ベストセラーは、ふだん本を読まない人が買ったときに生まれる。と、思っています。

久しく活字離れといわれ、若者がケータイやPCの液晶画面を見ている時間が超長い現代、書籍はあまり売れていません。とくに、純文学。そんな中で生まれるベストセラーは、タレントの推奨やTV番組での紹介、CGM(コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア)からの発信など、作品の質とは無関係に出現します。

注目度は「タイトルで決まる」ともいわれており、直近でも「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」、「頭がいい人、悪い人の話し方」、「下流社会」などのベストセラーが生まれました。過去を振り返っても、「脳内革命」、「バカの壁」など、インパクトを持つタイトル、あるいは内容を一言で説明できるようなシンプルな書籍が目に付きます。

また、「ケータイ小説」などという今様のジャンルも出てきています。たとえ内容がありがちで都合のいいストーリーでも、ターゲットはふだん小説を読まない層ですので、現代風の味付けさえあれば(例えば援助交際やいじめ、エイズ、ホストなど)じゅうぶんウケるわけです。

実際のところ、2007年度上半期ベストセラー単行本フィクション部門のベスト10のうち、4冊がケータイ小説です。(1位「赤い糸」、2位「もしもキミが。」、4位「今でもキミを。」、9位「クリアネス」:トーハン調べ)

ところで、現在の書籍におけるプロモーションでは、書店員を巻き込んで販売促進を進める、という手法が一般的になりつつあります。例えば、小説の“簡易見本刷り”を彼らに配り、感想や評価を聞くことによってターゲットを変えたり、帯コピーに反映させたり、店頭POPの企画を立てたりする、という具合。タレントが「泣きました」とする宣伝コピーもインパクトを持ちますが、多くの書籍を評価しているであろう書店員の「一気に読みました」も、強い影響力を持つというわけです。