立地おもしろ入門(4)ティージーの中にティージー?
「ラーメンはやめました」
「その方が熊さんらしいよ。それで今度は何をやることになったの」
「そこででさあ。それはじっくり考えていこうというわけで、それまでおやっさんの立地論を勉強しておこうとおもったんでさあ」
「おやまあ、熊さんにしては殊勝な心がけだねえ。いよいよ熊さんも立地の大切さがわかってきたようだね」
「さっそくですが、立地でいちばん大切なことは何ですか?」
「ティージーですよ」
「ティージー?」(文末解説参照)
「商圏規模とか、商圏の質ということがもっと重要なんですが、熊さんが一番わかりやすいことから始めましょうね」
「で、何ですかい、ティージーてのは?」
「人々の交通が発生する場所ですよ」
「??」
「交通発生源ともいいます。人々がその場所に集中するような場所です」
「集客施設というやつですか?」
「集まる人が、その施設のお客さんである必要はないんですよ」
「てえことは、従業員や店長さんも含むてえことで」
「そればかりじゃあ、ありません。大きなビルの玄関、大きな駐車場の出入り口、こういった所もティージーです」
「いっぱい人が集まる」
「集まるばかりじゃあありません。そこを中心に広がる場所でもあるでしょ」
「つまりティージーてのは、人々が集まってきて広がっていくような場所てえことですか」
「そうですよ。ところで熊さん、一番大きいティ−ジーは何だかわかりますか?」
「何でしょう?」
「いやに素直だね。熊さんがそんなに素直だとちょっと気持ち悪いね。まあいいです。それはね、駅ですよ」
「駅ですか?」
「その駅の中でも、もっとも集中する場所はどこですか?」
「うーん、改札口ですかねえ」
「そうそのとおり。さすが」
「駅のホーム階段の出入口や切符売場なんかもそうじゃあありませんか」
「そうそのとおり。さすが熊さんだねえ。飲み込みが早い」
「駅が一番大きいティージーですか。それでその中にもティージーがある。うん??」
「どうしたの熊さん」
「するってえと、ティージーの中にティージーがあるってえことですかい?」
「ティージーの外にもティージーがありますよ」
「へっ?」
「駅から出たら熊さんはどこへでも行けますか?」
「へえどこへでも行けますよ」
「そんなことないでしょ。駅から出たら、通常は、駅前の道路やロータリーに従って歩くでしょ」
「ああ、そうでした。まったく近頃は不便になったもんです。まっすぐ好きな所へ向かったら車に轢かれちゃうときたもんだ」
「街がどんどん人工的になると、道が作られちゃうのですよ。でたらめに作ると都合が悪いから、きちんと人が歩く道路と車が通る道路を分ける。そうして出来るのが交差点です」
「そうそこらじゅうに交差点だらけだ」
「熊さん、この交差点がティージーになっていませんか」
「人々が集中しますものね」
「つまりティージーは、ティージーの内側にも、外側にもティージーを発生させるんです」
「じゃあ、おやっさん。交差点もティージーなんだから、交差点の中にもティージーができるんですかい?」
「そうですよ」
「へっ?」
「小さな交差点じゃあわかりませんから、大きな交差点を思い浮かべてくださいよ。横断歩道や信号がついているでしょ。交差点の中でも人々が集中する場所とそうでない所ができるでしょ」
「はあ、まったくだ」
「おわかり?」
「じゃあ、おやっさん。駅もティージーなら、その駅を内側にしたティージーてのもあるんですかい?」
「おっと、熊さん。冴えてるねえ。その通りだよ。それが発着駅だよ。どんな駅だって駅だけあるなんてことはない。大きな街に発着駅があるだろう」
「つまり、ティージーは『マンダラ』ということかあ」
「おいどこへ行くんだい、熊さん。まだ話しは終わっちゃいないよ。まったくもう…」
【解説】
「ティージー」とは、Traffic Generatorの頭文字をとったものである。
「交通発生源」または「交通誘発体」という意味を持つ。
本文にあるように、ティージーには、駅や集客施設のほか交差点などが具体的なものである。これ以外にも、商店街や大型小売店などもあるが、ティージーの概念はそうした具体的なものを指しているのではなく、ティージーはその内側にも外側にもティージーを発生させることに注目して生まれたものである。したがって、単に、駅前にあれば立地が良いと一律に解釈してしまいがちの従来の立地論にメスを入れる概念である。この新たな立地論(筆者はこれをSORBICSと呼称している)によれば、ティージーの中のさらにどのティージーにあるかを見極める。そしてこのことが店舗の立地判定・売上予測を左右する大きなカギになっている。
駅に近い物件であっても、人々が通る必然性のない場所では店の認知が広がるわけはない。どんなに大きな交差点であっても、人々や車両の利用しないようなところがティージーになるわけもない。
そもそも商売は、人々に既存の価値ではなく、新たな価値を提案することである。いわば「無理強い」することである。どうして人々が、さらなる無理をしてまでも無理強いされる店まで行くであろうか?
