平成24年度管理業務主任者試験

【問 29 総会における議決権行使に関する次の記述のうち、区分所有法及び
マンション標準管理規約によれば、最も不適切なものはどれか。
1 賃借人が、賃貸人である区分所有者からの委任状を理事長に提出したので、
 議決権行使を認めた。
2 2つの議決権を有する区分所有者が、同一議案について議決権の1つは反対
 する旨の、もう1つの議決権については賛成する旨の議決権行使書を提出した
 
ので、それらの議決権行使を認めた。
3 専有部分の共有者の1人から転居先を総会招集通知場所とする届出がなさ
 れていたが、議決権行使者の届出はなかったので、出席した在住共有者の議
 決権行使を認めた。
4 区分所有者から提出された議決権行使書に署名押印はあるが、賛否の記載
 がないので、有効な議決権行使とは認めなかった。

〇1 適切。議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる(
  所有法
392)。そして、標準管理規約では、組合員又は代理人は、
代理
  権を証する書面を理事長に提出しなければならないとしている
(標準管
理規
  約
465)。賃借人が、賃貸人である区分所有者からの委任状を理
事長
  に提出したので、議決権行使を認めたのは、適切である。
×2 不適切。2つの議決権を有する区分所有者が、同一議案について議決権
  の1つは反対する旨の、もう1つの議決権については賛成する旨の議決権
  使(議決権の不統一行使)を認めるのは、不適切である。
×3 不適切。専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行
  使すべき者一人を定めなければならない(区分所有法40)。そして、標準
  管理規約では、住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使につ
  いては、これら共有者をあわせて一の組合員とみなすとし(標準管理規約46
  条2)、前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名
  を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出
なけ
  ればならないとしている
(標準管理規約463)。設問は、専有部分
の共
  有者の1人から転居先を
総会招集通知場所とする届出がなされていた
が、
  議決権行使者の届出はなかったので、出席した在住共有者の議決権行
使
  を認めたとあり、届出のないものに議決権の行使を認めたことは、不適

  である。
〇4 適切。議決権行使書は、本人が書面で議決権を行使するものであり、賛
  否の記載がないのは、有効な議決権行使とは認められないので、適切であ
  る。
 以上より、不適切なものは、2と3である。当初試験の実施団体は、正解は
のみとしていた。しかし、後に3も正解との訂正を出した。最も不適切なも
のは
どれか、と問うているので、不適切な2と3から最も不適切なものを選ぶ
ことも
できるかも知れない。しかし、法律の問題でそれは不可能である。「最も
適切
なものはどれか」とか「最も不適切なものはどれか」というふうに出題さ
れてい
るが、要するに、適切なものか、不適切なものを一つ選べばよいことに
なって
いる。今までそうだった。今後、まぎらわしい「最も」という表現を使
うべきでは
ないと思う。

注→肢3について、仮に、転居先を総会招集通知場所とする届出をした者に
 議
決権を認めた場合には、どうか。この場合には、適切であると考える余地
 が
ある。
  区分所有法によると、専有部分が共有の場合、総会の招集通知は、共有
 者
のうち、議決権を行使すべき者にすればよいことになっている(区分所有
 法
35
2項、40)集通知は議決権行使を担保するために認められた
 ものだからである。
そして、招集通知を受けるべき場所を通知したときは、
 その
場所に招集通知発する(区分所有法353項、標準管理規約432
 項)
共有者の一人が「転居先を総会招集通知場所とする届出」をしておい
 て、
これとは別個に、他の者を「議決権行使者」として届出をしていなけれ
 ば、
前者の届出に後者の届出が含まれていると解される余地がある。