管理組合が法人化されている場合の法人の代表理事、法人化されていない場合の管
理者(規約で理事長が管理者となっている場合が多い)は、職務の執行について管理
組合に損害を与えた場合、マンション管理組合に損害賠償の責任を負う。

 理事長が管理組合の管理費等を横領したような場合が典型的な例である。あるいは、
大規模修繕工事について、工事業者と結託して理事長が裏金を受け取るような例もあ
る。これらの場合、管理組合は、その理事長に対して損害賠償の請求ができる。

 管理組合と管理組合の理事(監事も)とは、民法上の委任契約の関係に立つ。先の
横領の例や裏金の例は、明らかに委任契約上の受任者(理事側)の善良な管理者の注
意義務違反(善管注意義務)である。だから、行為をした理事長は、委任契約上の損
害賠償責任を負うことになる。

 このように、理事長は、業務を行うについて、善管注意義務に違反して、管理組合
に損害を与えれば、当然に損害賠償の責任を負う。しかし、実際には、先の例の場合
のように明らかに損害を与えたような場合を除いては、損害賠償の問題にしない。そ
れは、多くの場合、理事の選任が輪番制であり、理事長は理事の互選により選出され
るから、一々細かいことまで問題にしていては、明日はわが身だからである。

 それでは、理事長の横領とか、裏金とかの問題のときに、一般の理事の責任はどう
か。先に見たように一般の理事も管理組合とは、委任契約関係に立つ。理事に就任す
るということは、管理組合と委任契約関係に立つということだ。契約は契約書がなく
ても成立する。

 一般の理事は実際に横領したり、裏金をもらったりしたわけではないから、直ちに
責任を負うものではない。しかし、常に責任を負わないとは言えない。

 会社法においては、代表権のない取締役(平取締役)は、代表取締役の行為につき
監視義務を負うという判例がある。それは、委任契約の善管注意義務の現れである。

 同じような考えが管理組合にも適用される。一般の理事も、委任契約上の善管注意
義務を管理組合に対して負うのであるから、善管注意義務をもって、理事長の職務を
監視する義務がある。この監視義務に違反すると、一般の理事は、理事長とともに管
理組合に対して損害賠償の責任を負うのである。

 理事長の行為に疑いがあれば理事会の招集を求めたりして、その旨を指摘して止め
させなければならない。実際の問題において、その監視義務を怠ったかどうかの判断
は難しいが(争いがあれば最終的には裁判所に判断してもらうことになる)、理事長
の横領等について、一般の理事が全く責任を負わないというものではないのだ。

 ※一般社団法人エースマンション管理士協会のホームページhttp://acemansyonkanri.law.officelive.com/

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