今年の夏は、冷夏に終わりそうである。暑い夏を期待して、主力ブランドの派生商品として、凝った名前のビールを次から次へと投入し、もっともっとビールを飲んでもらおうとしたビールメーカーの思惑通りに行かなかったようである。幅広い商品バラエティを供給して、「何か目新しいもの」を求める消費者の欲望を満たそうとする。そして、広告の大量出稿で凝ったブランド名を、消費者の脳にインプットする。しかし、結局は、ひと夏の思い出になってしまい、夏が過ぎると消費者の脳に残ったブランドは、「スーパードライ」であり「一番しぼり」という結果になってしまう。

製品ラインを拡張すると、単一ブランドで様々な消費者のニーズを満たすことができるようになる。しかし、この戦略を強力に推進すると、顧客はさらにバラエティを求めるようになり、間接的にブランド・スイッチを促すことになる。短期的には、派生商品によってブランド全体のシェアは増加するかもしれない。しかし、カニバリゼーション等によって、長期的には、主力ブランドのブランドロイヤルティを低下させる可能性が少なくない。派生商品を増やすことは、馴染み客からすると、ブランドイメージを拡散させるように感じられるものである。あまり派生商品を増やすと、「難しい宣伝文句はいいから、とにかく、もともとのスーパードライを飲ましてくれ!」という顧客が増えることになる。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)