宅建・管業 過去のミス問題の検討⑤
記事投稿日2014年04月18日金曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
平成20年度宅建試験
【問 40】 宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でない
Bと建物の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引
業法(以下この問において「法」という。) 及び民法の規定によれば、正しいもの
はどれか。
1 Bが契約の履行に着手するまでにAが売買契約の解除をするには、手付の
3倍に当たる額をBに償還しなければならないとの特約を定めることができる。
2 Aの違約によりBが受け取る違約金を売買代金の額の10分の3とするとの
特約を定めることができる。
3 Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる売買契
約の解除があった場合でも、Aが契約の履行に着手していれば、AはBに対し
て、それに伴う損害賠償を請求することができる。
4 Aは、瑕疵(かし)担保責任を負うべき期間として、引渡しの日から2年で、か
つ、Bが瑕疵(かし)を発見した時から30日以内とする特約を定めることができ
る。
○1 正しい。業者が売買契約の解除をするには、手付の3倍に当たる額を償還
しなければならないとの特約は、買主に有利であるので有効である(宅地建
物取引業法39条2項、3項)。
×2 誤り。当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の
額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の
10分の2を超えることとなる定めをしてはならない(同法38条1項)。
×3 誤り。クーリング・オフによる売買契約の解除があった場合、宅地建物取
引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払いを請求す
ることができない(同法37条の2第1項)。
×4 誤り。目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、期間についてその目的物
の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法566条3項に
規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない(同法40条1項)。
引渡しの日から2年という点は違反しないが、「瑕疵を発見した時から30日
以内」を責任追及期間とすることは、民法の「瑕疵を発見した時から1年以
内」よりも買主に不利なので定めることができない。
注→ この問題文の解釈は、「引渡しの日から2年で、かつ、・・・」とあるから、
引渡しの日から2年経過後に瑕疵を発見していなかったら、さらに、それ
から瑕疵を発見した時から30日以内とも読める。そうすると、責任を追
及できる期間は、2年以上となるので、正しいとも言えるのである。しか
し、肢1が明らかに正しいので、肢4は誤りとせざるを得ないが、そうす
ると、かつ、ではなく、又はとすべきであろう。多くの解説は、そういうふ
うに解釈して解説している。私もそうした。
過去にも複数の特約をして、その一部は有効であるが、一部は無効という
問題が多く出題されている。例えば、平成9年の問題で以下のような問題が
出題されている。
1 「Aが担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から2年間とし、Bは、そ
の期間内に、契約を解除することはできないが、損害賠償を請求すること
ができる」旨の特約は無効である。
この問題は、「引渡しの日から2年間」とい点は有効であるが、「契約を解
除できない」という点は無効である。
平成20年の出題者もこの契約の一部無効の問題を出そうと考えたかも
知れない。しかし、期間の問題を、かつ、でつないでいるので、そういう問題
にはなっていない。
とにかく、平成20年と21年の宅建業法の問題は、文章が雑なものが多
い。今後本試験の出題者は、過去の問題を参考にするときは、くれぐれも
この点に注意してほしい。
因みに、契約(特約)の一部が無効の場合、契約全体が無効になるのか、
無効な特約部分だけが無効になるのかは、当事者の意思等を考慮して、
個別的に判断される。
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