2014年 8月の記事一覧
1 敷地利用権に対する区分所有者の一般的な持分割合については、区分所有法
に直接の定めはない。
建物の共用部分の共有持分については、その有する専有部分の床面積による
という規定がある(区分所有法14条1項)。しかし、建物の敷地又は共用部分以
外の附属施設が区分所有者の共有に属する場合には、共用部分の変更や管理
に関する規定(17条から19条)は準用しているが、その持分の割合の規定(14
条)などは準用していない(区分所有法21条)。だから、これらの持分の割合は民
法の規定が適用され、当事者が契約(合意)で決めない限り、その持分は平等と
推定される(民法250条)。
2 1で述べたことは、区分所有者が全員でマンションを建設し、それぞれ区分所有
建物を取得する場合、敷地権の割合について、区分所有法の一般的な定めがな
いから、各区分所有者の契約で決めればそれにより、契約で決めなければ平等
になるわけである。
区分建物と敷地の関係は、マンションの規模や敷地の利用関係等それぞれの
事情があり、共用部分の共有持分割合のように、区分所有法で一般的に規定す
るのは妥当でないという判断が働いているのである。
しかし、分譲業者がマンションを建てて一般に分譲する場合については事情が
異なる。この場合は、分譲前にあらかじめ敷地利用権の持分割合を定めておく
必要性が非常に高い。次の3でこのことについて見ることにする。
3 専有部分と敷地利用権が一体とされている場合において、区分所有者が数
個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、区
分所有法14条1項から3項までに定める割合によると定めている(区分所有法
22条2項本文)。つまり、この場合には、敷地利用権の持分割合は、その有す
る専有部分の床面積の割合によるとされている。
これは、マンションを建てた分譲主が、当該マンションを分譲する場合につい
て定めた規定である。
分譲業者がマンションを分譲するときに、その敷地利用権の割合が定まって
いなければ、分譲をするのに極めて不便である。また、敷地利用権の割合の
登記はマンションの登記の表題部にする必要があり、その表題登記の申請は
マンションが完成してから1ヵ月以内に分譲業者によってなされなければなら
ないことになっている(不動産登記法47条1項)。さらに、マンションの場合、表
題登記の申請は1棟の建物全部について一括してしなければならない(不動
産登記法48条1項)。この登記との関係でも、区分所有法22条2項のような規
定が必要である。
ただし、分譲業者は、公正証書によって定める規約で、この割合と異なる割
合を定めることができることになっている(区分所有法22条2項ただし書、32
条)。例えば、その規約で敷地利用権の割合を平等とすることができる(この
場合、100戸の分譲マンションであれば、各区分所有者は、区分所有する住
戸1戸につき1/100の共有持分を有するなどと規定される。)。
分譲マンションの買主は、自分の敷地利用権の持分割合がいくらになって
いるかを承知の上で購入できるわけである。
4 大多数のマンション管理規約では、敷地利用権の持分割合を、共用部分の
持分割合と同じように、専有部分の床面積の割合によるとされている。大多
数のマンションが分譲マンションだからである。管理規約の別表を見てほしい。
敷地利用権に対する区分所有者の一般的な持分割合については、区分所
有法に直接の定めはないということは、何度か管理業務主任者試験に出題さ
れているが(平成22年度問1の肢4等)、それはもちろん正しい。ただ、現実の
マンションは、ほとんどが分譲マンションであり、3で述べたようになっていると
いうことを理解してほしい。
夏の高校野球が始まった。毎年数回甲子園に行って観戦する。高校生の
ひたむきな姿を見ると元気をもらう。パワーをもらう。感動もする。
最近の高校生の選手宣誓は、昔と全然違う。我々の高校の頃は、選手宣
誓はほとんどが絶叫調だった。内容もほとんど同じ。最近は、内容も色々で、
聞いていて楽しい。感動的な宣誓もあった。
甲子園で活躍した選手たちがプロに進んで活躍するのを見るのも楽しいも
のだ。甲子園で活躍しても、プロではなかなか活躍できないという選手もいる。
プロの厳しさだろう。
今年は、第96回大会だが、甲子園ができてから90年という。その前に甲
子園以外の球場で大会が行われている。そして、大会が始まってから99年
目だそうだ。途中、戦争で中断しているからだ。
春の選抜大会は、故郷奄美大島の大島高校が初出場を果たした。感動し
た。夏は出場がかなわなかったが、また、近い将来甲子園にやってくること
を楽しみにしたい。
プロ野球もいよいよ佳境に入る。今年の阪神は、あまり期待していなかっ
たが頑張っている。この調子で最後まで楽しませてほしい。もちろん優勝し
てほしい。
BSでメジャーリーグの試合もよくみる。日本人選手が活躍するのをみる
のが特に楽しい。
野球は、本当に面白い!
