管理費・修繕積立金の滞納者に対する区分所有権の競売請求
記事投稿日2015年02月03日火曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
1 強制執行・先取特権の実行
管理費等の滞納があった場合、支払訴訟を提起して勝訴判決を
得て、それに基づいて滞納者の専有部分等を強制執行(強制競売)
することができる。また、区分所有法第7条に基づく先取特権の実
行としての競売(任意競売)することができる。そして、その競売代
金から滞納管理費等の回収を図るのである。
しかし、当該マンション(専有部分)に抵当権が設定されていて、
抵当権付債権の金額がマンションの時価額を上まわるときは、裁
判所は競売を認めない。競売代金は先に抵当権者に支払われる
ので、このような競売を認める意味がないからである。
2 区分所有法59条による競売請求
(1) 先にも見たが、①区分所有者が、建物の保存に有害な行為
その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に
反する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合に
おいて、②その行為による区分所有者の共同生活上の障害が
著しく、③他の方法(差止請求、使用禁止請求その他)によって
はその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所
有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区
分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、
訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び
敷地利用権の競売を請求することができる(区分所有法59条
1項)。
(2) この競売請求は、先に見た判決に基づく強制競売や先取特
権に基づく競売と違って、マンションに対する抵当権付債権の金
額が時価額を上回る場合でも、競売手続が行われる。その結果、
確実に特定承継人たる買受人が現れるので、その者から滞納管
理費等回収できるわけである(区分所有法8条)。
(3) 区分所有法59条による競売請求が認められる要件
① 長期間の管理費等の滞納は、区分所有法第6条第1項にい
う、区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するものとし
ている下級審の判例がある(東京高裁平成18・11・1、東京地
裁平成18・6・27、東京地裁平成24・9・5等)
具体的には、マンションの規模等によって、「共同利益に反す
る」滞納期間かどうかが判断されると思われる。
② 「共同利益に反する」ものと認定されても、その行為による区
分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法(差止請求、
使用禁止請求その他)によってはその障害を除去して共用部
分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図
ることが困難であるときでなければならない。
③ ①の要件は認めるが、②の要件に該当しないとして、競売を
認めないのが、東京高裁平成18・11・1、東京地裁平成18・6・
27の判決であり、②の要件も認めて競売を認めたのが、東京
地裁平成24・9・5の判決(リゾートマンションに関するもの)で
ある。
競売を否定した、東京地裁平成18・6・27の判決は、「区分所
有法59条が行為者の区分所有権を剥奪し、区分所有関係から
終局的に排除するものであることからすれば、上記要件に該当
するか否かについては厳格に解すべきであり、滞納した管理費
等の回収は、本来は同法7条の先取特権の行使によるべきであ
って、同法59条1項の上記要件を満たすためには、同法7条に
おける先取特権の実行やその他被告の財産に対する強制執行
によっても滞納管理費等の回収を図ることができず、もはや同条
の競売による以外に回収の途がないことが明らかな場合に限る
ものと解するのが相当である。」として、本件は、未だその要件を
満たしているとは言えないとしている。
②の要件については、滞納額や他に回収の方法を尽くしたか
どうかとか、かなり細かな事実の認定を行っている。ケースバイ
ケースで判断するしかない。
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