広告業界の業績が低迷している。大手3社とも、第一四半期の売上げは前年比で10%以上減少した。9時に始まるべき番組が8時57分に始まる現状を見ると、広告業界の窮状が理解できる。景気が悪化すると、広告費と交際費が、真っ先に減少する。広告は本質的に見込ビジネスである。時間あるいは場所を販売し、そこに広告を出稿してもらって、売り上げが上がる仕組みである。出稿が減少すると、空き媒体が増え売り上げが減少する。見込ビジネスは商品が生命線である。広告を出稿してもらえそうな時間と場所を、いかに提供できるかが決め手になる。

対照的に、コンサルティング業界も翻訳業界も、本質的に受注ビジネスである。受けた注文をいかに正確に、忠実に、誠実に履行するかが決め手になる。また、受注先の企業数が、見込ビジネスほど多くないのも特徴である。利幅は小さいが、景気の変動に大きく影響されないビジネスである。こう考えると、見込ビジネスと受注ビジネスを上手くミックスして商品を提供できる企業が、不況に強いということなる。広告会社が、長期の大規模プロジェクトを受注し、デパートが長期の展示会等の催し物を提供するのは、同じ論理である。この場合の商品は、発想力、企画力、デザイン力ということになる。どのような業界にあっても、ビジネスをこの二つの側面から考えて、そのための成功要因を普段から強化することが必要である。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)