3 第三者の意味
  以下のように第三者に含まれない者に対しては、登記をしなくても対抗で
 きるということである。 
 ① 不動産物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できないが、ここで
  いう第三者とは、当事者以外のすべての者ではなく、判例によると、「登
  をしていないということ(欠缺)を主張するについて正当な利益を有
する者」
  である。一般的にいうと正当な取引関係に入った者である。

 ② ここでいう第三者は悪意の者も含まれるが、「背信的悪意者」は含まれ
  ない。判例によると、背信的悪意者とは、単に未登記であるということを知
  っているというにとどまらず、未登記であることに乗じて不当に利
益を得る
  目的で譲渡人をそそのかすような者である。
   そして、背信的悪意者からの転得者は、背信的悪意者でない限り、第
  者に該当するというのが判例である。例えば、AがBに土地を譲渡し、
Aが
  その土地をさらにCに譲渡した場合において、Cが背信的悪意者で
あれば、
  Bは、Cに対しては登記なくして対抗できるが、さらにCから
譲渡を受けたD
  に対しては、Dが背信的悪意者でない限り、Dに対して
は登記がなければ、
  対抗できない。平成
24年度〔問6〕肢4

 ③ 不法占拠者(平成16年度〔問3〕肢1、平成19年度〔問3〕肢3)、不法行
  為者(建物に放火した者に対しては、登記のない所有者でも、所
有権の侵
  害による不法行為責任を追及できる)、無権利者から譲り受けた
者は、第
  三者に含まれない。
   無権利者から譲り受けた者とは、例えば、Aの土地をBが勝手に自分
  名義に登記を移し、BがCに売却した場合において、その後にAがD
に当
  該土地を売却した場合は、Cは無権利者から譲渡を受けた者である
から、
  第三者に該当せず、Dは、登記なくしてCに対抗することができ
る。平成19
  年度〔問3〕肢2、平成19年度〔問6〕肢3
   ただし、Aが自分の知らない間にBに登記が移転されているということを
  知りながら、登記を回復することなく放置しておいたような場合に
は、Aに
  落度があり、通謀虚偽表示の規定を類推適用して、Aは、善意
のCには対
  抗できないというのが、判例である。もし、このような事情
があれば、後に
  通謀虚偽表示と登記との関係で見るように、CとDはA
から土地を二重に
  譲渡を受けた関係に立ち、先に登記をした者が所有権
を取得する。

 ④ 登記法に第三者に該当しない場合の二つの規定がある。
  イ、A所有土地をBに譲渡し、さらにCにも譲渡した場合、詐欺・強迫によ
   ってCがBの登記の申請を妨げたときは、Cは第三者に該当しな
(
   登法
51)
  ロ、CがBのために登記を申請する義務がある者であるときは、Cは第
   者に該当しない(例えば、CがBの代理人)である
(2)。この
場合、
   Cを全く保護する必要がないからである。

 ⑤ 不動産がA、B、Cと転々譲渡された場合、Cから見れば、AもBと同じ
  で第三者ではなく、当事者の関係に立つ。平成
16年度〔問3〕肢4

 無権利者から譲り受けた者は、例えその登記を信頼(Bが善意・無過失)
しても保護されないということは前述した。つまり、登記には「公信力」は
い。登記を信頼して取引をしても保護されない。
 これに対して、動産の場合、占有が公示方法であるが(先に見たように
渡し(占有の移転)が対抗要件であった)、この占有に公信力を認めた。
占有
を信頼して取引をした場合、保護される。これが「即時取得」の制度
である。
 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善
であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権
利を
取得する(民法192)
 Aが他人から預かっている動産を勝手にBに売却した場合には、Bが善
意・
無過失(Bがその動産をAの物であると信じ、かつ、信じたことに過失
がない)
であれば、Bはその動産の所有権を取得する。AがBに質入れし
たときは、B
が質権を取得する。
 ただし、その動産が盗品又は遺失物であるあるときは、被害者又は遺失
者は、
盗難又は遺失の時から2年間、Bに対して無償で返還の請求をする
ことができ
(民法193)。Bからさらに転売された場合でも、現在の占有
者に対して無
償で返還請求ができる。
 しかし、その物が次々と取引されている間に競売されたり、店舗に並べ
売られたり、または同種の物を販売する商人から売られたときは、その
取引 を保
護する必要があるので、被害者又は遺失者は、善意(即時取得
後転々譲渡されて悪意の買主ががあらわれた場合、その者には代価を払
う必要がないわけである。)の買主が支払った代価を弁償し
なければその
物を返還請求することができないとされる
(民法194 )