2014年 7月の記事一覧

«Prev1Next»
14年07月14日 17時35分05秒
Posted by: mansyonkanrisi

1 マンション管理適正化法では、管理業者は、修繕積立金その他国土交通
 省令で定める財産については、整然と管理する方法として国土交通省令に
 定める方法により、自己の固有財産及び他の管理組合の財産と分別して管
 理しなればならないとしている(適正化法76)。極めて簡単な規定である。
  これを受けて、国道交通省令では、国土交通省令で定める財産として、
 理費用に充当する金銭又は有価証券としている
(適正化法施行規則87
1
 項)。したがって、財産管理の対象となるのは、修繕積立金や管理費に充

 する金銭又は有価証券ということになる。
  そして、修繕積立金や管理費(以下修繕積立金等という)が有価証券で
 れば、金融機関等に、当該有価証券(受託有価証券)を自己の固有財産

 び他の管理組合の財産である有価証券の保管場所と明確に区別させ、か
 つ、当該受託有価証券が受託契約を締結した管理組合の有価証券である
 こ
とが判別できる状態で管理させる方法をとらなければならない(適正化法
 施
行規則8722)。有価証券についての規定は、これだけであり、極
 めて簡単である。

2 問題は、修繕積立金等が金銭である場合の管理である。これについて規
 則で詳しく規定している。以下のイ、ロ、ハの三つの方式を定めている。
 ① イ方式
   区分所有者から徴収された修繕積立金等を「収納口座」に預入し、そ
   月分の「管理費用」を控除した残額を翌月末までに「保管口座」に移
し換
   え、「保管口座」で預貯金として管理する
(施行規則8721
)

 ② ロ方式
   区分所有者から徴収された「修繕積立金」は直接「保管口座」に預入し、
  預貯金として管理され、「管理費」は、一旦「収納口座」預入し、
その月分
  の管理費用を控除した残額を翌月末までに「保管口座」に移し
換え、「保
  管口座」で預貯金として管理する
(施行規則8721号ロ)
   イ方式との違いは、修繕積立金は、直接保管口座に預入されることで
  
ある。

 ③ ハ方式
   区分所有者から徴収された修繕積立金等を「収納・保管口座」に預
  し、その「収納・保管口座」で預貯金として管理する
(施行規則872

  1号ハ)
   管理費用もこの口座から拠出するわけである。

 確認事項
 ア 「収納口座」の名義は管理業者でもよい(施行規則8761)
 イ 「保管口座」と「収納・保管口座」の名義は管理組合等でなければなら
  ない(施行規則8762号、3)
 ウ 「収納口座」が管理組合等名義である場合でも、印鑑等(印鑑とカー
  ド等)を管理業者が管理することができる(施行規則8732号、4
  参照)
 エ 「保管口座」と「収納・保管口座」の印鑑等を管理業者は管理できない
  (施行規則874)
   一定の短い期間(管理者が選任されるまで)の例外はある。
 オ 通帳はいずれの通帳でも、管理会社が保管できる。

3 管理会社が保証契約を締結しなければならないのは、どういう場合か。
  マンション管理会社は、上のイ、ロの方式の場合、保証契約を締結しな
 ければならないが、次の場合にはその必要がない。
  ①修繕積立金等が「管理組合名義」の「収納口座」に直接預入される場
 合又はマンション管理業者(委託業者も含む)が修繕積立金等を徴収しな
 い場合で、かつ、②管理業者が、管理組合等を名義人とする「収納口座」
 の印鑑等を管理しない場合である(施行規則第8731号、第2号)。

  テキストなどでは、上のように、条文の通り記載している場合が多く、
 れを見て、すぐに理解するのは困難である。
  要するに、管理業者名義の収納口座ではなく、また、集金代行業者等を
 介さずに修繕積立金等が組合員から直接管理組合等名義の収納口座に
 預入
(通常は振り替え)されて、かつ、管理業者が管理組合等名義の印鑑
 等を
管理しない場合には、保証契約は不要である。

