中国の上海では、デパート出店ラッシュが起きており、もう商品も日本とあまり変わりません。しかし、つまらないモノでも売れる。これは家にまだモノがないからで、日本の高度経済成長期と同じです。

一方、今の日本は状況が違いますね。良いものなら売れた時代から、良いものでも上手に価値を伝えなければソニーの製品でも売れない時代です。そこで差が出るのがマーケティング、ということになるわけです。

技術力なら、日立はノーベル賞に近い研究者がごろごろいるといいます。しかし、市場で強いのは、松下やシャープ、カシオ。まず“どういう技術を極めるか”という段階で差がついているようで、これもマーケティング。

さらに、商品開発力、デザイン力です。同じ機能なのに、片方は指名買いされ、片方は棚でホコリをかぶる。製品のパフォーマンスが同じなら、その差はマーケティングです。

マーケティングは20世紀の米国において、あの世界恐慌の中で体系化されてきたといいます。まったくモノが売れない時代に、「顧客の求めるものを提供する以外にない」と企業は考えはじめたわけです。

しかし、MBA(経営学修士)においても、「どうしたら顧客を増やせるか」などの具体的な授業はないに等しい。経験だけで解決がはかれる法務や人事、会計とは異なるむずかしさが、マーケティングにはあるわけで、エリートがくちばしをつっこむとロクな結果にはならないたくさんの例を、私は見てきました。

だからこそ、マーケティング学のように学術としてのマーケティングではなく、私たち中小企業の実践すべき、現実的かつ有効なマーケティングを追求していきたいのです。