2008年 10月の記事一覧
私が返信したメール文は以下の通りです。
「 …前略… さて、広告収入モデルという決断をされたようで、その徴収のやり方ですね。
まず、ある程度信頼のもてる媒体資料が必要ではないですか。
(イメージとしては仕上がりA4タテ3分の2三つ折り4C、的な)
それを、Sさんのこれまでのキャリアを活かして、コネを辿って広告代理店に挨拶&配布しまくる。
掲載料の定価は高めに設定しましょう。代理店がマージンとれるなと感じる程度に。
定価は媒体の価値を数字に置き換えたものですから、自信の値付けを。実際は、値引きしてもいいわけですし。
そして、本放送開始キャンペーンで、
「いまなら優良クライアントは無料です」として、とにかく出稿ぐせ、扱いぐせをつけさせる。
そして、他の広告主には「いい企業が出稿しているな、有望な媒体なのかな」と感じさせる。
その一方で、地場産業や企業(××××みたいな)、
あるいは自治体など、自身でも回れるところは直接どんどん回る。
CM未経験企業には制作込みのメニューを提示する必要がありますね。
リンクなら、同様カテゴリーのサイトを探して相互リンクをオファーする。
本放送が進んで、実際のレイティングやリーチの数字が出たら、
それを根拠に媒体料や出稿メニューはまた考えればいいと思います。
視聴者属性の詳細なセグメントができれば、強みになります。
実際、こうした数字データが出ないと出稿も扱いも真剣に考えてもらえない傾向が強いでしょう。
それと、考え方なのですが、(県名)ローカルを価値と考えるのか、
それとも(県名)だけど、全国へ発信できることが価値と考えるのか、
どちらなのでしょうかね。 …以下略…」
という内容でした。このアドバイスが役に立ったかどうか。その後もメールのやりとりはちらりとさせてはいただいていますが、この放送局さんはクライアント契約は結んでいませんので、それは陰ながらチェックしていくことになるのですね。
高速接続が当たり前となったネット環境をうけ、動画の配信ビジネスが本格化しています。USENはGyaOを成功させ、Yahoo!もYahoo!動画でこれを追っている状況。これらに先立つ、昨年の夏、ネット放送局を立ち上げようとしている起業家が、私のブログを見てメールをくれました。
何度かメールのやりとりをしたのち、運営を目前に控えた頃に相談をうけました。以下は、そのときのメール文からの抄録です。
「こんにちは、ネット放送局をやろうとしている○○です。最近の動きとして生放送の実験も終わり10月に運営開始に向けてコンテンツを制作している状態です。毎日、収入源の広告掲載費について頭を悩ませています。
当然、最初は知名度もアクセス数もないサイトでどうして行くか…なのですが。こんな方法をとろうと思うのですがどう思いますか?
動画CMやバナーの大きさによって単価は違いますが、例えば1回のCM露出に対して○○円の課金で、毎月末のログを見て回収する。企業によっては上限をつける。
こんな感じのことを考えています、これならお互いのリスクを軽くしこちらも企業努力をしていく格好になるので良いのでは、と思うのですがどう思いますか?アリですかねぇ…。」
つまり、地方発のネット放送局における広告料課金はどのように考えるべきか、という課題なのですね。そこで、私はお答えのメールをお送りしました。
基礎化粧品(これはファンケルやDHC、再春館製薬所などをイメージしてもらえればいいと思います)は、効果効能を頭で理解する部分と、イメージや勢いで購入を決めてしまう衝動買いの対象でもあると思うのですね。
そこで、それぞれの役割を果たすツールとして、図説やグラフを多用し、成分説明から導き出される効果効能などを理解してもらうための、いわば左脳向けのカタログをつくる。そしてもうひとつ、使用前と使用後の肌の違いなどを大きな写真で紹介する右脳向けカタログを用意することを提案。
双方が補完し合い、現場のセールスを支援するツール数種がそろえば、とりあえず環境は整備されます。しかし、こんなことは普通のコンサルタントでも指導できることです。私がもっとも問題であると指摘したのは、まったく別のことでした。