 逆に、保証契約が必要な場合は次のイ、ロ、ハである。
 イ 収納口座が管理業者名義であれば保証契約が必要。
 ロ 収納口座が管理組合等名義であっても、管理業者が印鑑等を管理す
  る
場合には、保証契約が必要。
 ハ 収納口座が管理組合等名義で、管理業者が印鑑等を管理しなくても、
  管理業者が管理費等の収納事務を集金代行業者に再委託する場合に
  は、
保証契約が必要。
  このハがあるため、ちょっと複雑になっているのである。

  以上の三つの場合には、管理業者や収納代行業者が、一時的にでも、修
 繕積立金等を実質的に支配しており、管理組合の支配が及ばないので、管
 理組合を保護するために、管理業者に保証契約を求めたのである。
  「保証契約が必要」というのは、管理業者が破産等した場合に、収納口
 にある金銭を管理組合が失うおそれがあるので、管理業者に代わって保

 人がそれを保証するためである。管理業者は、一般社団法人マンション

 理業協会(管理業務主任者試験の実施団体である)等と保証契約を締結

 なければならないのである。
  
なお、保証額についてみると、イ方式の場合は、管理費と修繕積立金の
 
1ヶ月分以上の金額。ロ方式の場合は、管理費の1ヶ月分以上の金額であ
 
る。要するに収納口座には、1ヶ月分以上は金銭が残っていないことを前
 提にしているのである。
  1ヶ月分以上というのは、国土交通省総合政策局不動産課長の「関係業
 界団体の
長」あての通達によると、「収納口座」に必要最小限度の剰余金
 を管理組合
の承認で残すことが認められる。その必要最小限度の剰余金
 を想定したも
のであり、2ヶ月分や3か月分という意味ではない。

4 マンション標準管理委託契約書の別表第1について
  1(2)の出納について、4種類が規定されている。

  第1は、保証契約を締結して甲の収納口座と甲の保管口座を設ける場合
 ④ 甲(管理組合)の経費の支払いとして、乙(管理業者)は、甲の収支予算
 に基づき、甲の経費 を甲の「承認の下」に甲の収納口座から、又
は甲の
 「承認を得て」甲の保管口座から支払うとある。
  ここでは、「承認の下」にと「承認を得て」と表現を使い分けしていることに
 注意してほしい。「承認の下」にというのは、既に事前に支払いの承諾
があ
 り、支払いの都度の承認は必要でないということである。これに対して、
「承
 認を得て」というのは、支払の都度承認が必要ということである。
  ここでは、「保証契約を締結して」甲の収納口座と甲の保管口座を設ける
 
場合であるので、収納口座の印鑑等を管理業者が管理している場合であ
 り、
印鑑等を預けた時点で既に支払いの承認を与えているから、収納口座
 から
の支払は「承認の下に」としている。保管口座からの支払いは、その
 都度
の承認が必要であり、「承認を得て」支払う必要がある。

  第2は、乙の収納口座と甲の保管口座を設ける場合
  この場合について、第1みたいに保証契約を締結しという文言はないが、
 先に見たように、この場合には当然に保証が必要である(①、四を見れば
 明
らかである)
  ④ 甲の経費の支払いとして、「乙は、甲の収支予算に基づき、甲の経
 費
を甲の「承認の下」に乙の収納口座から、又は甲の「承認を得て」甲の
 保管
口座から支払う」とある。この場合には、乙の収納口座名義であるの
 で、乙
の名義を許した時点で、支払いの承認があるので、「承認の下」に
 乙の収納
口座から支払うとある。

  第3は、保証契約を締結する必要がないときに甲の収納口座と甲の保
  管
口座を設ける場合
  ④ 甲の経費の支払いとして、「乙は、甲の収支予算に基づき、甲の経
 費
を甲の「承認を得て」、甲の収納口座又は甲の保管口座から支払う」と
 ある。
  この場合には、保証契約を締結する必要がないときとあるので、管理業
 者
が収納口座の印鑑等を管理していないので、収納口座についても、甲
 の「承
認を得て」、支払いをしなければならないのである。

  第4は、乙の収納・保管口座を設ける場合
  この場合には、保証契約は必要でない。
  ④ 甲の経費の支払いとして、「乙は、甲の収支予算に基づき、甲の経
 費
を甲の「承認を得て」、甲の収納・保管口座から支払う」とある。この場
 合
には、印鑑等を管理することはできないから、「承認を得て」支払うこと
 に
なる。

