2011年 8月の記事一覧
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今朝、オンラインで新聞を読んでいたら、政府の円売り介入の実施、量的緩和の決定の速報に続いて、日立と三菱重工の経営統合に関する速報が飛び込んできた。前者は今日か、明日かと目を凝らして見ていたのだが、後者は全く寝耳に水だった。速報が出た直後から否定のコメント等も出ていて確認できなかったが、日立の中西社長が協議入りを認めたことで決着した。(※後に、これは再度覆されたが、、、。)
しかし、リーマンショック以降の経済環境の中で、昨年から今年にかけての動きを見ていると、これが日本の大企業が遅まきながらも取り組み始めた「本気のグローバル化」の流れを決定的にするものだということがよく分かる。決定的というのは、残念ながら近い将来にこの流れが主流になっているだろうという意味ではなく、グローバル化への取り組みの本気度が業績等の決定的な差になって現れているだろうと言う意味である。
当ブログでも本年の2月3日の「新日鉄・住金の経営統合」や2月8日の「M&Aの増加」で日本企業のグローバル化に触れた背景には、このような状況の中で今後大きな変化を遂げなければならない日本企業に対する期待と不安がある。
日立は、リーマンショック後に巨額の赤字を抱え、ここ2~3年、経営体制の刷新や社会インフラの整備に関するビジネスを中心に戦略の見直しを行ってきた。その一つの結論が三菱重工との広範な経営統合を検討するということであろう。
これまで多くの日本企業は、形の上でのグローバル化はずいぶん昔に済んでいるものの、そのメンタリティーにおいては残念ながら日本市場中心主義だった。日本市場の成長拡大期はそれでも良かったが、日本市場の縮小が決定的になり、一方新興国を中心にグローバル市場が圧倒的な勢いで拡大する時代となっては、意思決定が遅く、ジリジリと敗走を続けてきたと言える。
かなり前から日本市場は多くの分野でオーバーコンペティションの状態であり、身をすり減らした高品質・機能競争はグローバル市場ではガラパゴス化を招き、結果として利益率は低く、グローバル市場で決定的な競争力要因となる巨大な投資を行う余裕が小さくなっていた。
しかし、これまで培ってきた技術やブランドは、グローバル市場でも適切な形で活かすことができるし、活かさなければならない。その蓄積には十分なものがあるはずである。私は、その成功の鍵は、これから日本企業が自らに適したものとして、また海外企業とは良い意味で差別化できる要素として開発していかなければならない、ある種の「マネジメント・システム」であると考えている。
6月8日付の当ブログ「クラウド・コンピューティング」で、私が20年近く前に考えていたBPRの歴史的な意味について少し触れた。欧米や韓国・台湾などの先進企業が主にICTの革新や応用によってグローバル化に対応し、グローバル化を推進してきたことに対して、日本企業が彼らに追い付くためにはまずそのハンディキャップを返さなければならない。そして、再び彼らを追い越すためには、それと一体になったものとして、ユニークな「マネジメント・システム」が必要になってくるであろう。それは技術などの「ハードスタッフ」に併せて必要になってくるもので、人間系に近い一種の「ソフトスタッフ」であると言える。
その「マネジメント・システム」なり、「ソフトスタッフ」なるものが何かについては、私自身も研究開発の途上であるが、これまでの企業/事業戦略、M&A/PMI、ブランド戦略、組織戦略、人事戦略等に関するコンサルティング経験の中で個別具体的に考えてきたものを「これまでにない一つ上の次元で統合するもの」であると考えている。また、「移転の経済」を効率化するものでなければならないと考えている。
更に、その方向性は「移転の経済」を効率化しながら「統合度を高める」と同時に、人間系の核である知能や技能の本質に迫るものでなければならないと考えている。非常に難しいテーマであるが、反対に言うとICTや生命科学等の技術は人間性の本質を変えていくところまで既に発展してしまっているという厳然たる事実があり、それを前にすれば避けて通れない問題であろうと思っている。