1 危険負担とは、双務契約において、契約成立後に債務者の責めに帰すこと
ができない事由によって履行不能が生じた場合(例えば、建物の売買で建物
が地震で滅失場合)に、他の一方の負担する債務(例えば、買主の代金債務)
の運命はどうなるかという問題である。もし、他の債務(代金債務)も消滅する
なら、消滅した建物の引渡し義務を負う債務者(売主)が危険を負担するので、
債務者主義という。他の債務(代金債務)は存続するなら、消滅した債務の債
権者(買主)が危険を負担するので、債権者主義という。
2 例外としての債権者主義
民法は、債務者主義を原則としているが(民法536条1項)、特定物に関す
る物権の設定又は移転を目的とする双務契約においては(土地や建物の売
買契約や交換契約)、債権者主義を採用している(民法534条)。
例えば、建物の売買契約において、売主の責めに帰すことができない事由
によって建物が滅失し、又は損傷した場合、その滅失・損傷は債権者の負担
に帰する(民法534条1項)。
だから、売主は、建物が滅失した場合には、建物を引渡すことはできないが、
代金の全額を請求できるのである。建物が損傷した場合には、損傷した建物
を現状のままで、引き渡せば足り、代金は全額請求できる。
この特定物の売買等において債権者主義を採用したのは、原則として、売
買契約があれば、その時点で所有権が移転するから、買主は所有者として
危険を負担すべきであるからだとする。
なお、建物の二重譲渡や他人物売買については、まだ、目的物の支配が
債権者(買主)に移転していないので、原則の債務者主義を採用すべきだと
されている。
新品のテレビ・冷蔵庫等のような不特定物売買の場合、債務者が物の給
付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付す
べき物を指定したときから、債権者主義が適用される(民法534条2項)。
この危険負担の規定は任意規定であり、当事者の特約で変更できる。
なお、当然のことであるが、売買において、買主の債務が履行不能にな
るということはありえない。金銭債務は履行不能ということはないからであ
る。
ここで、土地や建物の売買契約における所有権の移転時期について見る
ことにする。
①原則として、契約と同時に所有権は移転する(判例・通説、民法176条)。
②例外として、当事者が所有権の移転時期を特約(代金の完済のときとか、
何月何日とか)したときは、その時に移転する。また、他人物売買の場合
には、その他人から所有権を取得するまでは所有権は移転しない。さらに、
未完成建物の売買契約においては、建物が完成するまでは所有権は移
転しない。
確認事項
(1) 危険負担は、建物が、売買契約成立後その引渡し前に、債務者(売
主)の責めに帰すことができない事由によって滅失・損傷した場合である。
債権者(買主)の責めに帰すべき事由による場合も含まれる。
(2) 建物が、売買契約成立後その引渡し前に、債務者(売主)の責めに帰
すべき事由で滅失・損傷した場合には、債務不履行(履行不能又は一部
履行不能)の問題となり、買主から契約の解除や損害賠償の請求ができる。
また、債務者(売主)の履行遅滞中に、不可抗力(地震や火災)で建物が
滅失又は損傷した場合には、遅滞中の不能として、債務者(売主)の責め
に帰すべきものとして、債務不履行の問題である。
(3) 建物が、売買契約締結前に滅失していた場合は、契約の目的物がな
くなっているので(原始的不能という)、契約は無効となる。契約締結上の
過失が問題となる。
(4) 建物が、売買契約締結前に損傷していた場合、目的物に原始的な一
部不能があるとして瑕疵担保責任の問題となる。
(3)の場合は、契約は無効となるが、危険負担、債務不履行、瑕疵担保
責任は、契約は有効とした上で、その後の法律関係についてそれぞれの
問題ごとに法的な処理を規定していることに注意すること。
3 停止条件付双務契約の特則
債権者主義が適用される双務契約が停止条件付であって(例えば、秋
に転勤すれば建物を売るという契約)、その条件が成否未定の間に建物
が「滅失」したときには、債権者主義は適用されない(民法535条1項)。
したがって、原則にかえって債務者主義が適用される。つまり、転勤にな
っても、売主は売買代金は取れないということになる。その条件が成否
未定の間に建物が「損傷」したときには、債権者主義が適用される(民法
535条2項)。したがって、転勤になれば、売主は代金の全額を請求でき
る。そして、損傷した建物はその状態で買主に引き渡さなければならない。
滅失と損傷とを異なって扱っていることに注意。
