平成25年度 管理業務主任者試験解説①
記事投稿日2014年02月07日金曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
先日、古いパソコンが故障したため、新しいパソコンに変えた。ところが、新し
いパソコンを使って入力する場合、改行を入れると一行開いてしまう。ワード
で入力した文字を貼り付けると。これまた、一行開いてしまう。先日、ブログに
公開した宅建試験の解説やこの管理業務主任者の解説①も文章がずっと
繋がってしまって大変読みづらくなった。管理業務主任者の解説どころでは
なく、この修復やパソコンの使い方と格闘している。
平成26年2月20日
合格点は32点である。昨年は37点であったから5点も下がった。
数を数え させる問題が大幅に増加した結果である。肢の全てが分らなけれ
ば正解に至らな いので点数が取りにくい問題である。 しかも、問13と問30
は、問題のある問題だ。とりあえず、この二つを解説し て、以下、順番に解
説する。
【問 13】 正解 1
〇ア 適切。建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査を行うための費
用は、修繕積立金から取り崩すことになっている(標準管理規約28条1項4号)。そし
て、管理組合は、第28条第1項に定める業務(修繕積立金から取り崩すことができる
業務)にあてるため必要な範囲内において借入れをすることができる(標準管理規約
63条)。ちなみに、この借入金については、修繕積立金をもってその償還に充てるこ
とができることになっている(標準管理規約28条3項)。標準管理規約では、通常の管
理に要する経費(管理費)に充てるための借り入れは認めていないことに注意。
〇イ 適切。駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの
管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てるとされている(標準管
理規約29条)。
×ウ 不適切。収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年
度における管理費に充当することになっている(標準管理規約61条1項)。繕積立金
に充当することはできない。
〇エ 適切。管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25
条第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求め
ることができる(標準管理規約61条2項)。管理規約で定めているので、一々総会の
決議は必要でない。不足額の負担を確認的に総会の決議にかけても、あえて不当
ともいえないが、それはあくまで確認的なものである。そういう意味であえて不適切
とは言えないというだけのものである。
以上より、不適切なものは、ウの一つであり、1が正解。
※エについて、平成24年度の【問13】の肢1でも同じような問題が出題されている。
どうも、この問題の出題者は、管理費等に不足を生じたときに、組合員に負担を求
める場合には、総会の決議が必要だと誤解しているのではないかと思われる。そう
すると、「管理組合は、管理費等に不足が生じた場合に、総会の決議がなければ、
その都度必要な金額の負担を組合員に求めることができない。」という肢でも、適
切と考えているのではないか。
しかし、これは明らかに誤りである。管理規約で定めているので、一々総会の決
議は必要でない。
中には、管理費等の額並びに賦課徴収方法については、標準管理規約第48条
3号で総会の議決事項だから、不足額の徴収についても総会の決議が必要だと考
えている人がいるようだ。確かに、管理費・修繕積立金をいくらにするか、その徴収
方法(銀行振込みとか、引き落しとか)はどうするかということは、総会の決議事項で
ある。しかし、管理費等の不足額というのは、管理組合が第三者に負担する債務で
ある。管理費等と明確に区別しなければならない。その債務にあてるために負担額
を求めることは、管理費等の徴収ではない。管理費と管理委託費(これは管理組合
の債務である)との違いと同じようなものだ。つまり、不足額というのは、管理組合の
第三者に対する債務であり、全員が負担割合に応じて債務を負うのであり(区分所
有法29条1項、53条1項)、その都度必要な負担額を支払う義務がある。それを規
約で、組合が各組合員から徴収して支払いにあてることができると定めているので
ある。このように4分の3の決議により成立した規約で定めているのに、総会の決議
(過半数)で否決したら、組合は徴収できないということになるのか。これは明らかに
不当であろう。
組合に対する債権者(管理会社や大規模修繕をした会社など)は、その不足額に
ついて、各組合員に対して、その負担割合で、支払いの請求や強制執行ができる。
しかし、それは大変面倒なことだから、組合が責任をもって徴収すると規約で定め
ているのである。だから、このような規約の定めのある組合とは、安心して取引が
できるということになる。
【問 30】 正解 1(試験実施期間の発表は2も正解としている)
×ア 不適切。管理組合の業務に関する重要事項については、総会の議決事項
とされている(標準管理規約48条15号)。理事会の決議で行うことができるという
のは、不適切である。
〇イ 適切。理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、
特定の課題を調査又は検討させることができる(標準管理規約55条1項)。
〇ウ 適切。理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の
決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる
(標準管理規約60条3項)。
〇エ 適切。区分所有者が第6条第1項に規定する行為(建物の保存に有害な行
為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為)
をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員
又は管理組合法人は、行為の停止等(差止請求)を請求できる。この差止請求は、
裁判外(訴訟外)でもできる。この場合、各区分所有者が請求できるのである。総
会の決議や理事会の決議は不要である。ただし、より慎重を期すために理事会の
決議を得て行うことも、あえて不適切とは言えないであろう。しかし、この問題が
「原状回復を請求するには、理事会の決議を得なければできない」と解されるなら、
不適切である。
訴訟を提起する場合には、必ず総会の決議(普通決議)が必要である(区分所
有法57条2項)。あらかじめ規約で定めておくことはできない。だから、規約で理
事会の議決でできると規定しても、その規約は無効である。設問は、この点は明
確にしていないので、訴訟外と考えて解答すればよい。もし、原状回復の訴訟を
理事会の決議を経て行うことができるとあれば、明らかに不適切である。
※試験の実施機関が、エについて、適切とも不適切ともいえるとして、1と2を正解
としている。だから、1とした人も、2とした人も正解。平成24年度も、答えが2つあ
る問題が2個あった。人がやることだから、ミスはつきものである。ただ、出題者が
本当に分っているのか疑わしいことがある。一度作った問題をその道の専門家に
確認してもらっているのだろうか。国家資格になっているのだから、専門家の目を
通してほしい。
出題者は、標準管理規約の第67条第3項第1号を根拠にしてこの問題を出題
したのではないかと思われる。そこには、「理事長は、理事会の決議を経て、行為
の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代
表して、訴訟その他法的措置を追行すること」ができると規定している。ここでは、
訴訟についても、理事会の決議を経てできると規定している。これによると、エの
肢は単純に適切となりそうである。
しかし、この規約の規定は、「規約・使用細則等に違反したときの措置」について
の規定であり、区分所有法第57条でいう区分所有法第6条第1項に規定する行為
(建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同
の利益に反する行為)に関するものではない。この区分所有法第57条の場合には、
訴訟を提起する場合には、必ず、総会の決議が必要であり、規約で理事会の決議
でできると規定しても、その規約は無効だと先に述べた通りである。標準管理規約
のこの規定と区分所有法の57条規定の適用範囲を明確に区別して理解する必要
がある。両者はその守備範囲が異なるのである。
中には、区分所有法第57条の規定とこの規約の規定とは矛盾しているからこの規
約の規定は無効だという人もいる。しかし、そうではない。ちゃんと適用範囲をすみ分
けしているのである。出題者は、この規約の規定と、区分所有法57条の規定とを明
確に区別せずに出題したのではないかと疑われる。
エースビジネス学院 民本廣則
http://www.acebusinessgakuin.com
- 記事投稿者情報 ≫ 一般社団法人エースマンション管理士協会
- この記事へ ≫ お問い合わせ
- この記事のタグ ≫