いよいよ日立製作所が「脱・総合電機」へと大きく舵を切る。日本を代表する超巨大企業であり、日本中の優秀な人材を集めた企業では、とにかく成長することが最優先課題になってしまう。投資家も、超優良企業なのだから、限りなく成長してくれるだろうと、勝手に思い込んでしまう。通常、戦略に対する脅威は、競合他社の戦略変化のような外的な要因によってもたらされる。しかし、内的な要因が大きな問題である場合も少なくない。

戦略に影響を与える内的要素のなかで、最も危険なものが成長願望である。先輩達が築き上げた売上No. 1の座は死守しなくてはいけない。そのために、限りなく売上を伸ばさなくてはならない。そして、顧客が持つ限りない要望を満たす商品を、次から次ぎに投入すれば、すべての顧客から受注でき、その結果売上が上がると考えてしまう。すでに飽和状態にある市場では、戦略のベクトルは、製品ラインの拡大、新仕様の追加へとエスカレートして、果ては、ライバル企業を買収して、売上増大をはかる。高収益構造を構築することなしに、売上だけに目を奪われ、成長を追い求める戦略は、いつかは行き詰る。売上至上主義で世界一の座を死守しようとしたGMの現状がすべてを物語っている。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)