もちろん、条件が成就しなかったときは、契約は無効になるだけであり、
危険負担など問題にならない。
なお、535条3項は、債務不履行のことを規定しているだけであり、損
傷と滅失とで異なるものではない。
4 原則としての債務者主義
前2条に規定する場合(特定物に関する物権の設定又は移転を目的
とする双務契約と停止条件付双務契約の特則)を除いて、当事者双方
の責めに帰すことができない事由によって債務を履行することができな
くなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない(民法536
条1項)。
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなく
なったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない(民法536
条2項前段)。この場合には、当然に債権者主義である。
なお、債権者主義が適用される場合、債務者は、自己の債務を免れ
たことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければなら
ないとされている(民法536条2項後段)。当事者の公平を図ったので
ある。この規定は、前に述べた特定物に関する物権の設定又は移転
を目的とする双務契約において債権者主義が適用される場合にも、
準用される。
例えば、先の例で、建物が滅失した場合、債務者(売主)は、代金の
全額を請求できるが、売主は、建物をリホームして引き渡すという約束
があり、そのリホームを免れたような場合には、そのリホームに要した
であろう費用は、買主に償還しなければならないということである。
この原則としての債務者主義は、請負契約、賃貸借契約、委任契約
(有償の場合)等に適用される。
5 管理業務主任者試験の過去問
管理業務主任者試験でも、たまに、管理委託契約の危険負担の問
題が出題されているので、見てみよう。
平成22年度
【問 2】 マンションの管理組合A(以下本問において「A」という。)とマ
ンション管理業者(マンション管理適正化法第2条第8号に規定する者
をいう。以下同じ。)であるB(以下本問において「B」という。)との間で
管理委託契約が締結された場合に関する次の記述のうち、民法の規
定によれば、正しいものはどれか。
1 A及びBの債務が共に弁済期にある場合には、Aは、Bが委託業務
に係る債務の履行の提供前であっても、委託業務費の支払債務の
履 行を拒むことができない。
2 Bが、A及びB双方の責めに帰することができない事由によって委
託業務に係る債務を履行することができなくなったときには、Bは、A
に対して、委託業務費の半分の支払いを請求することができる。
3 Bが、Aの責めに帰すべき事由によって委託業務に係る債務を履
行することができなくなったときには、Bは、Aに対して、委託業務費
の支払いを請求することができる。
4 Aが、Bに対して、管理委託契約の解除の意思表示をした場合で
も、Aは、その意思表示を撤回することができる。
正解 3
×1 誤り。双務契約の当事者の一方は、双方の債務が弁済期にあ
る場合、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債
務の履行を拒むことができる(民法533条)。いわゆる同時履行の
抗弁権である。Aは、Bが委託業務に係る債務の履行の提供があ
るまでは、委託業務費の支払債務の履行を拒むことができる。
×2 誤り。契約当事者双方の責めに帰することができない事由で債
務の履行ができないときは、債務者は、反対給付を受ける権利を
有しない(民法536条1項)。Bは、Aに対して、委託業務費の支払
いを請求することができない。
〇3 正しい。債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行する
ことができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を
失わない(民法536条2項)。この場合には、Bは、Aに対して、委
託業務費の支払いを請求することができる。
×4 誤り。解除の意思表示は撤回できない(民法540条2項)。Aが、
Bに対して、管理委託契約の解除の意思表示をした場合には、A
は、その意思表示を撤回することができない。
この問題で、肢2と肢3が今まで見た危険負担の問題である。原則
としての債務者主義が適用される問題である。出題は極めて単純化
しているが、これを詳しく見ることにする。例えば、AB間で管理委託
