癸(き、みずのと)は、十干の10番目、最後に位置しますが、陰陽五行説では水性の陰に割り当てられており、
水の兄が壬(みずのえ)で、癸が弟にあたります。

許慎の『説文解字』には、「水四方より流れて地中に入るの形に象(かたちど)る」とし、
「冬時、水土平らかにして、揆度(きたく)すべきなり」と説明しています。
五行では木は春、火は夏、金は秋、水は冬にあたります。
冬期、林の木樹は葉を落とし見渡し易く、水も土中に入って、林の中の計測はしやすくなるものです。
揆度(きたく)とは、はかる、計測するという意味です。

魏の張揖の著した、『廣雅』という辞書の釈言篇に「癸は揆なり」とあり、『史記』の律書篇にも
「癸は揆なりで、万物は揆度することが出来るという意味だ」とあります。
このように癸には測るという意味があり、揆策(計画)・百揆(もろもろの計画)・
首揆(国の計画を主宰する首相)等の熟語があります。
あまり目にしない熟語ですね。^^;

揆のついた熟語を思い浮かべるなら、江戸時代の「一揆」かしら?
言葉をひっくり返して、反対にすれば「揆一(きいつ)」という熟語があります。

「揆一」とは天下を治める道が同一であるという意味で、『孟子』に、「先聖後聖その揆一なり」とあります。
また後漢の班超の『王命論』には、「天に応じ、民に順うに至ればその揆一なり」とあります。
応天順民の政治が行なわれるならば、民心が一つに纏まって、政道も一途出るという意味ですね。

しかし、天意に逆らい、民心に反する政治を行って民衆が苦しむ時は、民衆が団結・反抗するのが一揆です。
一向一揆・百姓一揆の語のある所以ですね。

このように癸には、はかる(測る・図る・計画する・道・法則)という意味があり、癸の字は「揆」(はかる)につながり、
植物の内部にできた種子が大きさを測れるまで大きくなった状態として、10番目に宛てられたといいます。

巳は「シ」「やむ」とも読まれ、原義は胎児の姿を表す象形文字です。
蛇が冬眠から覚めて地表にはい出した姿を表すともされ、従来の生活に終わりを告げると言う意味を持ちます。
蛇は天地創造の昔から、知恵、財産をもたらす神様として、信仰の対象になっていますね。
陰陽五行では陰の火にあたり、人の心を温め、安らぎを与え、暗夜の中で光明となる灯火です。

さても歴史は繰り返すとか?
巳年に起こった歴史を、振り返ってみましょう。

1905年:日露戦争終結(ポーツマス条約)
1917年:ロシア社会主義革命
1929年:世界大恐慌の始まり
1941年:太平洋戦争開戦(国内では、開門トンネルの開通)
1953年:ソ連首相スターリンの死去による暴落(国内では、吉田内閣のバカヤロー解散)
1965年:米軍が北ベトナムへ爆撃開始(国内では、名神道路の開通)
1977年:有珠山噴火
1989年:ベルリンの壁撤去開始、昭和天皇の崩御(平成天皇の時代へ)
2001年:21世紀の始まり アメリカ同時多発テロ

12年ごとにくる巳年には、世界規模で歴史の変化があるようですね。
社会も個人も、何かが行き詰ると「心機一転」のエネルギーが働き、歴史は動くようです。

癸の意味する種子の中で測れるほどに生育しているモノと、巳の意味する胎児と止むモノとは?
不吉不幸なモノは止め、吉兆幸福の因は誕生を図り、この癸巳年が、世にも個人にも良きスタートとなりますように。