宅建・管業 過去のミス問題の検討⑩
記事投稿日2014年06月11日水曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
平成24年度管理業務主任者試験
【問 6】 請負と委任の異同に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っ
ているもののみの組合せはどれか。
ア 請負も委任も、いずれも諾成の双務契約である。
イ 請負においては、請負人は請負に係る仕事を第三者に行わせることはできな
いが委任においては、受任者は委託に係る法律行為を第三者に行わせること
ができる。
ウ 請負人は、仕事の目的物の引渡しと同時に報酬の支払いを請求することがで
きるが、受任者は報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後に報酬を
請求することができる。
エ 請負は、各当事者がいつでも契約を解除することができるが、委任は、委任
事務の履行の着手前に限り、委任者のみが契約を解除することができる。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・エ
×ア 誤り。委任は、諾成契約であることは問題ない。しかし、有償なら双務
契約であるが(受任者は事務を行う義務を負い、委任者は委任料(報酬)
を支払う義務を負う)、無償だと片務契約である。つまり、無償の場合、受
任者のみが債務を負い、委任者は何らの債務を負わない。片方の者だけ
が債務を負うということ(片務)。設問は、この区別をしていないので、誤り
である。請負は、諾成の双務契約である。
×イ 誤り。請負においては、請負人は請負に係る仕事を第三者に行わせるこ
とは「できない」のではなく、民法に明文はないが、できると解されている。請
負は仕事の完成が目的であり、仕事が契約通り完成すれば問題がないので、
特約がない限り、第三者に行わせても問題がないからである。
委任においては、原則として、受任者は委託に係る法律行為を第三者に行
わせることが「できる」ではなく、明文はないが、できないと解されている。委
任は当事者の信頼関係に基づいているため、誰が委任事務をやってもいい
とはいえないからである。ただし、復代理の規定を準用して、本人が許諾した
場合かやむことを得ない事由があれば、第三者に行わせることができると解
されている。
〇ウ 正しい。請負人は、仕事の目的物の引渡しと同時に報酬の支払いを請求
することができる(民法633条)。ただし、物の引渡しを要しないときは、仕事
の完成後に報酬の支払いを請求できる(同ただし書)。受任者は報酬を受け
るべき場合には、委任事務を履行した後に報酬を請求することができる(民
法648条2項)。
これらはあくまでも民法の規定である。当事者が報酬の支払い時期を別に
定めれば、これによるのである。
×エ 誤り。請負は、各当事者がいつでも契約を解除できるものではない。契約
を締結した以上、勝手に解除できるものではない。債務不履行(法定解除)
や特約(買戻しの特約や手付けによる解除等→約定解除)で解除できる旨
の定めがあれば、それらを理由に解除できることは別問題である。
委任は、各当事者がいつでも(履行の着手前に限らない)解除をすること
ができる(民法651条1項)。委任は特に当事者間の信頼関係に基づいて契
約がなされるので、民法が規定を置いているのである。ただし、解除したら、
後に損害賠償の問題等が発生す場合がある(同2項)。判例はいつでも解除
できない例外を認めているので注意すること。
以上より、誤っているものの組み合わせは、アとイ、イとエであり、1と3が正解。
注→当初試験の実施団体は、正解は3のみとしていた。しかし、後に1も正解と
の訂正を出した。誰にでもミスはあるものですが、しかし、特に、この民法の
問題は基本中の基本の問題であり(ただし、これが重要な問題とは思わない
が)、このような問題でミス問題を出し、しかも長い間気がつかなかったことに、
出題者(全員)のレベルを疑う。すこし本を調べればすぐに分かったはずです
が。ただし、後に誤りを公表し、追加合格者を出したことには、敬意を表したい。
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