不動産物権変動と登記⑧
記事投稿日2014年09月30日火曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
9 無権代理と登記
代理権がないのに、他人の代理人として第三者と契約をした場合、
表見代理が成立する要件を満たし、第三者が表見代理を主張すると
契約が有効として扱われる。表見代理の要件を満たさない場合には、
狭義の無権代理といい、この場合、本人の追認権と追認拒絶権が認
められている。
無権代理の場合、本人はこれによって何らの法律効果を受けない
が(つまり契約は無効である)、本人はこれを追認することができる(民
法113条1項)。ここでの追認とは、法律効果を受けない(無効な)無
権代理行為を、最初から代理権があったと同様の効果を生じさせる
(有効にする)ことである。取り消すことができる契約の場合の追認は、
一応有効な契約を完全に有効(取り消すことができなくなる)にするも
のである。
追認の拒絶はもともと無効なものを無効に確定することである。
追認があると、原則として、契約の時にさかのぼって当該行為が
有効となる(民法116条本文)。
つまり、無権代理人Bが、Aの土地をAの代理人としてCに売却し
た後、Aが追認した場合、AC間の契約はさかのぼって有効となる。
ところが、Aが追認する前に当該土地をDに売却していたときは、C
とDの関係はどうなるか。この場合には、先に登記をした者が優先
する(民法177条)。
この場合も、Aが無権代理を追認することによって、AC間の契約
は有効となり、土地の所有権がA→C、A→Dに二重に譲渡された
場合と同じように考えるのである。
ただし、ここで注意してほしいのは、民法の規定が、追認の遡及
効によって第三者の権利を害することができないと規定している点
である(民法116条ただし書)。この民法の条文通りに解釈すると、
AC間の契約が遡及することによって、追認前にAがDに当該土地
を売却していて、Dが所有権を取得しているので、Dの権利を害す
ることができないから、Dの登記の有無にかかわらず、Dが常に勝
つのではないかということである。しかし、対抗関係で処理すること
が妥当である設問の場合には、このただし書の規定は適用されな
いと解されている。
つまり、CD間は登記で決するのである。
ということは、AがBの無権代理の追認の後にDに売却した場合
でも、同じようにCD間は登記で決することになる。
不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲
受人以外の他の共有者は民法177条の第三者該当する(判例)。
つまり、AB共有の土地について、Aからその持分の譲渡を受けた
Cは、持分取得の登記をしなければ、Bに対して持分の取得を対抗
できない。平成16年度【問3】肢3参照。
不動産の物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できないと
言ったが、不動産に関する物権でも、占有権、留置権、一般先取特
権、入会権は登記をすることはできない。これらの権利は、登記が
なくても第三者に対抗できるのである。
また、登記が先の者が常に優先するということでもない。例えば、
不動産に対する先取特権で、適法に登記された不動産保存の先取
特権や不動産工事の先取特権は、それより前に登記された抵当権
にも優先する(民法339条)。
だから、不動産に関する物権変動は常に登記をしなければ第三者
に対抗できないとか、不動産に関する物権は登記の先の者が常に
優先するというものではない。例外があるということを念頭において
ほしい。
以上で、不動産物権変動と登記については終わりとする。
- 記事投稿者情報 ≫ 一般社団法人エースマンション管理士協会
- この記事へ ≫ お問い合わせ
- この記事のタグ ≫