 確認事項
 ① 「保管口座」と「収納・保管口座」からの支払いは、必ず、「承認を得
  て」である。
 ② 管理会社名義の収納口座からの支払いの場合には、「承認の下に」
  であ
る。
 ③ 管理組合名義の収納口座からの支払いは、保証契約を締結してい
  るか
否かによって(つまり、収納口座の印鑑等を管理業者が管理して
  いるか
否かによって)、「承認の下に」か「承認を得て」かが決まる。
 ④ 管理業務主任者試験 平成23年度【問13】参照。

5 乙が管理費等の収納事務を集金代行業者に再委託する場合につい
 ては、別
表第1の1(2)関係コメントに規定がある。
  この場合は、甲の組合員の口座から収納代行業者の口座に振り替え、
 収納
日の〇営業日後に「集金代行業者の口座から甲の収納口座に収
 納し」、④の業
務(甲の経費の支払い)を行った後その残額を、保管口
 座に移し換えることにな
っている。つまり、組合員から直接管理組合の
 収納口座に振り替えるのでは
なく、組合員から一旦集金代行業者の口
 座に振り替えて、そこから、管理組
合の収納口座に収納し、管理組合
 の支払いが行われる。
  この場合には先に見たように、管理業者が収納口座の印鑑等を管理
 しなく
ても、保証契約は必要である。
  そして、管理業者が、甲の収納口座から甲の経費を支払う場合、「承
 認の下
に」か「承認を得て」かは、管理業者が、甲の収納口座の印鑑等
 を管理して
いるか否か決まるものと思われる。

14年07月10日 15時20分21秒
Posted by: mansyonkanrisi

 法人には、会社(株式会社、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社))、
社団法人(公益と一般に分かれる)、財団法人(公益と一般に分かれる)、学
法人、宗教法人、独立行政法人、管理組合法人等多数ある。
 宅建業法では、「法人の役員」について規定している条文がある。役員と言
ても、法人によってその名称は様々である。理事・監事・取締役・監査役等
である。そこで、宅建の試験では、ほとんど会社、特に株式会社についての
題であるので、ここでは、「株式会社の役員」について見ることにする。

 株式会社の役員とは、取締役、会計参与、監査役をいう(会社法3291項、
会社法施行規則234号)。取締役は1人以上必要である。取締役には、
表取締役、取締役(代表権のない平締役)、社外取締役などがある。監査役
は置
かなくてもよい会社があり、会計参与を置くことは、原則として任意である。
 従来は、株式会社の役員と言えば取締役と監査役だったが、会計参与が加
わった。
会計参与は、公認会計士や税理士等でなければならず、取締役など
と共同して、
計算書類等を作成する。また、取締役の不正行為等を発見したと
きは、株主等に
報告しなければならないとされている。宅建業法上は、会計参
与の取扱いは、監
査役と同じように考えればよい。

 それでは、以下宅建業法の規定について見ることにする。

 第一に、宅建業の免許の申請書に記載すべき事項として、「法人である場
においては、その役員」(業法412)とは、いったい誰のことか。ここ
でいう役員とは、株式会社の場合、取締役のみならず、監査役や会計参与を
いてあれば、それらの者も含まれ、常勤、非常勤を問わないと解される。ま
た、
業者名簿の記載事項である「法人である場合においては、その役員」(
8
23)も同じように解される。これらについて、役員について何らの制
限も
していないので、会社法の規定にしたがって、役員を考えればよい。

 第二に、免許の基準で、①不正の手段で免許を受けたとき、②業務停止処
に該当するが、情状が特におもいとき、③業務停止処分に違反したときの3
の理由で免許を取り消された法人の場合、その法人のみならず、取消しに
係る
聴聞の期日及び場所の公示日前60日以内に「当該法人の役員」であっ
た者も、
取消しの日から5年間は免許の欠格である(業法512)とする
場合の役
員とは、誰のことか。
 この場合には、条文で、役員として、かっこ書で、業務を執行する社員、取
締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問、その他いかなる
称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役
又は
これに準ずる者と同等以上の支配力を有する者と認められる者を含むと
してい
る。
 業務を執行する社員とは、持分会社等において用いられている(会社法591
条等)

