昨年からユニークなベンチャー企業の支援を始めた。新規事業、子会社、合弁会社等の立ち上げ支援については、自らの起業も含めて、日系/外資系とも何度も経験があるが、今回は先端技術のR&Dを核にしたいわゆる本格的な(と言うべきか?)ベンチャーらしいベンチャー企業の支援である。

私自身は工学部出身で科学技術は大好き、いつもコンサルティングを通じてクライアントの有する技術を理解するための勉強を楽しませていただいているが、今回はこれまでにない別の面も見ているような気がする。詳しいことは申し上げられないが、技術の性格もさることながら、ベンチャー企業創業者のものの考え方や組織文化に関することである。

ベンチャー企業がいわゆる「死の谷」を越えるまでに経験する様々な苦労は、本当に大変だ。キャッシュフローの確保、販路の開拓等々と枚挙にいとまがない。効率よくそれらを解決する組織が出来上がっているわけではない。リスクをとりたがらない日本のビジネス環境では、エンジェルのような存在を見つけることも極めて難しい。

そんな苦労はあまり気にせず(悪く言うと、そんな仕事はお構いなしにだが)、「武士は食わねど高楊枝」でやってきた人達は、一体何によって支えられて来たのだろうか。私自身の創業経験や、この未曾有の世界同時不況で少しは分かっているような気がしていたが、それは全く十分ではなかったと悟った。これまで大企業、中堅企業、プロフェッショナル・ファーム等の顧客と多く接するうちに、無意識にある程度確立された側に身(頭)を置く発想になっていたのではないかと思う。

本当の(?)ベンチャー企業の創業者のモーチベーションは、やはり開発したユニークな技術、製品、サービスそのものだ。それらを無事世に送り出すまできちっと育てることである。それは、子育てをする母親の心と同じだ。そんなことは始めから分かっていることなのだが、しかしそれは頭で理解することではなく、接してみて初めて感じることなのである。

わが子程自らを投影し、またそれにもかかわらず自分とは別個の存在であることを深く理解しなければいけないというのは他にない。それは、楽しくもあり、苦しくもあるだろう。ベンチャー企業の経営者にとっても同じではないだろうか。

ヴィブランド・コンサルティング
代表取締役 澤田康伸