宅建・管業 過去のミス問題の検討⑪
記事投稿日2014年06月12日木曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
平成24年度管理業務主任者試験
【問 29】 総会における議決権行使に関する次の記述のうち、区分所有法及び
マンション標準管理規約によれば、最も不適切なものはどれか。
1 賃借人が、賃貸人である区分所有者からの委任状を理事長に提出したので、
議決権行使を認めた。
2 2つの議決権を有する区分所有者が、同一議案について議決権の1つは反対
する旨の、もう1つの議決権については賛成する旨の議決権行使書を提出した
ので、それらの議決権行使を認めた。
3 専有部分の共有者の1人から転居先を総会招集通知場所とする届出がなさ
れていたが、議決権行使者の届出はなかったので、出席した在住共有者の議
決権行使を認めた。
4 区分所有者から提出された議決権行使書に署名押印はあるが、賛否の記載
がないので、有効な議決権行使とは認めなかった。
〇1 適切。議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる(区分
所有法39条2項)。そして、標準管理規約では、組合員又は代理人は、代理
権を証する書面を理事長に提出しなければならないとしている(標準管理規
約46条5項)。賃借人が、賃貸人である区分所有者からの委任状を理事長
に提出したので、議決権行使を認めたのは、適切である。
×2 不適切。2つの議決権を有する区分所有者が、同一議案について議決権
の1つは反対する旨の、もう1つの議決権については賛成する旨の議決権行
使(議決権の不統一行使)を認めるのは、不適切である。
×3 不適切。専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行
使すべき者一人を定めなければならない(区分所有法40条)。そして、標準
管理規約では、住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使につ
いては、これら共有者をあわせて一の組合員とみなすとし(標準管理規約46
条2項)、前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名
を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なけ
ればならないとしている(標準管理規約46条3項)。設問は、専有部分の共
有者の1人から転居先を総会招集通知場所とする届出がなされていたが、
議決権行使者の届出はなかったので、出席した在住共有者の議決権行使
を認めたとあり、届出のないものに議決権の行使を認めたことは、不適切
である。
〇4 適切。議決権行使書は、本人が書面で議決権を行使するものであり、賛
否の記載がないのは、有効な議決権行使とは認められないので、適切であ
る。
以上より、不適切なものは、2と3である。当初試験の実施団体は、正解は2
のみとしていた。しかし、後に3も正解との訂正を出した。最も不適切なものは
どれか、と問うているので、不適切な2と3から最も不適切なものを選ぶことも
できるかも知れない。しかし、法律の問題でそれは不可能である。「最も適切
なものはどれか」とか「最も不適切なものはどれか」というふうに出題されてい
るが、要するに、適切なものか、不適切なものを一つ選べばよいことになって
いる。今までそうだった。今後、まぎらわしい「最も」という表現を使うべきでは
ないと思う。
注→肢3について、仮に、転居先を総会招集通知場所とする届出をした者に
議決権を認めた場合には、どうか。この場合には、適切であると考える余地
がある。
区分所有法によると、専有部分が共有の場合、総会の招集通知は、共有
者のうち、議決権を行使すべき者にすればよいことになっている(区分所有
法35条2項、40条)。招集通知は議決権行使を担保するために認められた
ものだからである。そして、招集通知を受けるべき場所を通知したときは、
その場所に招集通知発する(区分所有法35条3項、標準管理規約43条2
項)。共有者の一人が「転居先を総会招集通知場所とする届出」をしておい
て、これとは別個に、他の者を「議決権行使者」として届出をしていなけれ
ば、前者の届出に後者の届出が含まれていると解される余地がある。
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