最後に、上記に関連する身近な問題として、日本企業や日本人が避けて通れない直近の具体的な課題がある。それは、英語である。私は、英語の問題は、日本企業だけではなく、全ての日本人を包み込んで、政治、経済社会、教育、スポーツ・芸能等のあらゆる分野に影響を与え、日本の競争力を決する喫緊の課題と考えている。
最近、多少批判を浴びながらも「英語を公用語にする」と言う楽天等の勇気ある企業が現れてきたが、まだまだ大きな流れになるまでには至っていない。果たして今後10年の間にこの動きはどこまで拡がっているであろうか。
私は約20年弱前のBPRの日本への導入時にも、英語の問題が背景にあることを感じたのだが、残念ながら「日本の失われた20年」の間に進展が全くなかったどころか、むしろ後退してしまった。2年程前の別のブログ「最強のグローバルスタンダード」でこの問題に触れている。この時、「200年以内に日本語は第2国語になる。いや、100年以内かも知れない」と書いたのだが、最近は、ある種の願いを込めて「100年以内に日本語は第2国語になる。いや、50年以内かも知れない」と思っている。
と書くと、批判される方も多くおられると思う。しかし、これからのグローバル化は経済だけではなく、社会、政治、全ての分野を巻き込んで連動し、巨大な複雑系の様相を呈して行くことは間違いない。そのような内外の環境化では、全ての国民が程度の差こそあれアイデンティーティーの再編を伴う変化を経験することになる。そのトランジションに失敗すれば、憂鬱な日々が待っていることになりかねない。
要するに、英語を含めた上記のテーマは極めて本質的な課題であり、とりわけ日本人や日本企業にとっては、これまでに確立したアイデンティティーの大きな改変を伴う覚悟がいるのである。
日立と三菱重工の経営統合は、世界の社会インフラ整備に関連するビジネスを焦点において競争優位の確立を目指すが、日本人や日本企業の「精神構造のインフラ」をも整備する試金石となろう。多いに期待、応援するとともに、全ての日本企業がその経験から学びとっていくことが重要であろう。
ヴィブランド・コンサルティング
代表取締役 澤田康伸
しかし、リーマンショック以降の経済環境の中で、昨年から今年にかけての動きを見ていると、これが日本の大企業が遅まきながらも取り組み始めた「本気のグローバル化」の流れを決定的にするものだということがよく分かる。決定的というのは、残念ながら近い将来にこの流れが主流になっているだろうという意味ではなく、グローバル化への取り組みの本気度が業績等の決定的な差になって現れているだろうと言う意味である。
当ブログでも本年の2月3日の「新日鉄・住金の経営統合」や2月8日の「M&Aの増加」で日本企業のグローバル化に触れた背景には、このような状況の中で今後大きな変化を遂げなければならない日本企業に対する期待と不安がある。
日立は、リーマンショック後に巨額の赤字を抱え、ここ2~3年、経営体制の刷新や社会インフラの整備に関するビジネスを中心に戦略の見直しを行ってきた。その一つの結論が三菱重工との広範な経営統合を検討するということであろう。
これまで多くの日本企業は、形の上でのグローバル化はずいぶん昔に済んでいるものの、そのメンタリティーにおいては残念ながら日本市場中心主義だった。日本市場の成長拡大期はそれでも良かったが、日本市場の縮小が決定的になり、一方新興国を中心にグローバル市場が圧倒的な勢いで拡大する時代となっては、意思決定が遅く、ジリジリと敗走を続けてきたと言える。
かなり前から日本市場は多くの分野でオーバーコンペティションの状態であり、身をすり減らした高品質・機能競争はグローバル市場ではガラパゴス化を招き、結果として利益率は低く、グローバル市場で決定的な競争力要因となる巨大な投資を行う余裕が小さくなっていた。
