平成25年度 管理業務主任者試験解説⑧
記事投稿日2014年03月02日日曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
授業で使うため問題の解説をワードで作成している。その作成した解説をパソ コンのブログに移しているのであるが、こちらが全く想定しないような形式にな ってしまう。いろいろとやっているが、なかなか思うようにならない。その道のプ ロだったらきっと簡単なことだろうが、大変苦労している。それだけで時間を費 やしてしまっている。それでも、思うようになっていない。
【問 40】 正解 1
×ア 無効。売買の目的物に隠れた瑕疵があるときは、買主は瑕疵を発見した 時から1年以内に、瑕疵担保責任を追求しなければならない(民法570条、566 条3項)。民法では、原則としてあらゆる特約が許される。この責任を負わないと する特約も有効である(民法572条)。ところが、宅建業法では、「売主が宅建業 者で買主が宅建業者でない場合」、担保責任の追及期間を「目的物の引渡しの 日から2年以上」とする特約をする場合を除いて、民法の瑕疵担保責任より、 買主に不利な特約をしてはならず、不利な特約をすれば、その特約は無効とな る(業法40条)。 設問は、引渡しの日から2年間ではなく、「売買契約締結」の日から2年間瑕 疵担保責任を負う旨の特約であり、無効となる。
×イ 無効。瑕疵担保責任の内容は、損害賠償の請求と目的を達成できないと きの契約の解除である(民法566条1項)。設問は、民法に規定されていない 「修補請求をすることができる」という点は買主に有利であるが、「いかなる場 合でも契約の解除はできない」という旨の特約は、買主に不利であり、この部 分は無効となる。このような場合、特約の全体が無効となるのか、不利となる 一部だけが無効(契約の一部無効)となるのかは、特約をした趣旨などを判断 して決めることになる。特約が無効になった場合には、民法の規定による担保 責任を負う。
〇ウ 有効。瑕疵担保責任は、「隠れた瑕疵」について、売主が責任を負う。 「隠れた」というのは、「買主が気がつかなかったもので、かつ、その気がつか なかったことに過失がない」という意味である(判例・通説)。つまり、買主は、 瑕疵(欠陥)について、善意・無過失でなければならない。だから、買主が、瑕 疵を売買契約締結時に知っていた場合には、そもそも「隠れた瑕疵」ではなく、 瑕疵担保責任は発生しないということである。設問の特約は、この当然のこと を特約しているにすぎない。もちろん、有効である。
×エ 無効。瑕疵担保責任は、売主の無過失責任であり、「売主がその瑕疵に ついて何らの過失もない場合は、その責任を負わない」旨の特約は、買主に 不利であり、無効となる。 以上より、有効なものはウ一つであり、1が正解。
【問 41】 正解 2
〇ア 正しい。個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらか じめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、 本人に通知し、又は公表しなければならない(個人情報保護法18条1項)。 個人情報取扱事業者であるマンション管理業者に、この規定が適用される。
〇イ 正しい。「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集 合物であって、特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができ るように体系的に構成したもの(個人情報保護法2条2項1号)と、特定の個 人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政 令で定めるものである(同2号)。政令では、個人情報を一定の規則に従っ て整理することにより特定の個人情報を容易に検索することができるように 体系的に構成した情報の集合物であって、目次、索引その他検索を容易に するためのものを有するものとなっている(施行令1条)。管理組合の組合員 の氏名、電話番号等が記載されている組合員名簿が、「紙面で処理された 個人情報」であっても、個人情報保護法上の「個人情報データベース等」に該当する場合がある。
×ウ 誤り。マンション管理業者は、特定の組合員から当該本人が識別きれ る保有個人データの開示を求められたときは、原則として開示しなければな らない(個人情報保護法25条1項本文)。この場合、業者は、実費を勘案した 合理的な手数料を請求できる(個人情報保護法30条)。
×エ 誤り。「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報 に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別すること ができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人 を識別することができることとなるものを含む)をいう(個人情報保護法2条1 項)。映像や音声であっても、それによって特定の個人が識別できる場合には、 個人情報に該当する。
以上より、正しいものは、アとイの二つであり、2が正解。
【問 42】 正解 4
×1 誤り。AB間の賃貸借契約が機関の定めのないものであるときは、賃貸 人からの解約の申し入れは、6ヶ月前にしなければならず、しかも正当事由が 必要である。期間の定めがある場合には、賃借人は少なくとも、期間内は賃 借でき、期間が到来しても正当事由がなければ、期間が更新される(借地借 家法26条、27条、28条)。借地借家法は、賃借人を保護するため、これらの 規定に反する特約で、賃借人に不利なものは、無効とされる(借地借家法30 条)。Aが区分所有権を譲渡したときは、その時から6月後にAB間の賃貸借 契約は終了する旨の特約は、賃借人に明らかに不利であり、無効である。
