お客様の店頭での感情は、マーケティング理論ではあまり語られていないようです。そこには、米国発祥のマーケティング学に対し、日本特有の店頭事情があるからでしょうか。たとえば、欧米のブティックでは、商品にべたべた触ってほしくないと考えている。しかし、日本人は触れてみて、手にとって、鏡を見てみなければ似合うかどうかわからない、と考えるように…。

それはともかく、店に足を踏み入れる時に気後れしたり、接客されたら買わずには店を出づらいなどの感情は、あまり計数化されていません。というか、計数化しにくい。

それでも、自分が買物する側に立ってみれば明解なこともあります。しかし、それとて多くのお店で実践されていないのが現実です。「子供を不良にしたければこうしなさい」という逆説的な教訓にならうなら、「お客様に敬遠されるお店をつくりたければこうしなさい」とでもいうべき項目が次のようなものです。

     お客様に敬遠されるお店づくり8ヵ条
 ・入口に立って、お客様を待ちましょう
 ・お客様が来店したら、すぐに近寄って何をお探しか訊きましょう
 ・いつでも説明できるよう、お勧め商品のそばに立ちましょう
 ・セルフサービスではなく、ご希望に応じて商品を取り出すようにしましょう
 ・お客様に似合う商品を積極的にお見立てしてあげましょう
 ・お客様が選択できるよう、できるだけ多品種を取りそろえましょう
 ・セールストークはよく練習して、一気にまくしたてましょう
 ・店員同士、なかよく雑談しましょう

なかには、これは良いことなのではないか? と思える項目もあるのではないですか。けれど、ショッピングの主役である女性、とくに可処分所得の多い顧客層にとっては、いずれも避けるべき接客行動です。

顔なじみしか来ない商店街のはじっこの店ならいざしらず、不特定多数のお客様が多いショップでは致命的でしょう。これはマーケティングがどうのこうの、ではなく、日本人の感性の問題ですので、多くのチェーンストアでも対応できていない点です。

ただし、109や丸井など若年層向けのショッピングビルでは、この8ヵ条を実践することで逆に好成績を上げているマネキンさんがいくらでもいるのも事実。あらゆるショップに一概にあてはめることはできませんので、注意が必要です

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