不動産物権変動と登記⑥
記事投稿日2014年09月25日木曜日
投稿者:一般社団法人エースマンション管理士協会 カテゴリー: General
7 契約の解除と第三者
① 契約の解除前の第三者
Aが自己所有土地についてBと売買契約を締結し、さらにBが当
該土地についてCと売買契約をした後に、AがBの債務不履行を
理由に契約を解除した場合、A及びBは原状回復義務を負う(民法
545条1項本文)。ただし、第三者の権利を害することはできないと
される(同ただし書)。ということは、AB間の原状回復によって、Cの
権利(所有権)を侵害できないということである。ただし、判例は、C
は登記(対抗要件)がなければならないと解している。つまり、Cの
善悪は問わないが、登記をしていなければ保護されないという。こ
れも条文にないことを解釈で要件に加えているのである。
なお、Aが解除したときに、まだCが登記をしていなければ、Aは
登記をしていなくても、Cに優先するという考えが以前は有力だっ
たが、最近は、この場合でも、AとCは、先に登記をした者が優先
するというのが、通説のようである。あくまでも、登記を重視しよう
という考えである。平成13年度【問5】肢2。
先に見たAが契約を取り消しの場合にも、取消しの遡及効により(民
法121条)、当事者間では、原状回復義務を負い、それぞれ同時履行
の関係に立つことも解除と同じである。ただし、制限行為能力を理由に
取消した場合には、制限行為能力者は、現存利益を返還すればよい
という(民法121条ただし書)、原状回復義務の特例があることに注意。
② 契約の解除後の第三者
AがBとの土地の売買契約を解除した後に、BがCに当該土地を
売却した場合、AとCは、先に登記をした者が優先する(判例)。これ
は先に見た取消し後の第三者と全く同じことである。
平成13年度【問5】肢3
問題を解くときに注意してほしいのは、契約の取消し前に第三者か出
現したのか、取消し後に出現したのかをしっかりと見極めることである。
これが読み取れれば、後は、今まで見てきたことを当てはめるだけであ
る。解除の場合は、最近は、解除の前後を問わず、もっぱら対抗要件で
決するので、その差はなくなったといえる。
それから、時効と登記の場合も、時効完成前に出現した者と、時効完
成後に出現した者とは全く異なる扱いをしているので、問題文をしっかり
と読み取る必要がある。
以下は平成9年に出題された問題です。即答してほしい。これなどは
絶対に間違ってはならない問題である。
物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、
正しいものはどれか。
1 Aが、Bに土地を譲渡して登記を移転した後、詐欺を理由に売買契
約を取り消した場合で、Aの取消し後に、BがCにその土地を譲渡して
登記を移転したとき、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主
張できる。
2 DとEが土地を共同相続した場合で、遺産分割前にDがその土地を
自己の単独所有であるとしてD単独名義で登記し、Fに譲渡して登記
を移転したとき、Eは、登記なしにFに対して自己の相続分を主張でき
る。
3 GがHに土地を譲渡した場合で、Hに登記を移転する前に、Gが死
亡し、Iがその土地の特定遺贈を受け、登記の移転も受けたとき、H
は、登記なしにIに対して土地の所有権を主張できる。
4 Jが、K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効
の完成後に、Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき、Jは、
登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。
- 記事投稿者情報 ≫ 一般社団法人エースマンション管理士協会
- この記事へ ≫ お問い合わせ
- この記事のタグ ≫