団地③
記事投稿日2014年12月09日火曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
6 団地には、建物の区分所有に関する規定を準用しているが、しかし、
団地全体に及ぼす必要のないものや、棟ごとに処理すべき事項につ
いては、前にも述べたが、準用されない。
①第三節「敷地利用権」は、団地内に戸建て建物がある場合、敷地
利用権について、分離処分の禁止等を一般的に準用すべきではない
からである。
②第七節「義務違反者に対する措置」、は、同じ棟の区分所有者が
これについて判断して決議すべきであり、団地全体で処理すべき問
題ではない。
③第八節「復旧・建替え」の規定の復旧に関する規定は、棟ごとの
区分所有者によって決定すべきだからである。建替については、別
個に、法69条、70条に規定を置いた。
7 団地内の建物の建替えに関する決議
団地内に、ABC3棟の建物がある場合において、区分所有建物
であるA棟を建替えたいと思ったとき、その敷地をA棟の所有者だけ
で所有しているときは、その所有者だけの判断で建替えることがで
きる。つまり、その棟の区分所有者及び議決権の各5分の4以上の
多数による決議のみで足りる(区分所有法61条)。
しかし、その敷地が団地所有者の共有に属する場合(つまり団地
全体で共有している場合)は、その棟だけの問題ではなく、団地全
体の問題となる。そこで、このような場合について建替え決議の手
続きを定めたのが、法60条、70条である。
(1) 単一棟の建替え承認決議
① イ、一団地内にある数棟の建物(団地内建物)の全部又は一
部が専有部分のある建物であり、かつ、ロ、その団地内の特定
の建物(特定建物=建替えようとする建物)の所在する土地(こ
れに関する権利を含む。)が「団地建物所有者の共有」に属す
る場合においては、ハ、団地管理組合の集会において、議決
権(土地等の共有持分の割合で決まる)の4分の3以上の多数
による承認の決議(建替え承認決議)を得たときは、当該特定
建物の団地建物所有者は、建替え(当該特定建物を取り壊し、
かつ、当該土地又はこれと一体として管理若しくは使用をする
団地内の土地に新たに建物を建築すること)ができる(区分所
有法69条1項、2項)。
〇 この建替え承認決議は、議決権のみで足り、団地所有者の数は
考慮されない。
〇 この建替え承認決議は、「団地内に区分所有建物が1棟以上あ
ること」、「建替えようとする建物の敷地が団地建物所有者の共有
に属すること」、「団地管理組合の集会で議決権の4分の3以上の
決議があること」の3つの要件が必要。
② 以上は、団地管理組合の建替え承認決議の問題であり、その
前提に、
イ 建替えたいと思っている当該特定建物=建替えようとする建
物が区分所有建物である場合、その建替え決議(区分所有法61
条の5分の4の決議)又はその区分所有者の全員の同意がある
こと。
ロ 当該特定建物が区分所有建物以外の建物である場合 その所
有者の同意があることが必要である(区分所有法69条1項1号、
2号)。
〇 建替えようとする建物について、まず、①その建替えの要件を満
たしておいて、さらに、②団地管理組合の建替え承認決議が必要で
ある。
③ 建替え承認決議においては、当該特定建物(建替えの対象とな
っている建物)の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、
いずれもこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなされ
る(区分所有法69条3項本文)。
棟の集会で建替えが決まった以上、建替え承認決議においては、
反対に回ることを認めないとしたわけである。
④ 建替え承認決議の集会の招集は、当該集会の会日より少なくと
も2月前に、議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概
要をも示して発しなければならない(区分所有法69条4項本文)。
⑤ 建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物の建
替えに特別の影響を及ぼすべきときは、その影響を受ける建物の
区分所有者全員の議決権の4分の3以上の議決権を有する区分所
有者(建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 その建
物の所有者)が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当
該特定建物の建替えをすることができる(区分所有法69条5項)。
(2) 複数棟の一括建替え承認決議
① 建替えが検討されている特定建物が2以上ある場合、(1)で見
たように、単棟ごとの建替え承認決議に付すこともできるが、2以
上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所
有者の合意により、当該2以上の特定建物の建替えについて一括
して建替え承認決議に付することができる(区分所有法69条6項)。
② 当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建
物の建替えを会議の目的とする集会(区分所有法62条1項)におい
て、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多
数で、当該2以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承
認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、
その決議があったときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分
所有者に限る。)の合意(一括建替え承認決議に付すための合意)
があつたものとみなされる(区分所有法69条7項)。
(2) 団地内の区分所有建物の一括建替え決議
団地内の区分所有建物をそれぞれ棟ごとの判断によって建替え
ることもできるが、団地内の区分所有建物を全部まとめて建替える
こともできる。
一斉に建替えるためには、以下の要件が必要である(区分所有
法70条)。
① イ、団地内建物の全部が専有部分のある建物(区分所有建物)
であること。
ロ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を含む)が当該
団地内建物の区分所有者の共有に属すること。
ハ、各棟の管理を団地管理組合で行う旨の団地管理規約が定
められていること。
〇 このハの要件は、先に述べた、4の団地規約の設定の特例②の第
二の規約の制定である(区分所有法68条1項2号)。
② 以上の要件を満たした上で、団地管理組合の集会で、団地内の
全区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、当該団地
内建物につき一括してその全部を取り壊し、建物を建替える旨の
決議(一括建替え決議)をすることができる(区分所有法70条1項
本文)。
〇 建替えの承認決議と異なり、建替えそのものの決議であるので、
区分所有者及び議決権の各5分の4以上となっていいることに注意。
③ ただし、全体として5分の4以上の賛成があったとしても、各棟
ごとの区分所有者の意思を無視することはできないので、一括
建替え決議が成立するためには、当該集会において、当該各棟
ごとに、それぞれその区分所有者の3分の2以上の者であって議
決権の合計の3分の2以上の議決権を有するものがその一括建
替え決議に賛成した場合でなければならないとされている(区分
所有法70条1項ただし書)。
〇 これは、一括建替え決議と別個に、棟ごとの集会を開いて、3分
の2以上の決議が必要というものではないことを注意してほしい。
一括建替え決議が成立した場合、その決議における各棟ごとの投
票を集計して、それぞれ3分の2以上の賛成票があったかどうかを
審査するというものである。
〇 一括建替え決議の「5分の4」議決権は、団地における議決権と
して土地等の共有持分の割合による。しかし、棟ごとの議決権の3
の2という場合は、その棟の規約に別段の定めがない限り、その有
する専有部分の床面積の割合による(区分所有法38条、14条)。
④ 団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めな
ければならない(区分所有法70条3項)。
一 再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
二 新たに建築する建物(再建団地内建物)の設計の概要
三 団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に
要する費用の概算額
四 前号に規定する費用の分担に関する事項
五 再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
⑤ 一括建替え決議の手続きに関しては、一棟の区分所有建物の
建替えに関する「招集手続」、「売渡し請求」等多くの規定が準用
されている。
エースビジネス学院のホームページ
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