年齢20歳をもって、成年とする(民法4)。だから、民法上未成年とは、
20歳未満の者ということになる。20歳の誕生日の前日(午前12時)まで
が未成年者である。
 しかし、20歳未満でも、婚姻(結婚)すれば、成年に達したものとみなさ
れる(民法753)。いわゆる婚姻による成年擬制である。だから、この者
は、
成年者とみなされるので、未成年者ではない。これは、私法(民法)上
の取引
関係等において成年とみなされるのであり、公職選挙法では、日本
国民で年齢
満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権
を有する
(同法9)
とあり、20歳未満の者は、例え結婚していても、選挙
権はない。地方議員の
選挙でも同様である。そもそも公職選挙法では成年
とか未成年とかの概念を使
用していない。

 未成年者には、2種類ある。特に宅建業法の「免許」の欠格要件のところ
「取引主任者の登録」の欠格要件のところで使われている。
 第一は、営業に関し成年者と同一の行為能力を「有しない」未成年者であ
(業法516号、1811)。この未成年者の名義で免許を受けよ
うと
する場合、本人に欠格要件があれば免許を受けられないのは当然であ
るが、本
人に欠格要件がなくても、法定代理人(親権者か未成年後見人)が
欠格であれ
ば免許を受けることができない(業法516)。このような未
成年者の財
産的な行為については、法定代理人の同意がなければ完全に
有効な法律行為は
できないし、法定代理人は、このような未成年者の財産
的な法律行為について
当然に代理権があるからである。つまり、名義は未
成年者であっても、法定代
理人の意思に反して未成年者は何もできないの
で、このような未成年者の免許
については、法定代理人が欠格であれば、
認めないとしたのである。
 また、この未成年者は、取引主任者の登録を受けることができない(業法
18
11)

 第二は、営業に関し成年者と同一の行為能力を「有する」未成年者である。
民法6条1項で、一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に
関し
ては、成年者と同一の行為能力を有するとある。この営業許可を得た
未成年者
のことである。この営業許可は法定代理人が行う(民法62項、
823条、857
)。この未成年者は、許可された営業に関しては、成年者と
同一の行為能力
を有するので、例えば、法定代理人から宅建業の営業許
可を得た未成年者は、
宅建業に関しては、成年者と同じ扱いになるので、
免許の欠格は、その未成年
者のみで判断する。また、取引主任者の登録
も、成年者と同じ扱いになる。だ
から、宅建業法では、「成年者と同一の行
為能力を有する未成年者」について
は、ことさら規定していないのである。
要するに成年者に関する規定がそのまま適用されるからである。

 
なお、テキストや問題の解説などで、婚姻した20歳未満の者を、この営
に関し成年者と同一の能力を有する未成年者に当たると説明している
ものがあ
るが、全くの間違いであることがわかると思う。この者は成年者と
みなされる
ので、あらゆる営業に関し、単独でできる。結婚して成年者とみ
なされるので、
この者の法定代理人は当然に消滅する。この者には、親権
者とか未成年後見人
というものはなくなる。
 これに反して、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者は、
くまでも未成年者であり、ただ、法定代理人から営業許可を受けた営業に
関し
ては、成年者と同一の能力を有するだけである(営業の許可を受けた
営業に関
しては、法定代理人の同意権や代理権は消滅する)。だから、こ
の者には、法定
代理人が存在し、営業許可を受けていない分野の財産行
為については、法定代
理人の同意がなければ、取り消すことができるし、
法定代理人が代理して行う
こともできるのである。