平成25年度 宅建試験権利関係解説②
記事投稿日2014年02月20日木曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
【問 8】 正解 4
×1 誤り。義務がないのに他人の事務を管理することを事務管理という。民法
はこれについて規定している(民法697条~702条)。設問は事務管理の問題
である。管理者は、本人のために有益な費用(ここでは保存の費用も含むとい
のが判例である。)を支出したときは、本人に対してその償還を請求できる(民
法702条1項)。管理者(B)が本人(A)のために緊急措置をとっており、Bはそ
の費用をAの承諾がなくても、Aに請求するこができる。
×2 誤り。建物所有を目的とする土地の賃貸借契約においては、建物建築時
に土地に石垣や擁壁の設置、盛土や杭打ち等の変形加工が必要であれば、契
約において定めるのが普通であるが、例え契約において定めなくても、建物所
有目的のために必要なこれらの工事について、必ず賃貸人の承諾を得なけれ
ばならないわけではない。賃借人がこれらの工事を行った場合には、必要費な
いしは有益費として賃貸人にその費用を請求できるとされており(民法608条)、
賃貸人の承諾なくして、賃借人は、このような工事ができることが前提とされて
いるのである。
×3 誤り。賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う
(民法606条1項)。そして、賃貸人が修繕義務を履行しない場合には、賃借人
は賠償もしくは減額を受けるべき限度において、賃料の支払いを拒むことがで
きる(判例)。賃借人は目的物の使用収益に関係なく賃料全額の支払を拒絶す
ることができるものではない。
○4 正しい。3で見たように、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕
をする義務を負う(民法606条1項)。そして、建物の賃貸人が賃貸物の保存に
必要な修繕をするときは、賃借人は、これを拒むことはできないとされる(同2項)。
よって、賃貸人が建物の保存に必要な修繕をするときは、賃借人は使用収益に
支障が生じても、これを拒むことはできないのである。保存行為が賃借人の意思
に反し、かつ、賃借人が賃借した目的を達成できないときは、賃借人は、契約を
解除することができるという規定(民法607条)があるので、賃借人としては、これ
で対抗するしかないのである。
【問 9】 正解 1
○1 正しい。Aの使用人Bの不法行為により、Cが損害を受けており、Aは、Cに
対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償する責任を負う。使用者責任
である(715条1項本文)。ただし、設問は、Dにも過失があり、BDの共同不法行
為であり(民法719条)、この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して
求償権を行使することができる。共同不法行為の場合、被害者に対しては、各
不法行為者は、全額の賠償責任を負うが、損害を賠償した不法行為者は、他の
不法行為者に対し、その過失の割合に応じて、求償できるのである。
×2 誤り。Aが、Dに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した場合
(使用者責任である)、Aは、被用者であるBに対して求償権を行使することが
できる(民法715条3項)。必ずしも全額求償できるとは限らない(判例)。
×3 誤り。Cは、BとDに対して共同不法行為者として(民法719条)、損害賠償
を請求することができる。
×4 誤り。Dは、Bに対しても損害賠償を請求することはできる(民法709条)。
一般の不法行為責任である。2でも見たように、Dは、Aには使用者責任、Bに
は一般の不法行為責任を追及することができる。もし、ABに損害があれば、
ABは、Dに対して損害賠償ができる(民法709条)。共同不法行為者間でも、
損害賠償の請求ができることに変わりはない。
【問 10】 正解 2
×1 誤り。Aが死亡した場合、相続人は、BCE(Dの代襲相続)Fである。法定
相続分は、Bは配偶者とし2分の1、CEFは2分の1を平等に相続するから、そ
れぞれ6分の1ずつ相続する。EはDの持分をそのまま相続し、前妻との嫡出
子Fは、後妻との子と平等に相続することに注意。
○2 正しい。相続には、指定相続と法定相続がある。指定相続は、相続人が
遺言で相続分を指定することである(民法902条1項本文)。この指定がなけ
れば、法定相続が行われる(民法900条)。また、遺産の分割には、被相続人
が遺言で分割の方法を定める(同時に相続分の指定 → 法定相続分を超えて
いる場合)ことができる(民法908条)。これを指定分割という。その他に協議に
よる分割と、家庭裁判所の審判による分割がある。被相続人Aが生前、A所有
の全財産のうち甲土地について相続人であるCに相続させる旨の遺言をしてい