 株式会社に限定して考えれば、ここでいう役員とは、取締役と会社法の改正
により追加された「執行役」のことである。会社法の改正に合わせて宅建業法
512号も改正されたのである。執行役は、委員会設置会社において、取
締役会の意思決定に基づいて業務執行を担当する役員のことをいう。そして、
任期はだいたい1年であり、いつでも、取締役会で解任できる(会社法402条、
403)。執行役を置いた場合には、これも役員と解されている。
 そして、宅建業法512号でいう役員とは、取締役と執行役のことであり、
「監査役」というだけでは、含まれない。ただし、相談役、顧問、その他い
かな
る名称を有する者であるかを問わず、取締役や執行役と同等以上の支配力
を有する者と認められる者を含むとされているから、監査役であっても、会社
の業務を実質的に支配する者であれば、役員となることに注意する必要があ
る。
 要するに、「ここでいう役員」は、名称にかかわらず、取締役等と同等以上の
配力を有する者である。
 ここでいう役員の解釈は、「法人の役員」が欠格であれば、法人に免許を与
ないとする規定(業法517)、取引主任者の登録の欠格要件である
業法
1814号の「法人の役員」、「法人の役員」が不正行為等をした場合
に、法
人に業務停止処分を命ずることができるとする規定(業法6527
)、法人
の役員が一定の欠格事由になった場合には、法人の免許を取り
消さなければな
らないとする規定(業法6612号、3)において共通で
ある。
 なお、法人の合併や廃業の場合に届出をする者は、「代表する役員」とあり
(
11125)、株式会社の場合には、代表取締役(合併の場合は、
代表
取締役であった者)である。

 第三に、宅建業者本人・法人の場合はその役員が取引主任者である場合に
は、
その者が自ら主として業務に従事する事務所等においては、その者は、そ
の事
務所等に置かれる成年者である専任の取引主任者とみなす(業法152
)とい
う場合の「法人の役員」については、この場合にも、条文で、役員として、
っこ書で、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をい
としている。
 株式会社に限定すると、ここでいう役員は、取締役、執行役である。そして、
ここでは、「専任」であるから、事務所等に常勤する者であり、非常勤の者は
含まれない。また、監査役は常勤であっても含まれない。

 
第四に、「業務に従事する者」とあり、条文には「役員」という言葉を使って
いないが、この業務に従事する者に、法人の役員が含まれるかという問題
がある。
① 事務所に置かれる専任の取引主任者の数は、宅建業者の業務に従事
 する者の
数に対する取引主任者の数の割合が5分の1以上となる数とす
 る
(業法151
項、施行規則63)。この規定による「業務に従事する者」
 とは、役員、一般
管理部門(総務・経理等)、受付・秘書・運転手等の補助
 的な業務に従事する者
も含まれるが、一時的なパートタイム労働者やアル
 バイト等は含まれない。取
引主任者の数を決めることになるので、一時的
 な者を一々加えると、法的な安
定性を欠くからである。
  株式会社の場合、「ここでいう役員」とは、常勤の取締役等をいい、非常
 勤の
取締役等は含まれない。
  「監査役」は常勤であっても含まれないと解されている。監査役は、その
 役
割から取締役、支配人、使用人等を兼ねることができず(会社法335)
 ここに入れるべきではないからである。第三についても同じ理由である。

 他業と兼営する場合については、少し細かくなるが、この際書いておくこと
にする。あくまでも通達
等によるものであり、実務の場合には、直接自治体
の担当者に相談してくださ
い。
 他業と兼業の場合には、受付・秘書・運転手等の補助的な業務に従事する
は含まれないとされる。また、宅建業を主として営む者については、全体を
括する一般管理部門(総務・経理等)の職員も従事者に含まれるが、他業
が主
であるときは、一般管理部門の職員は従事者に含まれない。
 株式会社の取締役の場合、代表取締役は含まれるが、平取締役の場合は、
建業のみの担当取締役は含まれるが、そうでないときは、会社が主として
宅建
業を営むか否かによって、また、取締役の担当業務の比重によって、そ
れぞれ
業務に従事する者に含まれるか否かが決まる。非常に複雑であるの
で、宅建試
験では出ないと思われる。

