相変わらず政治の世界で混乱が続いている。選挙で掲げた高邁な理想は、すでに忘却のかなたに葬られたようである。長引く円高、格安航空会社の台頭、ロシア産小麦の禁輸と世界は激変しているのに、政界では権力争いが進行中である。プロ野球の弱小チームが努力の末、せっかく日本一になったのに、翌年は内部の混乱で弱小チームに戻ってしまうという例は多い。日本一になることは難しいが、その地位を維持することはさらに難しい。巨人に日本一の座を9年連続で維持させた川上監督のリーダーシップの素晴らしさを再認識させられる。

組織というものは、いったん出来上がると、奉仕すべき対象よりも、組織の存続のほうが最優先になるというやっかいな性質を持っている。奉仕する対象は国民なのに、そんなことは我関せずとばかりの権力争い。政界では倒産がありえないため、泥沼の戦いが延々と続く。ビジネスの世界では、お客様をほったらかしにして、社内で派閥争いをしていたら、会社は倒産への片道切符を手にしているようなものである。ビジネスの源泉は社内ではなく社外にある。そのためには、お客様の意見に耳を傾けて、商品を磨く必要がある。

組織とは玉石混交である。組織は一般的に、懸命に努力する人材が30%、ぶらさがりの人材が30%、その中間が40%という割合で構成されている。すると、ぶらさがりの人材の30%を除外して、残りの70%でビジネスを遂行すれば業績が大幅に上昇すると考えがちである。しかし、選ばれた70%の人材が、再び3:4:3の割合に分かれるという性質を持っている。とにかく、組織とはやっかいなものである。要するに、組織を維持するために、変化を阻止する動きが必ず現れる。

リアプロ型テレビ用のレンズユニットで世界市場をほぼ独占していた企業が、民事再生法の適用を申請した。テレビの市場が薄型に移るという環境の変化に対応できなかったのが、直接の原因である。もちろん単品経営のリスクを回避する戦略を構築できなかったことも大きい。ビジネスでも政治でも、発展に必要な智恵の源泉は常に組織外にある。組織内の問題解決に振り回され、環境の変化に対応できなければ、高邁な理想も国民の胸を打ち続けることはできない。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)