た場合、それが遺贈なのか相続分の指定なのかが争われていた。最高裁判
(平成3年4月19日)は、「遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが
明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、当該遺産を相続
人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたと解すべきであるとし
た。この問題は、Cが甲土地を取得できることについては問題ない。遺贈として
取得するのか、相続として取得するのかという争いであることに注意。
ここで注意してほしいのは、遺贈は贈与と同じように、登記をしなければ第三
者に対抗できないが、相続であれば、登記を具備しなくても第三者に対抗でき
るし、相続であれば単独で登記の申請ができるなどの違いがある。
×3 誤り。遺言者(A)が、特定の相続人(D)に全財産を相続させる旨の遺言し
ていた場合に、Aより先にDが死亡した場合、この遺言の効力が代襲されるかと
いう問題があり、従来から争われていた。最高裁判所(平成23年2月22日)は、
原則として、代襲相続の規定は適用されないとした。つまり、「相続させる遺言」
について、遺産分割の方法の指定と解したうえで、代襲を否定したのである。2
で見たように、それが遺贈と解されるものであれば、代襲されないのはいうまで
もない。
×4 誤り。2で見たように、遺言書に遺贈である旨が明確にされているときは、
遺贈とみなされるので、Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてFに
遺贈する旨の意思表示をしていたときは、Fは相続分とは別に、当該甲土地を
遺贈によって取得する。相続人だから遺贈を受けられないというものではない。
【問 11】 正解 4
×1 誤り。賃借人が賃貸人に無断で賃借物を第三者に使用又は収益をさせ
ると、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができる(民法612条2項)。定期
建物賃貸借契約の場合でも変わりはない。しかし、判例は、無断譲渡・転貸が
(AB間の)信頼関係を破壊しないような特段の事情がある場合には、賃貸人A
は、AB間の賃貸借 契約を解除することができないとしている。
×2 誤り。適法な建物の転貸借がある場合、AB間の賃貸借が期間の満了又
は解約の申入れにより終了すべきときは、Aから転借人Cへその旨を通知しな
ければ、Cに対抗できない(借地借家法34条1項)。定期建物賃貸借契約の場
合でも変わりない。設問は、Bの債務不履行を理由にAが賃貸借契約を解除し
た場合であるので、この通知は不要とされるので(判例)、この通知をしなくても、
AはCに対して甲建物の明渡しを請求することができる。
×3 誤り。AB間の賃貸借契約が期間満了で終了する場合、1で述べたように、
Aから転借人Cへその旨を通知すれば、AB間の契約終了をCに対抗できる。A
B間は定期建物賃貸借契約であり、期間が到来すると契約は終了する。正当事
由は問題にならない。
○4 正しい。借地借家法第32条第1項は、建物賃貸借契約において、事情の変
更による賃料の増減請求権を認めている。ただし、一定期間増額しないという特
約があれば、その期間内は増額できないことになっているが、減額しない特約を
してもその特約は無効と解されている。ところが、定期建物賃貸借契約について
は、賃料の改定について特約(増減を問わない)がある場合には、借地借家法第
32条第1項の規定を適用しないとして、特約を優先させている(借地借家法38条
7項)。よって、賃料の改定について特約がある場合には、経済事情の変動によっ
てBのAに対する賃料が不相当となっても、BはAに対して借地借家法第32条第
1項に基づく賃料の減額請求をすることはできないということになる。
【問 12】 正解 3
×1 誤り。借地借家法が適用されのは、建物所有を目的とする土地の賃貸借契
約に適用されるものであり(借地借家法1条)、ゴルフ場経営を目的とする土地賃
貸借契約については、借地借家法は適用されない。たとえ、一部に建物があって
も、借地の主たる目的が建物所有でなければ借地借家法の適用はない。
×2 誤り。借地権の存続期間が満了する際、借地権者が契約の更新請求した場
合、建物がある場合に限り、従前の契約と同一条件で契約が更新されたものとみ
なされる(借地借家法5条1項本文)。ただし、借地権設定者(地主)が遅滞なく異
議を述べたときは、この限りではないとされる(同ただし書)。しかし、借地権設定
者の異議は、正当事由が必要とされる(借地借家法6条)ので、遅滞なく異議を述
べればそれだけで借地契約が当然に終了するものではない。
○3 正しい。土地は一筆ごとに一個の不動産として登記され、対抗要件も一筆ご
とに判断される。借地借家法では、借地権の登記(借地である土地の登記簿の乙
区欄に登記される)がなくても、借地権者が借地上に登記のある建物を所有して
