不動産物権変動と登記②
記事投稿日2014年09月08日月曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
3 第三者の意味
以下のように第三者に含まれない者に対しては、登記をしなくても対抗で
きるということである。
① 不動産物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できないが、ここで
いう第三者とは、当事者以外のすべての者ではなく、判例によると、「登記
をしていないということ(欠缺)を主張するについて正当な利益を有する者」
である。一般的にいうと正当な取引関係に入った者である。
② ここでいう第三者は悪意の者も含まれるが、「背信的悪意者」は含まれ
ない。判例によると、背信的悪意者とは、単に未登記であるということを知
っているというにとどまらず、未登記であることに乗じて不当に利益を得る
目的で譲渡人をそそのかすような者である。
そして、背信的悪意者からの転得者は、背信的悪意者でない限り、第三
者に該当するというのが判例である。例えば、AがBに土地を譲渡し、Aが
その土地をさらにCに譲渡した場合において、Cが背信的悪意者であれば、
Bは、Cに対しては登記なくして対抗できるが、さらにCから譲渡を受けたD
に対しては、Dが背信的悪意者でない限り、Dに対しては登記がなければ、
対抗できない。平成24年度〔問6〕肢4
③ 不法占拠者(平成16年度〔問3〕肢1、平成19年度〔問3〕肢3)、不法行
為者(建物に放火した者に対しては、登記のない所有者でも、所有権の侵
害による不法行為責任を追及できる)、無権利者から譲り受けた者は、第
三者に含まれない。
無権利者から譲り受けた者とは、例えば、Aの土地をBが勝手に自分の
名義に登記を移し、BがCに売却した場合において、その後にAがDに当
該土地を売却した場合は、Cは無権利者から譲渡を受けた者であるから、
第三者に該当せず、Dは、登記なくしてCに対抗することができる。平成19
年度〔問3〕肢2、平成19年度〔問6〕肢3
ただし、Aが自分の知らない間にBに登記が移転されているということを
知りながら、登記を回復することなく放置しておいたような場合には、Aに
落度があり、通謀虚偽表示の規定を類推適用して、Aは、善意のCには対
抗できないというのが、判例である。もし、このような事情があれば、後に
通謀虚偽表示と登記との関係で見るように、CとDはAから土地を二重に
譲渡を受けた関係に立ち、先に登記をした者が所有権を取得する。
④ 登記法に第三者に該当しない場合の二つの規定がある。
イ、A所有土地をBに譲渡し、さらにCにも譲渡した場合、詐欺・強迫によ
ってCがBの登記の申請を妨げたときは、Cは第三者に該当しない(不
登法5条1項)。
ロ、CがBのために登記を申請する義務がある者であるときは、Cは第三
者に該当しない(例えば、CがBの代理人)である(同2項)。この場合、
Cを全く保護する必要がないからである。
⑤ 不動産がA、B、Cと転々譲渡された場合、Cから見れば、AもBと同じ
で第三者ではなく、当事者の関係に立つ。平成16年度〔問3〕肢4
無権利者から譲り受けた者は、例えその登記を信頼(Bが善意・無過失)
しても保護されないということは前述した。つまり、登記には「公信力」はな
い。登記を信頼して取引をしても保護されない。
これに対して、動産の場合、占有が公示方法であるが(先に見たように
引渡し(占有の移転)が対抗要件であった)、この占有に公信力を認めた。
占有を信頼して取引をした場合、保護される。これが「即時取得」の制度
である。
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善
意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権
利を取得する(民法192条)。
Aが他人から預かっている動産を勝手にBに売却した場合には、Bが善
意・無過失(Bがその動産をAの物であると信じ、かつ、信じたことに過失
がない)であれば、Bはその動産の所有権を取得する。AがBに質入れし
たときは、Bが質権を取得する。
ただし、その動産が盗品又は遺失物であるあるときは、被害者又は遺失
者は、盗難又は遺失の時から2年間、Bに対して無償で返還の請求をする
ことができる(民法193条)。Bからさらに転売された場合でも、現在の占有
者に対して無償で返還請求ができる。
しかし、その物が次々と取引されている間に競売されたり、店舗に並べ
て売られたり、または同種の物を販売する商人から売られたときは、その
取引 を保護する必要があるので、被害者又は遺失者は、善意(即時取得
後転々譲渡されて悪意の買主ががあらわれた場合、その者には代価を払
う必要がないわけである。)の買主が支払った代価を弁償しなければその
物を返還請求することができないとされる(民法194 条)。
- 記事投稿者情報 ≫ 一般社団法人エースマンション管理士協会
- この記事へ ≫ お問い合わせ
- この記事のタグ ≫