1 強制執行・先取特権の実行
  管理費等の滞納があった場合、支払訴訟を提起して勝訴判決を
 得て、それに基づいて滞納者の専有部分等を強制執行(強制競売)
 することができる。また、区分所有法第7条に基づく先取特権の
 行としての競売(任意競売)することができる。そして、その
競売代
 金から滞納管理費等の回収を図るのである。
  しかし、当該マンション(専有部分)に抵当権が設定されていて、
 抵当権付債権の金額がマンションの時価額を上まわるときは、

 判所は競売を認めない。競売代金は先に抵当権者に支払われる
 ので、このような競売を認める意味がないからである。

2 区分所有法59条による競売請求
 (1) 先にも見たが、①区分所有者が、建物の保存に有害な行為
  そ
の他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に
  反す
る行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合に
  おい
て、②その行為による区分所有者の共同生活上の障害が
  著しく、
③他の方法(差止請求、使用禁止請求その他)によって
  はその
障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所
  有者の共
同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区
  分所有者
の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、
  訴えをもっ
て、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び
  敷地利用権の
競売を請求することができる(区分所有法59
  1)

 (2) この競売請求は、先に見た判決に基づく強制競売や先取特
  権
に基づく競売と違って、マンションに対する抵当権付債権の金
  額が時価額を上回る場合でも、競売手続が行われる。その結果、
  確実に特定承継人たる買受人が現れるので、その者から滞納管
  理費等回収できるわけである(区分所有法8)

 (3)  区分所有法59条による競売請求が認められる要件
  ① 長期間の管理費等の滞納は、区分所有法第6条第1項にい
   う、
区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するものとし
   てい
る下級審の判例がある(東京高裁平成18111、東京地
   裁平成
18627、東京地裁平成2495等)
    具体的には、マンションの規模等によって、「共同利益に反す
   る」滞納期間かどうかが判断されると思われる。
  ② 「共同利益に反する」ものと認定されても、その行為による
   分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法(差止請求、
   使用禁止請求その他)によってはその障害を除去して共用部
   分
の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図
   ること
が困難であるときでなければならない。
  ③ ①の要件は認めるが、②の要件に該当しないとして、競売を
   認めないのが、東京高裁平成18111、東京地裁平成186
   27の判決であり、②の要件も認めて競売を認めたのが、東京
   地
裁平成2495の判決(リゾートマンションに関するもの)で
   ある。
    競売を否定した、東京地裁平成18627の判決は、「区分所
   有法59条が行為者の区分所有権を剥奪し、区分所有関係から
   終
局的に排除するものであることからすれば、上記要件に該当
   す
るか否かについては厳格に解すべきであり、滞納した管理費
   等
の回収は、本来は同法7条の先取特権の行使によるべきであ
   っ
て、同法59条1項の上記要件を満たすためには、同法7条に
   お
ける先取特権の実行やその他被告の財産に対する強制執行
   によ
っても滞納管理費等の回収を図ることができず、もはや同条
   の
競売による以外に回収の途がないことが明らかな場合に限る
   も
のと解するのが相当である。」として、本件は、未だその要件を
   満たしているとは言えないとしている。
    ②の要件については、滞納額や他に回収の方法を尽くしたか
   どうかとか、かなり細かな事実の認定を行っている。ケースバ
   ケースで判断するしかない。