宅建業法における未成年者をめぐる問題
記事投稿日2014年07月02日水曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
年齢20歳をもって、成年とする(民法4条)。だから、民法上未成年とは、
20歳未満の者ということになる。20歳の誕生日の前日(午前12時)まで
が未成年者である。
しかし、20歳未満でも、婚姻(結婚)すれば、成年に達したものとみなさ
れる(民法753条)。いわゆる婚姻による成年擬制である。だから、この者
は、成年者とみなされるので、未成年者ではない。これは、私法(民法)上
の取引関係等において成年とみなされるのであり、公職選挙法では、日本
国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権
を有する(同法9条)とあり、20歳未満の者は、例え結婚していても、選挙
権はない。地方議員の選挙でも同様である。そもそも公職選挙法では成年
とか未成年とかの概念を使用していない。
未成年者には、2種類ある。特に宅建業法の「免許」の欠格要件のところ
や「取引主任者の登録」の欠格要件のところで使われている。
第一は、営業に関し成年者と同一の行為能力を「有しない」未成年者であ
る(業法5条1項6号、18条1項1号)。この未成年者の名義で免許を受けよ
うとする場合、本人に欠格要件があれば免許を受けられないのは当然であ
るが、本人に欠格要件がなくても、法定代理人(親権者か未成年後見人)が
欠格であれば免許を受けることができない(業法5条1項6号)。このような未
成年者の財産的な行為については、法定代理人の同意がなければ完全に
有効な法律行為はできないし、法定代理人は、このような未成年者の財産
的な法律行為について当然に代理権があるからである。つまり、名義は未
成年者であっても、法定代理人の意思に反して未成年者は何もできないの
で、このような未成年者の免許については、法定代理人が欠格であれば、
認めないとしたのである。
また、この未成年者は、取引主任者の登録を受けることができない(業法
18条1項1号)。
第二は、営業に関し成年者と同一の行為能力を「有する」未成年者である。
民法6条1項で、一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に
関しては、成年者と同一の行為能力を有するとある。この営業許可を得た
未成年者のことである。この営業許可は法定代理人が行う(民法6条2項、
823条、857条)。この未成年者は、許可された営業に関しては、成年者と
同一の行為能力を有するので、例えば、法定代理人から宅建業の営業許
可を得た未成年者は、宅建業に関しては、成年者と同じ扱いになるので、
免許の欠格は、その未成年者のみで判断する。また、取引主任者の登録
も、成年者と同じ扱いになる。だから、宅建業法では、「成年者と同一の行
為能力を有する未成年者」については、ことさら規定していないのである。
要するに成年者に関する規定がそのまま適用されるからである。
なお、テキストや問題の解説などで、婚姻した20歳未満の者を、この営
業に関し成年者と同一の能力を有する未成年者に当たると説明している
ものがあるが、全くの間違いであることがわかると思う。この者は成年者と
みなされるので、あらゆる営業に関し、単独でできる。結婚して成年者とみ
なされるので、この者の法定代理人は当然に消滅する。この者には、親権
者とか未成年後見人というものはなくなる。
これに反して、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者は、
あくまでも未成年者であり、ただ、法定代理人から営業許可を受けた営業に
関しては、成年者と同一の能力を有するだけである(営業の許可を受けた
営業に関しては、法定代理人の同意権や代理権は消滅する)。だから、こ
の者には、法定代理人が存在し、営業許可を受けていない分野の財産行
為については、法定代理人の同意がなければ、取り消すことができるし、
法定代理人が代理して行うこともできるのである。
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