【問 11】 正解 1

×l 不適切。時効の利益は、あらかじめ放棄することができない(民法146条)。あらか

じめ放棄を認めると金を貸す債権者等は、強い立場にあり、貸す条件として時効の主張

をしないという特約をするおそれがあり、それでは時効の制度はほとんど無意味になるか

らである。時効が完成すると放棄は自由にできるし、時効の期間がまだ完成しない間でも、

既に経過した期間を放棄することもできる。管理組合の規約において、「各区分所有者は

管理費の債務については消滅時効の主張をすることができない」旨の定めは、あらかじめ

時効の利益を放棄する特約であり、無効となる。だから、滞納区分所有者は、消滅時効が

完成すると、時効の主張をすることができる。

〇2 適切。破産手続開始の決定(破産法30条)を受けた後、免責の決定(破産法252条)

を受ければ(自己破産の場合、特に問題がなければ破産開始の決定から1ヵ月ぐらいの後

に免責の決定がなされる)、債務者は一定の債務を除いて債務を免れる(破産法253条)。

この場合に免れる債務は、「破産手続開始前」の原因に基づいて生じた財産上の請求権で

ある(破産法2条5項)。「破産手続開始決定の日の翌日以降」の債務(管理費)については、

免責の効果は及ばないので、それについては支払義務を免れるものではない。

〇3 適切。専有部分について賃貸借契約が締結され、当該賃貸借契約において、管理費

の支払義務者を賃借人と定めても、それだけで債権者(管理組合)を拘束しない。債権者と

しては、自分の意思に反して債務者が変更することを認めるわけにはいかないのである。

賃貸人と賃借人の契約としては有効であり、賃借人が代わりに支払わなければ、賃貸人に

対し債務不履行の責任を負う。

 ただし、区分所有者と賃借人と管理組合の三者の契約で区分所有者の債務(管理費)を

賃借人が引き受けるという契約ができる。免責的債務引受契約というものである。これに

よると、債権者は賃借人にしか請求できず、区分所有者に対しては請求できない。債権者

が契約に加わらなくても、その承諾があれば(設問でいう特段の事情である)、同じように

債権者はこの契約に拘束さる。

〇4 適切。消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)。

管理費の各支払い期日が管理組合の権利を行使できる期日であり、消滅時効の起算日

は、管理費の各支払期日が経過した時である。

【問 12】 正解 3

×ア 不適切。マンション管理業者は、管理組合の事業年度終了後、契約で定めた期限

内に、管理組合に対して、当該年度における管理事務の処理状況及び管理組合の会計

の収支の結果を記載した書面を交付し、「管理業務主任者をして」、報告をさせなければ

ならない(標準管理委託契約9条1項)。適正化法77条の「管理事務の定期報告」を受け

た規定である。

〇イ 適切。マンション管理業者は、毎月末日までに、管理組合に対し、前月における

管理組合の会計の収支状況に関する「書面を交付」しなければならない(標準管理委託契

約9条2項)。管理組合の承諾があれば、書面の交付に代えて電磁的方法によることもで

きる(規則87条5項、別表1の1(1)③)。この2項は、書面の交付義務を定めているだけで、

報告(説明)義務については規定していない。ただし、管理業者は、管理組合から請求が

あると、管理事務の処理状況の他、この会計の収支状況についても報告(説明)をしなけ

ればならないとされている(標準管理委託契約9条3項、別表1の1(1)③)。ただ、この

報告は、管理業務主任者以外の者に行わせてもよい。

〇ウ 適切。イで述べたとおりである。管理業者は、管理組合から請求があると、管理

事務の処理状況の他、この会計の収支状況についても報告(説明)をしなければならな

いとされている(標準管理委託契約9条3項、別表1の1(1)③)。この報告は、管理業務

主任者以外の者に行わせてもよい。

〇エ 適切。管理事務の定期報告(1項)、会計の収支状況に関する書面を交付(2項)、請

求があるときの報告(3項)の場合に、管理組合は、管理会社に対し、管理事務の処理状況

及び管理組合の会計の収支に係る関係書類の提示を求めることができるとしている(標

準管理委託契約9条4項)。報告等の正確性・信頼性を担保するためである。書類の提示

をするのは、管理業務主任者である必要はない。

 以上より、適切なものは、イ、ウ、エの三つであり、3が正解。

【問 13】 正解 1

〇ア 適切。建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査を行うための費用は、

修繕積立金から取り崩すことになっている(標準管理規約28条1項4号)。そして、管

理組合は、第28条第1項に定める業務(修繕積立金から取り崩すことができる業務)に

あてるため必要な範囲内において借入れをすることができる(標準管理規約63条)。ちな

みに、この借入金については、修繕積立金をもってその償還に充てることができること

になっている(標準管理規約28条3項)。標準管理規約では、通常の管理に要する経費

(管理費)に充てるための借り入れは認めていないことに注意。

〇イ 適切。駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの管理

