大犯土(おおつち)は、庚午(かのえうま)の日から丙子(ひのえね)の日までの7日間、
小犯土(こつち)は、戌寅(つちのえとら)の日から甲申(きのえさる)の日までの7日間をいいます。
ただし大犯土と小犯土の代わり目の丁丑(ひのとうし)の日は間日(まび)とされ、障りのない日となっています。

2012年11月では、5日が大犯土の入り、13日が小犯土の入りで、12日が間日となります。

犯土の期間には、土公神(どくしん、どこうじん)が本宮あるいは土中にいるため、土を犯してはならないといわれます。
土公神というのは、陰陽道における神で、土をつかさどるとされ、仏教における「堅牢地神」(けんろうちしん=地天)と同体とされ、仏教における普賢菩薩(ふげんぼさつ)を本地とするとされる神です。

犯土、つまり土を犯すというのは、動土のことで、すなわち穴掘り、井戸掘り、種まき、土木工事、伐採など土を掘ったり、埋めたり、撒いたりといった土を触る作業のことです。
特に、犯土の期間は、地鎮祭等の建築儀礼には凶日とされますが、これらの内容は土用と共通していますね。

今でも、林業や建設業、造園業などでは、犯土の期間は、伐採や着工を避けるしきたりを固く守っている業者さんがいます。
樹木も生物ですから、当然バイオリズムはあるのですが、大犯土・小犯土期間中は、樹木にとって低調な時期にあたり、この時期に伐採すると材木に、虫が入りやすく、早く腐りやすいとか。^^;
除伐、下草刈りなども避けたほうがよく、新築では竣工を急ぐとせっかくの材木が早く腐ってしまうといいます。w

ただし、科学的根拠はないのですよ。^^;

日本では良い木材を得るには「木が眠っている」時に伐採するのが風習でした。
木が眠るとは、春夏の成長期が終わり、長い冬が始まる11月、12月のことです。
新月伐採といって、この頃の下弦の月から新月に至る1週間程の期間に伐採された木は、最高の「新月の木」になります。

新月伐採というのは新月の日に伐るわけではなく、この下弦の月から新月の前日の期間を「新月期」と呼び、下弦の月(下方向に弓なりになった三日月の状態)から新月の前日までの約1週間に伐ることをいいます。
1年に新月は13回ありますが、そのうちの11月から2月にかけての新月期のみを選んで伐採するのが良いとされています。

下弦の月は二十二日月辺りですから、2012年11月では、旧暦の九月二十二日は、新暦11月5日。
おお、丁度、大犯土の日になりますね。えらいこっちゃ。(笑)

新月伐採材の最大の特徴は、カビ・虫・腐りなどの害を受けにくい材になることです。
新月期に伐られた後、木の中に残された養分(主にでんぷん質)は葉枯らしすることで光合成によってゆっくりと消費されます。

伐採時には満月期/新月期の材中に残存している養分にさほど大きな違いはないのにもかかわらず、約4ヶ月の葉枯らし期間を過ぎると、両者の違いが鮮明に出ることが、ヨウ素溶液反応などの実験により科学的に実証されています。

つまり、新月期に伐り、葉枯らしを行った木材中には、でんぷん質などの養分がほとんど残っていないのに対し、満月期に伐り、葉枯らしを行った木材中には、でんぷん質などの養分が残ってしまっているのです

でんぷん質は、カビ・虫などの餌ですから、満月期に伐った木材は害を受けやすいのに対し、新月材はこれらの害を非常に受けにくいということが言えます。

奈良県吉野地方に残る、「闇切り」という新月伐採の伝統は、こうした経験による知恵が伝えられたものでしょう。
月のリズムがつくる「新月の木」は、腐らない、反らない、虫がつかない、火が燃え付かない、室内の空気を浄化し、そして何百年も使え、日本の山林を回復させることにもなるということですね。^^

竹にも、伐採するのに適した時期というのがあって、通常は、竹の水揚げが止まる秋口から冬までの期間です。
その時期に切った竹は材質がしまって使い勝手がよく、また虫がつきにくいとされています。

昔から切り始めて良い時期については、「木六竹八(きろくたけはち)」と言って、竹は旧暦での8月(木は6月)を過ぎてから、あるいは、その年の一年生のタケノコが成長して枝葉がふさふさと出始めてから、あるいは七夕(旧暦での)を過ぎたらもう切って良いなどと、地方によってさまざまに言われているようです。

大犯土、小犯土の故事来歴については、いろいろの説がありますが、本質的には土の働きに休養を与える意味からでしょう。
庭木の伐採や、植え替えなど、犯土(つち)の期間だからといって、お気になさいませんように。^^