契約を締結し、委託業務費を月100万円とし、その期間は1年間とし
たとする。
肢2について
① 当該マンションが、管理の開始日以前に地震で滅失した場合、
契約当事者双方の責めに帰することができない事由で債務を履
行(管理業務の履行)することができなくなっているので、債務者
主義により、Bは、委託業務費を一切請求できない(民法536条
1項)。
② 当該マンションが、管理を開始してから半年経って地震により滅
失した場合、もちろん、この場合も債務者主義により、Bは、将来
の半年分の委託業務費は請求できない(民法536条1項)。しかし、
既に管理した半年分の委託業務費(600万円)は当然に請求でき
るし、既に受領していれば返還する必要はない(民法648条3項)。
肢3について
① 当該マンションが、管理の開始日以前にAが何らの正当な理由な
く、当該マンションの管理をB以外の者に委託し管理をさせたため、
Bが管理業務の履行ができなくなった場合、この場合は、債権者
の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなっ
たのであるから、債務者(B)は、債権者主義により、反対給付を受
ける権利を失わない(民法536条2項前段)。ということは、Bは、
1年分の委託業務費(1,200万円)を請求できる。
ただし、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得た
ときは、これを債権者に償還しなければならないとされている(民
法536条2項後段)。したがって、Bは、1年間の管理に要する費
用を免れるわけであるから、その費用はAに償還しなければなら
ない。
② 当該マンションの管理を開始してから半年経ってから、Aが何ら
の正当な理由なく、当該マンションの管理をB以外の者に委託し管
理をさせたため、Bが管理業務の履行ができなくなった場合、この
場合も、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行するこ
とができなくなったのであるから、Bは、債権者主義により、残りの
半年分の委託業務費(600万円)をも請求できる(民法536条2項
前段)。
ただし、Bは、半年分の管理に要する費用を免れるわけであるか
ら、その費用はAに償還しなければならない(民法536条2項後段)。
継続的な契約の場合には、契約の途中で債務の履行が不可能に
なる場合があるので、この点を注意しながら、危険負担の問題を考
えなければならない。平成22年度の問題は、Bが管理業務を開始
する前に委託業務に係る債務を履行することができなくなった場合
として考えればよい。出題者もこの点を十分理解した上で、問題文
の作成をしてほしい。
なお、危険負担に関する規定(天災その他不可抗力による損害の
負担)は、任意規定であり、当事者間で特約して、民法の規定と異な
る定めをすることができる。この特約がある場合、重要事項(業法35
条)の説明事項ではないが、契約書面(業法37条)の記載事項であ
る(売買・交換・貸借も)。
1 民法の規定によれば、売買契約において売主が買主に対して負う担保責
任として、①瑕疵担保責任、②全部他人物の場合の責任、③一部他人物の
場合の責任、④数量が不足な場合(数量指示売買)又は一部が滅失してい
た場合の責任、⑤用益権による制限の場合の責任、⑥担保物権(抵当権・
先取特権)による制限がある場合の責任である。①は物に瑕疵がある場合
であり、②~⑥は権利に瑕疵がある場合である。
なお、ここでは、買主が悪意であっても、担保責任を追及できるものを指
摘しておく。これを覚えれば、それ以外は善意(瑕疵担保責任の場合には、
無過失も)でなければならないから、覚える必要はない。悪意でも追求で
きるのは、全部他人物売買の「解除」→ 全解、一部他人物売買の「代金
減額」→ 一代、抵当権付(担保)物件の売買の「全部=解除・損害賠償・
費用の償還」→ 担全、である。各自でゴロ合わせを作っておけば楽である。
2 ここからは、瑕疵担保責任に限定して見ていくことにする。まず、土地や
建物のような特定物売買に瑕疵担保責任が適用されることは問題ない。
新品のテレビ・冷蔵庫等のような不特定物の売買にも瑕疵担保責任が適
用されるかについては、争いがある。瑕疵担保は債務不履行とは別個の
法定責任だとして、特定物売買に適用されるとするのが、通説のようだ。
この説によると、不特定物に瑕疵があるときは、債務不履行の不完全履
行となる。他方、瑕疵担保責任は、債務不履行(不完全履行)の一種とし