×2 誤り。AB間の賃貸借契約の期間について1年未満の期間を定めた場合 は、その期間について無効であり、「契約期間1年の賃貸借」とみなされるので はなく、期間の定めのない賃貸借となる(借地借家法29条1項)。
×3 誤り。一度定めた賃料でも、一定の事情があれば、賃料の増減請求が認 められる(借地借家法32条1項本文)。しかし、AB間において、一定期間、賃料 を増額しない旨の特約をした場合、その定めに従う(同ただし書)。だから、特約 で定めた期間内は、当該賃料が不相当になったとしても、Aは増額請求をするこ とができない。一定期間賃料を「減額」しないという特約をしても、その特約は無 効であることに注意。
〇4 正しい。賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、 又は賃借物を転貸することができない(612条1項)。しかし、借地借家法では、 借地人保護のため、借地権の譲渡・転貸の場合に地主が承諾しない場合に、 裁判所による地主(賃貸人)の承諾に代わる許可の制度がある(借地借家法 19条1項、20条1項)。しかし、建物の賃借権の譲渡・転貸には、このような 制度はない。土地の場合ほど、その必要性はないからである。
【問 43】 正解 1
〇1 正しい。区分建物が属する一棟の建物が新築きれた場合における各区 分建物についての表題登記の申請は、当該建物に属する他の区分建物につ いての表題登記の申請と併せてしなければならない(不登法48条1項)。場合 によっては何百という表題登記をばらばらに申請されては、登記事務が煩雑 になるからである。
×2 誤り。所有権移転の登記(権利の登記)については、登記の申請義務は ない。一定の表題登記には、1ヶ月以内に登記する義務がある(不登法36条、 42条、47条1項、57条)。 表題登記は不動産登記簿の表題部なされる登記であり、不動産の物理的状 況が登記される。権利の登記は不動産登記簿の権利部(甲区と乙区があり、 甲区には所有権に関する事項が登記され、乙区には所有権以外の権利(抵当 権、賃借権、質権、地上権等)に関する事項が登記される)
×3 誤り。登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請を する場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請 人は、その申請情報と併せて「登記義務者」の登記識別情報(権利の登記名義 人であることを証明する情報。改正前の権利証に代わるもの)を提供しなければ ならない(不登法22条本文)。これは、あくまで、原則であり、例外もある(同ただ し書、23条)。また、相続や判決による権利の登記の申請は、権利者が単独で 申請でき(不登法62条、63条)、登記の識別情報の提供も不要である。
×4 誤り。同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定め がある場合を除き、「登記の前後」による(不登法4条1項)。そして、登記の前後 は、登記記録の同一の区にした登記相互間においては、順位番号により、別の 区にした登記相互間においては、受付番号による(不登法規則2条1項)。
【問 44】 正解 1
×1 誤り。成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないものは、 警備業を営んではならない(警備業法3条1号)。被補助人は入っていない。
〇2 正しい。学校や共同住宅等の「特定建築物」の建築をしようとするときは、 当該特定建築物を建築物移動等円滑化基準に適合させるための措置を講ず る「努力義務」が課せられているが(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促 進に関する法律16条1項)、「特別特定建築物」の政令で定める規模以上の建 築をしようとするときは、当該特別特定建築物を建築物移動等円滑化基準に適 合させる「義務」が課されている(同14条1項)。 〇3 正しい。国土交通大臣は、関係行政機関の長に対し、住生活の安定の確 保及び向上の促進に関する施策の実施状況について報告を求めることができ る(住生活基本法21条1項)。
〇4 正しい。法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従 業者が、その法人又は人の業務に関し本法に関する違反行為をしたときは、行 為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、罰金刑を科する(いわゆる両罰 規定である)(自動車の保管場所の確保等に関する法律18条)。
【問 45】 正解 4
×1 誤り。天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担に関する特約)に 関する事項は、37条書面の記載事項であるが、重要事項として説明する必要 はない。
×2 誤り。マンションの管理が委託されているときは、その管理の委託先(住所・ 氏名)を重要事項として説明する必要があるが、その管理委託契約の内容につ いては説明する必要はない(業法35条1項6号、規則16条の2第8号)。
×3 誤り。台所、浴室、便所その他の当該マンションの設備の整備の状況につい て、説明しな ければならないのは、宅建業者が建物の「貸借」の媒介(代理)を する場合である(業法35条1項14号、規則16条の4の3第7号)。売買の場合に は、説明不要である。
〇4 正しい。当該マンションが津波防災地域づくりに関する法律第53条第1項に より指定された津波災害警戒区域内にあるときは、その旨を説明しなければなら ない(業法35条1項14号、規則16条の4の3第3号)。
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