販売員が辞めてしまうのは、カタログが不備だからではないのです。たしかに売上の上がらないことがリタイアの原因ではありますが、誰だって最初からポンポンと売れるわけではないですよね。
問題は、「売れない…」と悩んだときに、きちんと心のケアをしてあげられるか、という点です。つまり、回りに「私も売れなかったのよ」と語りかける人がいて、「つらいのは自分だけではないんだ」と理解できれば、もう少しがんばれるのです。
ナレッジマネジメント風にいえば、うまく販売できた成功例やセールストークの共有が「正の情報共有」なら、「私もダメだった」という失敗経験のストーリーは「負の情報共感」といえます。こちらも、双方を合わせ技として週刊や月刊で配布するコミュニケーションペーパーなどで情報発信していく必要があるでしょう。
その他も、技術面だけでなく心情面でのセミナーに参加させたり、上級のセールスパーソンにマン・ツー・マンで指導させたり、という会社側の思いやりのあるフォローがあれば、一皮むけてがんばる人がどんどん現れてくるに違いない。
人を大切にする企業風土は、一朝一夕には確立できないでしょう。それでも、トップの顔が向いている方へ、他の社員たちもだんだんと視線を向けていくものです。どうか、時間をかけて、尊敬される企業へと脱皮していって欲しいものです。
知人の紹介で、S県に本社のある基礎化粧品メーカーの社長さんとお会いしました。
上京してきた社長曰く、商品には自信があるけれど、機能性が複雑なのでセールスの実績が上がらず、現場の販売員が退職したり、代理店が離れていったりする。どんなツールをつくれば良いのか。現行カタログ、パンフレットについても忌憚のないご意見やアドバイスをもらえないか、というご相談でした。
販売助成ツール一式を見せてもらったところ、印刷物は確かに種類が少なく、手作りの物もあります。それぞれの表現はぎごちなく、メッセージ性はゼロ。誰も説得できないだろうな、という内容でした。
その反面で、薬事法に違反するような行き過ぎた効能の表記がある。これは、地元の印刷会社にデザインしてもらったり、社員がパワーポイントでつくったりするときに陥りがちな危うさのようです。
またウェブについては、一応あるものの、必要なコンテンツ・ボリュームをまったく満たしていないという状況でした。とくに、代理店さんを募集するリーフレットが気の抜けた内容であるにもかかわらず、ウェブ上にはそのページすらないというのです。
どこから手をつけても速攻で効果が顕われるようなこの会社。さて、一日限りのコンサルで、弓削徹は何を伝えたのでしょうか。
まずは、ビジネスモデルに対するとらえ方から。企業は骨太の理念なくしては長生きできません。このサイトは世の役に立つ商品を提供しているのですから、きちんとした「ミッション」を胸に、ビジネス構築をしていくべきなのです。
そのときのサイトデザインは普通の広告か、雑誌の通販ページのようなフレームの集まりになっていて、「とにかく買って」という雰囲気でした。商品の性質上、十分な説明や説得が必要なのに。
そこで、ミッションの例として「この国から夜泣きに苦しむお母さんをなくしたい」を挙げ、説明しました。初めての育児に悩む新米お母さん、育児ノイローゼのあげくに子殺し…。そんな社会に向かって「有効な解決策があるのよ、音楽ひとつで変わるのよ」と、啓蒙してあげてほしいのです、NPOのように。
そう考えると、サイトの構造も変わってきます。トップページは、子育てに戸惑う新米ママのよきおばあちゃんのように、育児の大変さに共感し、知恵や情報を伝える駆け込み寺になります。その後におっとりと音楽商品へと導入、もちろんユーザビリティも見直します。
そして、広報活動がキモ。こうした一見伝わりにくい商材こそ、そして社会に貢献できる商品こそ、パブリシティにうってつけです。新聞、雑誌、テレビに上手にリリースを提供すれば、必ず取り上げられるタイプの商品です。