に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てるとされている(標準管理規約

29条)。

×ウ 不適切。収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度に

おける管理費に充当することになっている(標準管理規約61条1項)。繕積立金に充当

することはできない。

〇エ 適切。管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条第

2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることがで

きる(標準管理規約61条2項)。管理規約で定めているので、一々総会の決議は必要

でない。

不足額の負担を確認的に総会の決議にかけても、あえて不当ともいえないが、それ

はあくまで確認的なものである。そういう意味であえて不適切とは言えないという

だけのものである。

 以上より、不適切なものは、ウの一つであり、1が正解。

 エについて、平成24年度の【問13】の肢1でも同じような問題が出題されている。

どうも、この問題の出題者は、管理費等に不足を生じたときに、組合員に負担を求

める場合には、総会の決議が必要だと誤解しているのではないかと思われる。そう

すると、「管理組合は、管理費等に不足が生じた場合に、総会の決議がなければ、

その都度必要な金額の負担を組合員に求めることができない。」という肢でも、適切

と考えているのではないか。

 しかし、これは明らかに誤りである。管理規約で定めているので、一々総会の決

議は必要でない。

 中には、管理費等の額並びに賦課徴収方法については、標準管理規約第48

条3号で総会の議決事項だから、不足額の徴収についても総会の決議が必要だ

と考えている人がいるようだ。確かに、管理費・修繕積立金をいくらにするか、その

徴収方法(銀行振込みとか、引き落しとか)はどうするかということは、総会の決議事

項である。しかし、管理費等の不足額というのは、管理組合が第三者に負担する

債務である。管理費等と明確に区別しなければならない。その債務にあてるため

に負担額を求めることは、管理費等の徴収ではない。管理費と管理委託費(これ

は管理組合の債務である)との違いと同じようなものだ。つまり、不足額というのは、

管理組合の第三者に対する債務であり、全員が負担割合に応じて債務を負うので

あり(区分所有法29条1項、53条1項)、その都度必要な負担額を支払う義務があ

る。それを規約で、組合が各組合員から徴収して支払いにあてることができると定

めているのである。

 このように4分の3の決議により成立した規約で定めているのに、総会の決議

(過半数)で否決したら、組合は徴収できないということになるのか。これは明らか

に不当であろう。

 組合に対する債権者(管理会社や大規模修繕をした会社など)は、その不足額

について、各組合員に対して、その負担割合で、支払いの請求や強制執行ができ

る。しかし、それは大変面倒なことだから、組合が責任をもって徴収すると規約で定

めているのである。だから、このような規約の定めのある組合とは、安心して取引が

できるということになる。

【問 14】 正解 2

〇1 適切。修繕積立金の保管及び運用方法を決めるには、総会の決議によらなけれ

ばならない(標準管理規約48条8号)。

×2 不適切。長期修繕計画の作成等のために劣化診断(建物診断)に要する経費に

ついては、管理組合の財産状態に応じて管理費又は修繕積立金のどちらかでも取り崩

して充当できる(標準管理規約32条関係のコメント④)。

〇3 適切。共用部分等に係る火災保険料その他損害保険料については、管理費から

充当される(標準管理規約27条5号)。修繕積立金を取り崩して充当してはならない。

〇4 適切。共用設備の保守、維持及び運転に要する経費については、管理費から充

当される(標準管理規約27条3号)。修繕積立金を取り崩して充当してはならない。

【問 15】 正解 1

共用非常照明修理工事代75,000円、排水管塗装工事代368,000円、壁

補修工事代21,000円の合計464,000円は修繕費として借方に計上する。

防犯カメラ取替(取付費含む)代670,000円は什器備品として借方に計上する。

消防設備不備箇所改良工事代、エレベーター改良工事代、エレベーター工

事に伴う部品交換代は3月末現在完成していないが、その一部支払額(2,500,000円)

を前払い金として、借方に計上する。

4月支払い予定の壁補修工事代21,000円、防犯カメラ取替(取付費含む)代

670,000円の合計額691,000円は、未払金として貸方に計上する。

そして、2,943,000円を普通預金から支払っている。

 以上より、1が正解。

【問 16】 正解 2

発生主義によると、3月の時点では、管理委託費5月分とリース料4月分は発生し

ていない。したがって、これらについては、記載しない。

3月の時点では、電気料3月分と、水道料2~3月分は発生はしているが、支払い

をしていないので、未払金として計上すべきである。

 以上より、2が正解。

  エースビジネス学院   民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com