② 業者は、従業者に、従業者証明書を携帯させなければ、その者をその業
 務に
従事させてはならない(業法481)。また、業者は、その事務所ごと
 に、
従業者名簿を備えなければならない(業法483)。ここでいう従業者
 は、
①よりも広く解されており、非常勤の役員、一時的なパートタイム労働者
 やア
ルバイト等も含まれると解されている。
  株式会社の場合、「ここでいう役員」とは、常勤・非常勤の取締役等をいい、
 ここでも、監査役は含まれない。

14年07月02日 18時16分40秒
Posted by: mansyonkanrisi

 年齢20歳をもって、成年とする(民法4)。だから、民法上未成年とは、
20歳未満の者ということになる。20歳の誕生日の前日(午前12時)まで
が未成年者である。
 しかし、20歳未満でも、婚姻(結婚)すれば、成年に達したものとみなさ
れる(民法753)。いわゆる婚姻による成年擬制である。だから、この者
は、
成年者とみなされるので、未成年者ではない。これは、私法(民法)上
の取引
関係等において成年とみなされるのであり、公職選挙法では、日本
国民で年齢
満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権
を有する
(同法9)
とあり、20歳未満の者は、例え結婚していても、選挙
権はない。地方議員の
選挙でも同様である。そもそも公職選挙法では成年
とか未成年とかの概念を使
用していない。

 未成年者には、2種類ある。特に宅建業法の「免許」の欠格要件のところ
「取引主任者の登録」の欠格要件のところで使われている。
 第一は、営業に関し成年者と同一の行為能力を「有しない」未成年者であ
(業法516号、1811)。この未成年者の名義で免許を受けよ
うと
する場合、本人に欠格要件があれば免許を受けられないのは当然であ
るが、本
人に欠格要件がなくても、法定代理人(親権者か未成年後見人)が
欠格であれ
ば免許を受けることができない(業法516)。このような未
成年者の財
産的な行為については、法定代理人の同意がなければ完全に
有効な法律行為は
できないし、法定代理人は、このような未成年者の財産
的な法律行為について
当然に代理権があるからである。つまり、名義は未
成年者であっても、法定代
理人の意思に反して未成年者は何もできないの
で、このような未成年者の免許
については、法定代理人が欠格であれば、
認めないとしたのである。
 また、この未成年者は、取引主任者の登録を受けることができない(業法
18
11)

 第二は、営業に関し成年者と同一の行為能力を「有する」未成年者である。
民法6条1項で、一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に
関し
ては、成年者と同一の行為能力を有するとある。この営業許可を得た
未成年者
のことである。この営業許可は法定代理人が行う(民法62項、
823条、857
)。この未成年者は、許可された営業に関しては、成年者と
同一の行為能力
を有するので、例えば、法定代理人から宅建業の営業許
可を得た未成年者は、
宅建業に関しては、成年者と同じ扱いになるので、
免許の欠格は、その未成年
者のみで判断する。また、取引主任者の登録
も、成年者と同じ扱いになる。だ
から、宅建業法では、「成年者と同一の行
為能力を有する未成年者」について
は、ことさら規定していないのである。
要するに成年者に関する規定がそのまま適用されるからである。

 
なお、テキストや問題の解説などで、婚姻した20歳未満の者を、この営
に関し成年者と同一の能力を有する未成年者に当たると説明している
ものがあ
るが、全くの間違いであることがわかると思う。この者は成年者と
みなされる
ので、あらゆる営業に関し、単独でできる。結婚して成年者とみ
なされるので、
この者の法定代理人は当然に消滅する。この者には、親権
者とか未成年後見人
というものはなくなる。
 これに反して、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者は、
くまでも未成年者であり、ただ、法定代理人から営業許可を受けた営業に
関し
ては、成年者と同一の能力を有するだけである(営業の許可を受けた
営業に関
しては、法定代理人の同意権や代理権は消滅する)。だから、こ
の者には、法定
代理人が存在し、営業許可を受けていない分野の財産行
為については、法定代
理人の同意がなければ、取り消すことができるし、
法定代理人が代理して行う
こともできるのである。

«Prev1Next»