また、商品購入形態はダウンロードが中心なのですが、育児に手が離せないお母さんには不向きな販売方法かもしれません。むしろ、CD-Rやギフト需要を強く意識した方がよいでしょう。そして、3ヵ月後ぐらいに詳細なアクセス解析を行い、さらに見直しを行う。そこまでやれば、成功は見えてくる。そうしたらキーワード広告や類似セグメントサイトへのPPC広告出稿を始めます。
まだまだ、必要なことはあるのですが、とりあえずはここまで。
<コンサル事例>
弓削徹のサイトを見てご連絡をくれたのは、音楽ダウンロードサイトであるMを運営している方でした。
音楽ダウンロードといっても、ITMSのようなオールラウンドなものではなく、夜泣きする赤ちゃんに聴かせる「胎内音入り子守歌」というエッジなサイトです。立ち上げから数ヵ月、販売高が伸び悩んでいる、というご相談でした。
胎内音には当然、心臓音もあり、血流の音なども含まれるそうで、そのサウンドには泣きぐずっていた赤ちゃんを落ち着かせ、眠りに誘う効果があるというのです。
最近、育児ノイローゼになってしまった母親による子殺しの報道も多く、夜泣きする赤ちゃんを抱えるお母さんには切実な問題なのですね。ビジネスモデルとしても面白いし、とにかく困っている人を救うことができる点がすばらしい。
運営している方は、もともと音楽畑の方で、ご自身も一児の母。数日後に面談するお約束をしつつ、そのサイトを閲覧してみました。
と、失礼ですが、このサイトの作りが問題ありありなのですね。通販サイトとしての基本は押さえているところは上手なのですが、一見、広告ページのようなレイアウト。ビジネスモデルに対する認識が、そこに表れているようでした。
では、どこの辺りから、変わっていったらよいのでしょうか。
<コンサル事例>
まずは、力仕事から着手しました。というのも、店内のレイアウトが悪く、お客様の動線が滞りがちだったのです。あんパンの真隣にカレーパン、食パンをのぞき込むとお尻?に反応して自動ドアが開く、といった状態。
このレイアウトを見直し、入店から順におすすめパンゾーン、調理パンゾーン、変わりパンゾーン、おやつパン(デザート)ゾーン、食パンゾーンへと回遊でき、気づけばレジの前、手を伸ばせばドリンクのついで買いもできる、という格好に変更しました。
次に、値書きだけだったショーカードを、パンの特徴をていねいに書き込んだPOPカードへチェンジ。さらに「焼きたてです」1種類だったものを、「ただいま焼き上がりました!」を作って2段階にしました。
また、既存のお客様を大事にするためにも、ニュースレターを発行。といっても、かわいい手描きイラストの入った「○○だより~」のようなほんわかしたものです。好きなパンアンケートの結果などの記事を載せて店内に掲出し、精算時にお渡ししたり、近所に配ったりもします。
地味なところでは、品切れの時にお詫びとともにお渡しする「品切れお詫びカード」による次回割引を設定。掃除の徹底、接客マナーの見直し、不人気品のスクラップなどの典型的なテコ入れ。地元フリーペーパーへの広告出稿の検討。
アクティブなところでは、手作りパン教室や新製品パンの人気投票などのイベント展開を計画。もう少し広ければ、本当は実演スペースやカフェ併設なんてやってみたかったのですが(保健所への届出との整合性がネック)。
さて、肝心な新商品開発についてですが、普通のパンならヤマザキデイリーストアやセブンにすらあります。いや天然酵母パンだって、もう珍しくありません。私としては食物繊維の入ったパンや、アトピーの人向けのパンなどなど、子供に指名されるような、味の濃い、インパクトのある名物パンを作りたい。今後、時間をかけて、マスメディアに取材してもらえるような変わりパンを作っていきたいのです。
こうした提案をしながら通ううち、お店のスタッフにも変化が。もともとおいしいパンの店ですから、さまざまな施策の相乗効果は思ったより早く現れてきたのです。
<コンサル事例>
今回ご紹介するクライアントはベーカリー店です。近隣に参入してきた大手食品スーパーや、パン販売に力を入れてきているコンビニ、また特徴あるパンのネット販売などが競合となって、売り上げが低迷してきているというお話から始まりました。