て、不特定物にも適用されると考える説もある。判例は、色々あるようだ
が明確にどちらの立場だと確定していないように見える。つまり、「法定
責任」とか「債務不履行」だとか言わずに、その都度それぞれの規定を適
用して妥当な判断をしているのである。
我々としては、土地や建物の売買(特定物売買)を念頭において考えれ
ばよい。いずれの説によっても、特定物売買には、瑕疵担保責任の規定
が適用されるからだ。
瑕疵担保責任が発生する場合、買主に要素の錯誤がある場合がある。
この錯誤の規定との関係についても、争いがある。買主は、いずれかを
選択して主張できるとする説や、瑕疵担保責任が適用される以上、錯誤
の規定は排斥されるとするものもある。しかし、判例は、要素の錯誤ある
場合、瑕疵担保責任の規定は排斥されるとするものもある。
出題者は、このように争いがあり、必ずしも判例が確定していない問題
については、これらの争いのある問題に踏み込まずに解答ができるよう
に問題を工夫して作成してもらいたい。
3 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用す
る。ただし、強制競売の場合には、この限りではない(民法570条)。566
条の規定は、1で見た⑤の用益権による制限の場合の責任に関する規
定である。だから、売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、売買の
目的物が用益的権利によって制限されている場合と同様、買主は、その
瑕疵によって契約の目的を達成できないときには、契約を解除し、かつ、
損害賠償の請求ができる。そうでないときには、損害賠償の請求だけを
することができる。
契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が瑕疵を発見したときから1
年以内にしなければならない(民法566条3項)。
(1) 瑕疵とは、通常物質的な欠陥があることである。欠陥があるかどうか
は、一般に目的物が通常有すべき品質を備えないことであるが、売主が
見本や広告により特殊の品質・性能を有すると示したときは、その特殊
の標準によってこれを定める。
(2) 売買の目的物に法律的な瑕疵がある場合、例えば、買い受けた土地
が都市計画法の規定によって建物が建築できないような場合についても、
判例・通説は瑕疵担保責任の問題として処理している。
(3) 瑕疵が「隠れた」ものであることが必要である。その意味は、取引界で
要求される普通の注意を用いても発見されないものである。いいかえれ
ば、買主が瑕疵を知らず、かつ、知らないことに過失がないことである。
つまり、買主は善意・無過失でなければならない(判例・通説)。
民法570条で準用する民法566条1項の規定には、「買主がこれを知
らず」とあり、善意しか要求していないが、瑕疵担保責任には、この部分
は準用されないのである。
だから、一般的な標準からいって発見し得ない瑕疵でも、買主が特に
知っているときは(又は知らないことに過失があるとき)、瑕疵担保責任
は生じない。
(4) 売主は、無過失の責任を負う。
(5) 買主は、瑕疵を発見した時から、1年以内に契約の解除や損害賠
償の請求をしなければならない(民法566条3項)。その間に必ずしも
訴えをする必要はなく、担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げれ
ば足りる。
なお、この場合、消滅時効に関する民法167条の規定の適用もあ
る。したがって、買主が、目的物の「引渡しを受けた時」から、10年を
経過すると、瑕疵担保責任の追及は消滅時効によって消滅する。そ
の間に瑕疵を発見できなかったときでも、10年の経過により担保責
任の追求権が時効消滅するのである。解除権(形成権である)は、債
権ではないが、ここでは、債権と同様10年で消滅すると解されている。
(6) 民法は、強制競売の場合にも、一定の制限の下に、担保責任を認
めている(民法568条)。しかし、瑕疵担保責任は、強制競売の場合に
は認められない(民法570条ただし書)。民法は強制競売(強制執行
の一つの方法として、民事執行法に基づく競売)とあるが、任意競売
(抵当権等の担保権の実行としての競売)も含まれていると解されて
いる(判例・通説)。
4 瑕疵担保責任を負わない旨の特約の効力
瑕疵担保責任に関する規定は任意規定であり、特約の効力は有効で
ある。ただし、売主は、「知りながら告げない事実」については、その責任
を免れない(民法572条)。その他、「自ら第三者のために設定し又は第
