古いマンションの場合、マンション管理規約は簡
 単なものになっている場合が多い。規約に定めて
 いなければ、区分所有法や民法の規定が適用さ
 れる。規約にも、区分所有法にも、民法にも規定が
 ない事項については、結局は総会で定めるしかな
 いのである。

  しかし、それでは、区分所有法や民法をいちいち
 調べなければならず、また、規定のない事項につ
 いていちいち総会で決めなければならないというこ
 とにもなり、大変面倒である。
  規約に詳しく規定しておけば、規約を見るだけで、
 管理組合の管理運営ができるので、便利であり、
 いちいち法律違反ではないかどうかの心配もいら
 ない。

  管理組合の運営は、規約に従ってなされなけれ
 ばならず、管理組合の基本的な事項を規約に定め
 なければならない。そういう意味で規約はマンショ
 ン管理組合の憲法といわれる。

  そこで、最近、古い管理規約を改正するという例
 が増えている。この改正をマンション管理士に依頼
 すると、結構な料金がかかる。管理規約について
 は、国土交通省が標準的な管理規約を作っている
 が、それでも、素人ではどうしても難しいので、マン
 ション管理士に依頼することになる。

  中には、管理会社が管理規約を作っているところ
 もある。この場合、注意してほしいのは、標準管理
 規約に従いながら、管理会社に不利になるような
 事項を意図的に削除していることがよくある。例え
 ば、管理組合は管理士等の専門的な人に相談し
 たり、助言、指導を受けることができるという規定
 (単棟型の標準管理規約34条)を削除したり、役員
 の中から会計担当理事をはずしたりしている。
  管理会社に都合の悪いことを専門家に指摘され
 るのを避けたり、会計を管理組合の理事にさえ見せ
 たくないという意図がありありだ。

  マンション管理士に依頼する場合、かなり、高い
 料金になっている。そこで、マンション管理士は、管
 理規約を作るときに、標準管理規約を参考にしなが
 ら、そのマンションに特有な事や、細かいことまで、
 管理規約に書き込んでいる場合がある。
  そうしなければ高い料金に見合うだけの仕事をや
 っていないと指摘されるのを恐れているかも知れな
 い。本来は細則で定めるべきことまで、管理規約に
 定めている。

  しかし、マンション管理規約は、マンションの憲法
 であり、憲法の憲法たるゆえんは、基本的な事項を
 定めるということだ。だから、その改正は4分の3の
 議決が必要になっている。細かいことを後に変える
 ときも、いちいち4分の3の議決を必要とすることは、
 後々管理組合の運営に支障をきたし、大変迷惑な
 ことになる。
  標準管理規約は、法律の専門家が作ったもので
 あり、大変よく出来ている。素直にこれに従って規
 約を作るべきである。もちろん、修正すべき点は修
 正すべきであるが、余計な事項を管理規約に加え
 ないことである。加えるべきものがあるとすると、暴
 力団員等の入居を制限する規定などである(これ
 とて、使用細則に規定してもよい)。

  管理規約には、基本的な事項を定め、それ以外
 の事項は、使用細則、会計処理細則、専有部分の
 修繕に関する細則、管理費等の督促に関する細則、
 駐車場の使用細則、各種の届出に関する細則、ペ
 ットに関する細則、理事会運営細則等々のいろいろ
 な細則に規定すべきだ。
  細則は、過半数で制定・改正できるので、細かい
 事項は、細則に規定することが合理的だ。

  管理規約の作成費用には各種細則の費用を含ま
 ないとしているので、高い費用に見合うように、本来
 細則に規定すべきことまでも、規約本体に組み込ん
 でいるようである。そして、ここまで管理規約に組み
 込んであるから、細則は要らないと。しかし、それは、
 管理規約の本来の意味を見失うものである。

  管理規約と細則は密接不可分であり、管理規約
 の作成費用には、各種細則の費用も当然含めるべ
 きである。それではじめて管理規約を作ったというこ
 とになる。

  もちろん、事情の変更により新たな細則の作成が
 必要になることがある。この場合には、その細則の
 作成費用は別途請求しても良いのはいうまでもな
 い。
  
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