店舗は本格的な「オンプレミス方式(原料のミックスから焼き上げまで同一店舗内で行う形式)」であり、製パンの技術力も高いものがある、とみました。ただ優れた製造者は、ついコミュニケーションを軽んじてしまいがちです。自信のある商品であればこそ、多くの人々に楽しんでもらおうとずうずうしく考えてほしいのですが。
さて、店舗内で製パンをしない業態の販売不振はよく耳にするのですが、当該店のようなフレッシュベーカリー、いわゆる焼きたてパンの店では、むしろ商機は拡大しているところです。
また、商店街を少しはずれた立地もよくないので、とおっしゃるのですが、商店街に入っていてもダメな店舗はダメですし、好調な店舗は好調です。
厨房をゆったりと広くとったこのお店、ほんのちょっとのがんばりで、好転するように見えたのですが、実際はどうなったでしょうか。
2度目の面談では、主に商圏の分析についてご提案しました。
人口分布や所得水準、生活状況などをできるだけ調べ、オリジナルの商圏マップをつくるのです。正直、売上げの70%は立地で決まってしまいます。コンビニエンスストアなら3000人程度の商圏でオーケーですが、食品スーパーなら1万人ぐらい、ドラッグストアなら2~3万人、ファミレスだと3~5万人、総合スーパーで7~15万人が必要です。
Webで調べたところ、出店予定地ではT町とI町を合わせて約34,000人の人口があることがわかりました。ターゲットである女性の方が1,000人ほど多いのが土地の特長です。近隣のショップやスナック、バーなどは区内でも高めの料金設定であることもわかりました。地元の皮革産業が、不景気とはいえ底堅いようなのです。
出店場所の確定はまだですが、お金をかけない調査方法としてご自分でカウンターを持ってのリサーチをお薦めしました。出店候補地の前で、通行人/車をカウントするのです。お店に必要な通行量は、一般に1日に3,000人。車は人の1.5倍でカウントしますが、立地とショップの性質上、車での来店は少ないといわざるを得ません。
また、重要なのは歩いている人のスピードなのです。普通は毎分80mくらいでしょうが、毎分50mほどのゆっくりさだと理想的ですね。ちなみに、朝の通勤時間帯の大阪では毎分120mくらい出ているそうです。ほとんど、すっとんでます。
出店場所は住宅街から駅へいたる中途になるようで、細めの道に面することになりそうです。まあ、大通りに面したからといって対岸とは寸断されてしまいますし、川や線路もお客さまを分かつものですので注意が必要です。
さて、そんな話をしつつ、店舗候補地が固まるのとショップコンセプトが煮詰まるのを待って、次は実店舗のつくり方と来店促進についてご指導したいと考えているところです。
ビジネスオーナーを目指す、ホステスさんに会いました。
いまは銀座でホステスさんをしているが、以前より服飾に興味があり、ブティックを持つことを決め、店舗物件を探し始めているという人です。まず、ショップオーナーとして知っておくべき心得などについて話をさせてもらいました。
出店場所は彼女の地元である東京都A区。業種もアパレルと決めているので、最初にショップコンセプトを考えてもらいました。これは、ターゲットは誰か、扱い商品・スタイルは何か、ユニークさや他店との優位点は何か、といった戦略です。
この地域は日本橋や銀座へ出やすいため、普通の店を出したところで、素通りされるだけです。この店に来ないと買えないもの、会えない人?(会話がしたい客も多い)がないと厳しい。
この点で、彼女も悩んでいるようです。そこで、次のステップに進むためにも地域のリサーチを提案しました。近隣の競合店をチェックする、大型店の影響を知る、出店候補地の通行量(その歩くスピードも重要、またターゲットの割合は?)、などの調査です。
並行して、資金調達の方法、店舗取得費や内装、什器代、仕入れ・運転資金、人件費、雑経費などを知って投資効果を考えることも必須です。
なかなか大変ですが、あのピーチジョンだって、最初はこういうところからスタートしたわけです。こうした知恵を絞ることにわくわくするような人でないと、成功はむずかしいでしょう。やるべきこと、考えるべきことが多いほど燃えるような人となら、私も一緒に仕事がしたいのです。
(この項続く)