いれば、借地権の対抗要件を満たすとされる(借地借家法10条1項)。二筆の土
地のうち、登記ある建物がない土地については、借地借家法第10条第1項によ
る対抗力は及ばないことになる。
×4 誤り。借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失し、借地権者が残存
期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権者が再築に承諾を与えた
場合には、原則として、承諾のあった日又は建物再築のいずれか早い日から20
年間契約期間が延長される(借地借家法7条1項)。また、借地権者から借地権設
定者に対して再築の通知があった場合には、借地権設定者が2ヶ月以内に異議
を述べなかった場合も同様である(借地借家法7条2項)。設問のように、借地権
者から再築の通知がないのに、借地権設定者が単に異議を述べないからといっ
て、20年間の延長が認められるものではない。
【問 13】 正解 1
×1 誤り。区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者(賃借人使用借人な
ど)は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して
意見を述べることができる(区分所有法44条1項)。しかし、議決権を行使すること
はできない。
○2 正しい。集会は管理者が招集する(借地借家法34条1項)。一定数の区分所
有者の請求によって管理者が集会を招集する場合もある(同3項)。いずれにして
も管理者が集会を招集した場合には、規約に別段の定めがある場合及び別段の
決議をした場合を除いて、管理者が集会の議長となる(区分所有法41条)。一定
の少数の区分所有者が集会を招集することもあるが(区分所有法34条4項、5項)、
この場合には、原則として集会を招集した区分所有者の一人が議長となる(区分
所有法41条)。
○3 正しい。管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関す
る報告をしなければならない(区分所有法43条)。
○4 正しい。共有部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部
分は、これを用すべき区分所有者の共有に属する(区分所有法11条1項)。
【問 14】 正解 3
○1 正しい。表題部所有者(甲区欄に所有権の登記がなされると表題部所有者
は抹消される)又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となるこ
とができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その
他の一般承継(合併など)があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該
表示に関する登記を申請することができる(不登法30条)。
○2 正しい。共有物分割禁上の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該
権利の共有者である全ての登記名義人が共同してしなければならない(不登法
65条)。各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、
5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができる(民法256条
1項)。そして、この不分割の特約は登記をしなければ第三者に対抗できないと
されている(民法177条)。この不分割の登記のことである。
×3 誤り。所有権の保存登記(甲区欄に最初になされる所有権の登記のこと)の
申請は、表題部所有者又はその相続人や所有権を有することが確定判決によっ
て確定された者等でなければできない(不登法74条1項)。単に表題部所有者か
ら所有権を取得したからといって所有権の保存登記はできないのが原則である。
ただし、区分所有建物については、表題部所有者から所有権を取得した者も保
存登記の申請ができる。この場合、当該建物が敷地権付き区分建物であるとき
は、当該敷地権の登記名義人(通常は区分建物の表題部所有者(分譲主)で
ある)の承諾を得なければならないとされている(不登法74条2項)。
○4 正しい。所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有
する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請すること
ができる(不登法109条1項)。なお、所有権以外の仮登記に基づく本登記の申請
については、この規定は適用されないことに注意。例えば、抵当権の仮登記を本
登記にする場合には、承諾なくして本登記の申請ができるのである。
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