不動産物権変動と登記④
記事投稿日2014年09月18日木曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
5 相続と登記
① AとBが土地の売買契約を締結した後、Aが死亡した場合、Bは、
登記なくしてAの相続人に対して土地の所有権を対抗できる。Aの相
続人もAと同様、当事者だからである。平成17年度【問8】肢1。
しかし、Aの相続人から、さらに当該土地を譲り受けたCに対しては、
Bは、登記がなければ対抗できない(判例)。平成17年度【問8】肢2。
また、AとBが土地の売買契約を締結した後、Aから特定遺贈を受け
たDに対しても、Bは、登記がなければ対抗できない(判例)。
② ABが土地を共同相続したが、遺産の分割前に、AがBに無断で自
己の単独登記をした後、Cに売却した場合、Bは、自己の相続分の登
記がなくても、Cに対して「自己の相続分」を対抗できる。AがBに無断
で自己の単独登記をしても、Bの持分については無権利者であり、C
は無権利者から「Bの持分」を譲り受けているからである。
なお、CがAの持分について所有権を取得するのはいうまでもない。
平成19年度【問6】肢3、平成15年度【問12】肢1。
③ ABが土地を共同相続し、ABが各2分の1の共有登記をした後、遺
産分割により、Bが当該土地を単独で相続したが、その登記(単独登
記)がない間に、Aが登記上の2分の1の持分をCに売却した場合、B
は、単独の登記をしなければ、Cに対して2分の1を対抗できない。
(判例)。平成15年度【問12】肢2。
この場合も、②と同じように、Aは遺産分割により自分の持分2分の
1の権利を失っており、無権利者となったのだから、Cは無権利者Aか
ら2分の1を売却により取得しているので、無権利者ではないのかと
いうことである。
しかし、②の場合、相続によりAが取得したのは2分の1であり、残
り2分の1は、Bの権利である。これを勝手に自分の権利として単独
登記をしており、Aは、Bの2分の1については、はじめから全くの無
権利者である。だから、無権利者から譲り受けたCは、無権利者で
ある。
ところが、③の事例は、遺産分割により、Aの持分の2分の1がB
に移転している。他方Aの持分の2分の1は、AからC譲渡されてい
る。つまり、共有持分の2分の1が、AからBに遺産分割により移転
され、さらに、AからCに売買により譲渡されている。Aの持分がA→
B、A→Cに二重譲渡されているのである。しがって、Bは、その取
得する持分について登記(自分の持分と合わせて単独登記)をしな
ければ、第三者に対抗できないとされるのである。Aの2分の1の持
分については、Aは元々権利者であり、全くの無権利者ではなかっ
たのである。
時効と登記のところで述べたことを参照。
④ ABが土地を共同相続したが、Aが相続を放棄したことにより、B
が当該土地を単独で相続した場合、その後、Aが相続の放棄前に
有していた2分の1の持分をCに売却しても、Bは、その登記(単独
所有登記)なくして単独所有をCに対抗できる(判例)。
③の遺産分割と異なり、相続の放棄により取得する場合には、登
記を要しないとするのが判例である。それは、相続の放棄をした者
は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみ
なされ(民法939条)、Aの相続の放棄により、Aは初めから相続に
ついては持分を取得していなかったということになる。したがって、
Aから持分の譲渡を受けたCは、無権利者からの譲渡を受けたも
のであり、無権利者である。無権利者に対しては、登記なくして対
抗できる。
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