と思い知らされた。
4、 一部の西欧諸国の社会福祉政策の充実ぶりや平和主義が報道されることが比較的多いが、スイス、オーストリア、スウェーデン等は国民皆兵であり、一般人も定期的に軍事訓練を受けることや、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、ドイツ、ブルガリア等が徴兵制であることは滅多に報道されず、従い日本人はほとんど知らない。
5、 結局戦前の軍事優先主義の結末(敗戦と言う物的・人的な空前絶後の災難)に懲り懲りし、米国の思惑や左翼勢力の“日本解放”の幻想も加わり、何時の間にか日本が軍事的行動さえ起こさねば、平和は続くとの幻想に取りつかれ、今なおその状態が続いていると言えよう。正に「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」状態が続いていると言える。
尖閣諸島周辺で日本漁船が漁労を行えず、中国の漁船は時々大挙して押しかけ、更には小笠原諸島にまで押しかけて来る状況は大きな問題を提起していると言えよう。
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