高経年マンションが増加しているなか、その大規模修繕のための修繕積立金不足
が深刻な問題になっている。また、どういうプロセスで大規模修繕を行うべきかと
いうことも、問題になっている。

 修繕積立金の不足について、まず、問題は、新築の分譲をスムーズにするため、
管理費等(通常の管理費と修繕積立金)として代金以外に必要とされる費用を抑
制したいという計算が働くため、はじめから少なく定めることがある。

 次に、管理費等がある程度たまってくると、管理会社が、色々な修繕の必要性を
言ってきて、それに従ったために、大規模な修繕積立金が不足しているということ
もある。

 新築分譲時の管理費等については、前にも指摘したが、通常の管理費2、修繕積
立金1の割合になっている場合が多い。これを逆にすべきである。通常の管理費の
見直しを早急にすすめることだ。

 途中で管理会社の要求どおりの工事をしたため、修繕積立金が不足した問題につ
いては、長期的な修繕計画がなされていないとこういうことになる。
 管理会社は、修繕積立金がたまってきたら、自分ところの関連会社の営業を受け
て工事をしたがるものだ。管理組合がしっかりしていれば、そんな甘い言葉に惑わ
されないだろうが、そうでなければ、その場限りの判断で、真に必要でもない工事
をしてしまう。どうせ理事の任期は1年か2年、誰かが強く要求すると、面倒を避け
たいという判断が勝ってしまう。

 長期修繕計画を立ててあれば、それにしたがって修繕積立金を使用する義務が発
生 る。それに違反することはできない。どうしても必要であれば、総会の決議で
長期修繕計画を修正する必要がある。それが、他人の金を預かる者の責任だ。

 いざ、大規模修繕を行う場合、管理会社主導で行うと、修繕積立金がたまったか
ら機械的に工事を行うということが往々にしてある。しかも、自分ところの関連会
社に仕事をまわすということもよくある。

 管理会社主導を排除して、管理組合で修繕委員会を作って数年間大規模修繕を検
討することがよくある。これは非常に大切なことだ。自分たちの建物を修繕するの
に、組合員が無関心でいていいはずがないからだ。

 修繕委員の方々に是非注意してほしいのは、色々なところに行って話しを聞いて
欲しい。
 管理会社の話しだけを聞いているようだと、全く修繕委員会の意味がないという
ことを知ってほしい。公的な機関として大阪市住宅供給公社、地方自治体がやって
いるマンション管理士の相談会などがある。

 大規模修繕工事をする場合、絶対に欠かせないのが、建物診断をして、その結果
を踏まえて、工事設計書を作り、設計した者が工事監理を行うということだ。これ
は工事業者と全く別個の業者に依頼しなければ意味がない。このプロセスが一番大
事であるにもかかわらず、このプロセスを工事業者に任せてしまっているというこ
とがある。

 この建物診断等のコンサル業者も、工事業者も公募等により複数の業者から見積
りを取って決定しなければならない。ただし、コンサル業者の選定は、金額だけで
選んでは後でつけが回ってくるということを知らなければならない。
  
 専門家の話しによると、この建物診断等のコンサルタントを選ぶことが一番大事
で、全てが決まると言われている。このために費用を要するが、それは当然に必要
な費用であり、これを削ってはまともな工事はできない。特に第1回目の大規模修
繕のための建物診断は、建設業者のあらを探すつもりでしなければならないとされ
ている。そして、これによってマンションは完成すると言われているようですよ。

 今建物がどういう状態で、どこが劣化しているか、どこをどういう風に修繕すべ
きかを診断せずに、まともな工事ができるはずがないのだ。劣化が激しくて、工事
費用がかさむ場合もあろう。積立金の範囲で工事をすませば良いと言うわけにはい
かないこともある。このような場合には、その費用をどういう風に調達するのか、
ということも検討していかなければならない。建物の寿命を長く保つためには、借
入金をしてでも資金を調達する必要もある。

 適切に修繕をしていけば、80年~100年経っても十分快適に生活ができるとも言
われている。マンションの建設業者は、40年ぐらいで建替えをしてくれた方が自分
たちの利益だから、修繕工事にあまり関心を示さないかも知れない。しかし、今時
そんな考えは通用しない。

 ※エースマンション管理士ホームページhttp://acemansyonkanri.law.officelive.com/