人々が自然に集中してしまうような場所でなければ、この「無理強い」はできない。
●ホームページ
http://www.sorb.co.jp
「その方が熊さんらしいよ。それで今度は何をやることになったの」
「そこででさあ。それはじっくり考えていこうというわけで、それまでおやっさんの立地論を勉強しておこうとおもったんでさあ」
「おやまあ、熊さんにしては殊勝な心がけだねえ。いよいよ熊さんも立地の大切さがわかってきたようだね」
「さっそくですが、立地でいちばん大切なことは何ですか?」
「ティージーですよ」
「ティージー?」(文末解説参照)
「商圏規模とか、商圏の質ということがもっと重要なんですが、熊さんが一番わかりやすいことから始めましょうね」
「で、何ですかい、ティージーてのは?」
「人々の交通が発生する場所ですよ」
「??」
「交通発生源ともいいます。人々がその場所に集中するような場所です」
「集客施設というやつですか?」
「集まる人が、その施設のお客さんである必要はないんですよ」
「てえことは、従業員や店長さんも含むてえことで」
「そればかりじゃあ、ありません。大きなビルの玄関、大きな駐車場の出入り口、こういった所もティージーです」
「いっぱい人が集まる」
「集まるばかりじゃあありません。そこを中心に広がる場所でもあるでしょ」
「つまりティージーてのは、人々が集まってきて広がっていくような場所てえことですか」
「そうですよ。ところで熊さん、一番大きいティ−ジーは何だかわかりますか?」
「何でしょう?」
「いやに素直だね。熊さんがそんなに素直だとちょっと気持ち悪いね。まあいいです。それはね、駅ですよ」
「駅ですか?」
「その駅の中でも、もっとも集中する場所はどこですか?」
「うーん、改札口ですかねえ」
「そうそのとおり。さすが」
「駅のホーム階段の出入口や切符売場なんかもそうじゃあありませんか」
「そうそのとおり。さすが熊さんだねえ。飲み込みが早い」
「駅が一番大きいティージーですか。それでその中にもティージーがある。うん??」
「どうしたの熊さん」
「するってえと、ティージーの中にティージーがあるってえことですかい?」
「ティージーの外にもティージーがありますよ」
「へっ?」
「駅から出たら熊さんはどこへでも行けますか?」
「へえどこへでも行けますよ」
「そんなことないでしょ。駅から出たら、通常は、駅前の道路やロータリーに従って歩くでしょ」
「ああ、そうでした。まったく近頃は不便になったもんです。まっすぐ好きな所へ向かったら車に轢かれちゃうときたもんだ」
「街がどんどん人工的になると、道が作られちゃうのですよ。でたらめに作ると都合が悪いから、きちんと人が歩く道路と車が通る道路を分ける。そうして出来るのが交差点です」
「そうそこらじゅうに交差点だらけだ」
「熊さん、この交差点がティージーになっていませんか」
「人々が集中しますものね」
「つまりティージーは、ティージーの内側にも、外側にもティージーを発生させるんです」
「じゃあ、おやっさん。交差点もティージーなんだから、交差点の中にもティージーができるんですかい?」
「そうですよ」
「へっ?」
「小さな交差点じゃあわかりませんから、大きな交差点を思い浮かべてくださいよ。横断歩道や信号がついているでしょ。交差点の中でも人々が集中する場所とそうでない所ができるでしょ」
「はあ、まったくだ」
「おわかり?」
「じゃあ、おやっさん。駅もティージーなら、その駅を内側にしたティージーてのもあるんですかい?」
「おっと、熊さん。冴えてるねえ。その通りだよ。それが発着駅だよ。どんな駅だって駅だけあるなんてことはない。大きな街に発着駅があるだろう」
「つまり、ティージーは『マンダラ』ということかあ」
「おいどこへ行くんだい、熊さん。まだ話しは終わっちゃいないよ。まったくもう…」
【解説】
「ティージー」とは、Traffic Generatorの頭文字をとったものである。
「交通発生源」または「交通誘発体」という意味を持つ。
本文にあるように、ティージーには、駅や集客施設のほか交差点などが具体的なものである。これ以外にも、商店街や大型小売店などもあるが、ティージーの概念はそうした具体的なものを指しているのではなく、ティージーはその内側にも外側にもティージーを発生させることに注目して生まれたものである。したがって、単に、駅前にあれば立地が良いと一律に解釈してしまいがちの従来の立地論にメスを入れる概念である。この新たな立地論(筆者はこれをSORBICSと呼称している)によれば、ティージーの中のさらにどのティージーにあるかを見極める。そしてこのことが店舗の立地判定・売上予測を左右する大きなカギになっている。
駅に近い物件であっても、人々が通る必然性のない場所では店の認知が広がるわけはない。どんなに大きな交差点であっても、人々や車両の利用しないようなところがティージーになるわけもない。
そもそも商売は、人々に既存の価値ではなく、新たな価値を提案することである。いわば「無理強い」することである。どうして人々が、さらなる無理をしてまでも無理強いされる店まで行くであろうか?
人々が自然に集中してしまうような場所でなければ、この「無理強い」はできない。
●ホームページ
http://www.sorb.co.jp