三者に譲り渡した権利」についても担保責任を負わないが、それは権利
の瑕疵についてのものであり、瑕疵担保責任では考える必要はない。
5 宅建業法の問題
宅建業法では、「売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合」、瑕
疵担保責任の追及期間を「目的物の引渡しの日から2年以上」とする特
約をする場合を除いて、民法の瑕疵担保責任より、買主に不利な特約を
してはならない(業法40条1項)。不利な特約をすれば、その特約は無効
となる(業法40条2項)。
目的物の引渡しの日から2年以上とする特約を除いて、買主に不利な
特約は無効としている。ということは、目的物の引渡しの日から2年以上
とする特約は、例え買主に不利であっても有効になるということである。
何の特約もないときは、引渡しから2年目に瑕疵を発見した場合、買主
は、その時から1年間(引渡しから3年間)は瑕疵担保責任を追及でき
る。ところが、瑕疵担保責任を負う期間を2年間と特約したとしよう。こ
の場合には、買主が引渡しから2年目に瑕疵を発見した場合でも、引
渡しから2年経過しているので、買主は瑕疵担保責任を追及すること
ができなくなる。この特約は、民法の規定よりも買主に不利になること
があっても、有効としたのである。
買主が、引渡しから間もなく瑕疵を発見したときは、目的物の引渡し
の日から2年間とする特約は、買主に有利であることはいうまでもない。
6 平成25年度の管理業務主任者試験
【問 40】 宅地建物取引業者A(以下、本問において「A」という。)が、宅
地建物取引業者でないB(以下、本問において「B」という。)に対し、中古
マンションを売却した場合における瑕疵担保責任についての特約に関す
る次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定によれば、有効
なものはいくつあるか。
ア 「売主Aは、買主Bとの売買契約締結の日から2年間瑕疵担保責任を
負う」旨の特約
イ 「瑕疵がある場合、買主Bは損害賠償請求と瑕疵の修補請求をするこ
とができるが、いかなる場合でも契約の解除はできない」旨の特約
ウ 「売主Aは、買主Bが売買契約締結当時に知っていた瑕疵については、
その責任を負わない」旨の特約
エ 「売主Aは、その瑕疵についてAに何らの過失もない場合は、その責任
を負わない」旨の特約
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
正解 1
×ア 無効。設問は、引渡しの日から2年間ではなく、「売買契約締結」の日
から2年間瑕疵担保責任を負う旨の特約であり、無効となる。
×イ 無効。瑕疵担保責任の内容は、損害賠償の請求と目的を達成できな
いときの契約の解除である(民法566条1項)。設問は、民法に規定され
ていない「修補請求をすることができる」という点は買主に有利であり、
この点は有効である。しかし、「いかなる場合でも契約の解除はできない」
という旨の特約は、買主に不利であり、この部分は無効となる。特約の一
部無効である。
〇ウ 有効。瑕疵担保責任は、「隠れた瑕疵」について、売主が責任を負う。
「隠れた」というのは、「買主が瑕疵らついて気がつかなかったもので、
かつ、その気がつかなかったことに過失がない」という意味である(判例・
通説)。つまり、買主は、瑕疵(欠陥)について、善意・無過失でなければ
ならない。だから、買主が、瑕疵を売買契約締結時に知っていた場合に
は、そもそも「隠れた瑕疵」ではなく、瑕疵担保責任は発生しないというこ
とである。特約は、この当然のことを特約しているにすぎない。
もちろん、有効である。
×エ 無効。瑕疵担保責任は、売主の無過失責任であり、売主に瑕疵につ
い過失がなければその責任を負わない旨の特約は、買主に不利であり、
無効となる。
以上より、有効なものはウ一つであり、1が正解。
ア、イ、エは、売主の瑕疵担保責任は成立するが、特約が買主に不利な
特約があり、その特約は無効になるというものである(業法40条)。無効な
部分は、特約がなかったものとして、民法の瑕疵担保責任が適用される。
ところが、ウは、そもそも瑕疵担保責任が成立しないという民法の規定を
確認的に特約するものであり、宅建業法40条の問題、つまり、瑕疵担保責
任は成立するが、買主に不利な特約であるから無効、有利であるから有効
という問題ではないことに注意すること。
なお、瑕疵担保責任の特約がある場合、それは重要事項(業法35条)
の説明事項ではないが、売買・交換の場合には、契約書面(業法37条)
の記載事項である。