平成23年度宅建試験

〔問 27 宅地建物取引業の免許(以下この問において「免許」という。)に
する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 A社の役員Bは、宅地建物取引業者C社の役員として在籍していたが、そ
 の当時、C社の役員Dがかつて禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が
 終
わった日から5年を経過していないとしてC社は免許を取り消されている。
 この場合、A社は、C社が免許を取り消されてから5年を経過していなくても、
 免許を受けることができる。
2 E社の役員のうちに、刑法第246条の詐欺罪により罰金の刑に処せられ、
 その刑の執行が終わった日から5年を経過しない者がいる場合、E社は免
 許
を受けることができない。
3 F社の役員のうちに、指定暴力団の構成員がいた場合、暴力団員による
 不
当な行為の防止等に関する法律の規定に違反していなくても、F社は免
 許を
受けることができない。
4 宅地建物取引業者G社は、引き続いて1年以上事業を休止したときは、
 免
許の取消しの対象となる。

〇1 正しい。C社の役員Dがかつて禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執
  行
が終わった日から5年を経過していないとしてC社が免許を取り消され
  て
も、5年間免許の欠格となるものではないから、C社の役員であったB
  も
5年間欠格となるものではない(業法52)。よって、A社は、C社が
  免許を取り消されてから5年を経過していなくても、免許を受けることが
  できる。
×2 誤り。一定の犯罪で罰金刑に処せられた場合、免許の欠格となる。し
  か
し、刑法第246条の詐欺罪はその一定の犯罪に入っていない(業法5
  条3
2)。というよりも、刑法第246条の詐欺罪には選択刑として罰金
  刑がな
いので、詐欺罪で罰金の刑に処せられるということはあり得ない。
  出題者
の勘違いと思われる。いずれにしても誤りであることに変わりは
  ない。
〇3 正しい。指定暴力団の構成員の場合、暴力団員による不当な行為の
  防止
等に関する法律の規定に違反していなくても、「宅建業に関し不正
  または不
誠実な行為をするおそれが明らかな者」に該当し(業法55
  
)、F社は
免許を受けることができない。
〇4 正しい。宅地建物取引業者は、引き続いて1年以上事業を休止したと
  き
は(正当な理由の有無を問わない)、免許の取消しの対象となる(業法
  66
16)

注→ 肢2について、「刑法第246条の詐欺罪により罰金の刑に処せられ、」
   と
あるが、出題者は、刑法246条の条文を見て出題したのであろうか。
   詐欺
罪には、狭義の詐欺罪(2461)と、詐欺利得罪(2)とが
   あるが、
いずれも、10年以下の懲役である。詐欺罪を犯しても、罰金
   刑に処せられ
ることはない。この問題の解説で、「刑法246条の詐欺
   罪により罰金の刑
に処せられても免許の欠格要件に該当しない。」と
   いうようなものがある
が、そもそも詐欺罪を犯しても、絶対に罰金の刑
   に処せられることは
ない。この肢は誤り(でたらめ)であることには、変
   わりないのであるが、出題者の法的な知識ないしはセ
ンスを大いに疑
   う。
    もし、逆に「刑法246条の詐欺罪により罰金の刑に処せられても、免
   許
の欠格要件に該当しない。」という肢が出た場合、これを正しい肢と
   すべき
か。しかし、詐欺罪で罰金刑に処せられることはないのである
   から、正し
い肢とすべきではない。
    刑法の暴行罪、傷害罪、背任罪、脅迫罪等は、懲役刑の他、法定
   刑に罰
金の刑が定められている。これらの犯罪の性質上、例え軽い
   罰金の刑が選
択された場合でも、免許等の欠格事由としたのである。
   同じような犯罪である逮捕・監禁罪、横領罪、恐喝罪、強盗罪、そして、
   設問の詐欺罪等は、法定刑は懲役刑のみである。だから、罰金刑に
   処せら
れた場合に欠格になるなどということが問題にならないのであ
   る。