しかし、これまで培ってきた技術やブランドは、グローバル市場でも適切な形で活かすことができるし、活かさなければならない。その蓄積には十分なものがあるはずである。私は、その成功の鍵は、これから日本企業が自らに適したものとして、また海外企業とは良い意味で差別化できる要素として開発していかなければならない、ある種の「マネジメント・システム」であると考えている。
6月8日付の当ブログ「クラウド・コンピューティング」で、私が20年近く前に考えていたBPRの歴史的な意味について少し触れた。欧米や韓国・台湾などの先進企業が主にICTの革新や応用によってグローバル化に対応し、グローバル化を推進してきたことに対して、日本企業が彼らに追い付くためにはまずそのハンディキャップを返さなければならない。そして、再び彼らを追い越すためには、それと一体になったものとして、ユニークな「マネジメント・システム」が必要になってくるであろう。それは技術などの「ハードスタッフ」に併せて必要になってくるもので、人間系に近い一種の「ソフトスタッフ」であると言える。
その「マネジメント・システム」なり、「ソフトスタッフ」なるものが何かについては、私自身も研究開発の途上であるが、これまでの企業/事業戦略、M&A/PMI、ブランド戦略、組織戦略、人事戦略等に関するコンサルティング経験の中で個別具体的に考えてきたものを「これまでにない一つ上の次元で統合するもの」であると考えている。また、「移転の経済」を効率化するものでなければならないと考えている。
更に、その方向性は「移転の経済」を効率化しながら「統合度を高める」と同時に、人間系の核である知能や技能の本質に迫るものでなければならないと考えている。非常に難しいテーマであるが、反対に言うとICTや生命科学等の技術は人間性の本質を変えていくところまで既に発展してしまっているという厳然たる事実があり、それを前にすれば避けて通れない問題であろうと思っている。
最後に、上記に関連する身近な問題として、日本企業や日本人が避けて通れない直近の具体的な課題がある。それは、英語である。私は、英語の問題は、日本企業だけではなく、全ての日本人を包み込んで、政治、経済社会、教育、スポーツ・芸能等のあらゆる分野に影響を与え、日本の競争力を決する喫緊の課題と考えている。
最近、多少批判を浴びながらも「英語を公用語にする」と言う楽天等の勇気ある企業が現れてきたが、まだまだ大きな流れになるまでには至っていない。果たして今後10年の間にこの動きはどこまで拡がっているであろうか。
私は約20年弱前のBPRの日本への導入時にも、英語の問題が背景にあることを感じたのだが、残念ながら「日本の失われた20年」の間に進展が全くなかったどころか、むしろ後退してしまった。2年程前の別のブログ「最強のグローバルスタンダード」でこの問題に触れている。この時、「200年以内に日本語は第2国語になる。いや、100年以内かも知れない」と書いたのだが、最近は、ある種の願いを込めて「100年以内に日本語は第2国語になる。いや、50年以内かも知れない」と思っている。
と書くと、批判される方も多くおられると思う。しかし、これからのグローバル化は経済だけではなく、社会、政治、全ての分野を巻き込んで連動し、巨大な複雑系の様相を呈して行くことは間違いない。そのような内外の環境化では、全ての国民が程度の差こそあれアイデンティーティーの再編を伴う変化を経験することになる。そのトランジションに失敗すれば、憂鬱な日々が待っていることになりかねない。
要するに、英語を含めた上記のテーマは極めて本質的な課題であり、とりわけ日本人や日本企業にとっては、これまでに確立したアイデンティティーの大きな改変を伴う覚悟がいるのである。
日立と三菱重工の経営統合は、世界の社会インフラ整備に関連するビジネスを焦点において競争優位の確立を目指すが、日本人や日本企業の「精神構造のインフラ」をも整備する試金石となろう。多いに期待、応援するとともに、全ての日本企業がその経験から学びとっていくことが重要であろう。
ヴィブランド・コンサルティング
代表取締役 澤田康伸
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